舟渡国際法律事務所

60代でも就労のために偽造在留カードを買ってしまう。その背景と処分の見通し

お問い合わせはこちら

60代でも就労のために偽造在留カードを買ってしまう。その背景と処分の見通し

60代でも就労のために偽造在留カードを買ってしまう。その背景と処分の見通し

2026/08/31

偽造在留カードの事件は、若い技能実習生や留学生の話だと思われがちです。しかし実際には、60代の方が「働くために」偽造カードを入手してしまう事案も報じられています。年齢を重ねてから在留資格を失った人にとって、帰国後の生活の見通しも、日本での就労の道も、どちらも狭い。その狭さが偽造カードという選択に結びついてしまいます。この記事では、報道された事案を出発点に、在留状況の確認から始まる弁護の順序、年齢や生活状況が情状としてどこまで働くか、そして刑事処分の後に必ず始まる退去強制手続について説明します。

報じられた事案から見える背景

神戸新聞NEXTの2026年2月18日報道によれば、中国籍の60代の女性が、自宅で偽造在留カードを所持していた疑いで逮捕されたとされ、本人は働くことを考えて作ってもらった旨を述べたとされています。逮捕の段階であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。報道からは、この方が来日してどれだけの期間を過ごしたのか、家族が日本にいるのかは分かりません。ただ、就労のためという動機が語られている点は、この類型の背景を考えるうえで重要です。

弁護活動は、本人の在留状況の確認から始まる

偽造カードの事件では、罪名の検討よりも先に確認しなければならないことがあります。ご本人の現在の在留状況です。正規の在留資格があるのか、期限が切れているのか、切れているとすれば何年になるのか、過去に退去強制歴があるのか。この四点で、事件の帰結はまったく違ってきます。正規の在留資格が残っている方であれば、刑の重さ次第で在留を維持できる可能性が残ります。他方、既に不法残留であれば、刑事処分の結果にかかわらず入管法24条4号ロに基づく退去強制手続が進みますので、弁護の重心は在留特別許可を求める方向へ移ります。ご家族には、旅券の最終の上陸許可印、在留カードの有効期限、直近の更新・変更申請の記録を確認していただきます。

年齢と生活状況は情状としてどこまで効くか

年齢そのものが刑を軽くする魔法の事情になるわけではありません。効くのは、年齢が具体的な事実と結びついたときです。たとえば、就労先が限られていたこと、日本で長く生活し親族の介護や扶養を担っていたこと、健康上の問題で帰国後の生活基盤が乏しいこと、収入がなく生活に窮していたこと。こうした事情は、犯行の動機が利欲的なものではなく生活維持のためであったことを示します。また、偽造カードを他人に売っていないこと、報酬を得ていないこと、枚数が一枚にとどまることも、犯情を軽くする方向に働きます。逆に、年齢に関係なく、販売や仲介に関与していれば評価は一変します。

所持罪の処分の見通し

法務省の令和7年版犯罪白書によれば、令和6年の来日外国人被疑事件について、入管法違反の起訴率は47.75%、全体の起訴猶予率は48.35%です。数字が示すのは、この分野の処分が一律ではないということです。分かれ目になるのは、行為の広がり(自己使用にとどまるか、提供・販売に及ぶか)、前科・前歴、身元引受の有無、そして帰国の意思と実行可能性です。実務では、本人が退去強制手続に乗ることを受け入れ、速やかに出国する意思を示すことで、起訴猶予に至る事案が現にあります。ただし、これは事案によりますし、結果を保証できるものではありません。

刑事の後に始まる退去強制手続

刑事処分が終わると、多くの場合、入管の違反調査・違反審査に移ります。不法残留を理由とする退去強制は、令和7年の出入国管理統計で退去強制令書発付7,722人のうち5,778人と圧倒的多数を占めます。ここで検討するのが在留特別許可です。入管法50条2項により、在留特別許可の申請権は、収容令書により収容された外国人、または監理措置決定を受けた外国人に生じます。それ以前の段階では、職権の発動を求める活動になります。同条5項は考慮要素を法定しており、令和6年3月改定・同年6月10日施行のガイドラインでは、自ら地方出入国在留管理官署に出頭したことが積極要素として明記されました。他方、在留の長期化は消極要素として扱われます。

ご家族が準備できること

在留特別許可を求める場合、集める資料は刑事事件のそれとは性質が違います。日本での居住歴が分かる資料(賃貸借契約、住民票の履歴、公共料金)、家族の在留資格と生活実態、医療機関の受診記録、扶養している家族の状況、日本語での生活能力を示すもの。これらは時間をかけないと集まりません。刑事手続の間に並行して準備を始めるのが現実的です。また、帰国を選ぶ場合でも、出国命令によるのか退去強制によるのかで、その後の上陸拒否期間が1年か5年かに分かれます。どちらの道を選ぶかは、ご本人と家族の将来設計そのものですから、早い段階で弁護人と検討してください。

中文版:60多岁也会为了工作去买伪造卡,背景与处分

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

東京にて行政事件に関する対応

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。