舟渡国際法律事務所

使っていない、家に置いていただけ。それでも偽造在留カードの所持罪は成立します

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使っていない、家に置いていただけ。それでも偽造在留カードの所持罪は成立します

使っていない、家に置いていただけ。それでも偽造在留カードの所持罪は成立します

2026/08/31

「一度も使っていません。家に置いていただけです」。偽造在留カードの事件で、ご本人からもご家族からも最も多く聞く言葉です。使っていないのだから犯罪にはならないはずだ、という感覚は自然なものですが、日本の入管法はそうは組み立てられていません。使う前の段階、つまり持っているだけの状態が、独立した犯罪として処罰されます。この記事では、なぜ所持だけで罪になるのか、行使の目的がどのように認定されるのか、そして本当に争える場面はどこにあるのかを、報道された事案を手がかりに整理します。

神戸で報じられた事案

神戸新聞NEXTの2026年2月18日報道によれば、中国籍の60代の女性が、自宅で偽造在留カードを所持していた疑いで逮捕されたとされています。報道では、本人が「働くことを考えて作ってもらった」「良くできていて使えると思って保管していた」と述べ、入手は3年ほど前であったとされています。逮捕の段階であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。ここで注目すべきは、報じられている行為が「提示した」でも「働いた」でもなく、自宅に置いていたという事実だけである点です。

なぜ持っているだけで犯罪になるのか

出入国管理及び難民認定法(入管法)は、在留カードの偽造・提供・所持などを73条の6以下で処罰の対象としています。偽造カードは、それ自体が就労や賃貸借契約、携帯電話契約といった社会生活の入口を不正に開くための道具です。実際に使われてしまえば被害は広範囲に及び、事後の回復も困難です。そこで法は、使用そのものを待たず、行使の目的をもって持っている段階を捉えることにしました。つまり所持罪は、結果が生じる前に働く犯罪類型であり、「使っていないから無罪」という主張は、条文の構造上そのままでは通りません。

行使の目的は入手経緯・保管態様・就労状況から認定される

行使の目的は内心の問題ですから、外形的な事情の積み重ねで判断されます。実務で重視されるのは、第1に入手の経緯です。誰に、どのような依頼をして、いくらで、どの連絡手段で入手したのか。第2に保管の態様です。財布に入れていたのか、書類とともに封筒に保管していたのか、写真だけを端末に残していたのか。第3に就労の状況です。在留資格を失った時期と、そのカードを入手した時期が近接していれば、就労に用いる意図が推認されやすくなります。報道の事案で本人が述べたとされる「働くことを考えて」という言葉は、まさにこの目的を直接に示す供述として扱われます。

それでも争える場面はどこか

争点は三つの層に分かれます。まず、所持そのものの認識です。同居人が持ち込んだもの、他人から預かった封筒の中身を知らなかったといった事情があるなら、そこは事実として争うべきところです。次に、行使の目的の内容です。就労のためだったのか、単に処分できずに残っていたのか、既に使う意思を失っていたのかによって、犯情の評価は変わります。最後に、共犯性です。作成者や販売者との関係が、注文者にとどまるのか、それを超えて仲介や再販に及ぶのかで、事件の重さはまったく違ってきます。取調べの初期にこれらを混ぜて供述してしまうと、後から切り分けることが難しくなります。黙秘権があること、供述調書に署名しない選択があることは、本人に必ず伝えるべき情報です。

処分と在留への影響

法務省の令和7年版犯罪白書によれば、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴猶予率は48.35%で、入管法違反の起訴率は47.75%です。約半数は不起訴で終わっており、起訴前の弁護活動には現実的な意味があります。在留への影響は、有罪となった場合の刑の重さで変わります。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑(全部執行猶予を除く)に処せられた者を退去強制事由とします。所持のみの事案で直ちにここに至ることは多くありませんが、本人が既に在留期限を過ぎているのであれば、24条4号ロによって別途退去強制手続が進みます。刑事と入管の二つの手続が並走している、という前提を外さないことが大切です。

ご家族が今日できる具体的な準備

ご本人の旅券と、在留カード(本物)の有無、在留期限、直近の更新申請の状況を、書類の写真で構いませんので集めてください。同居している方がいれば、居住実態を示す資料(賃貸借契約書、光熱費の領収書)を用意します。日本に生活の基盤があること、扶養している家族がいることは、刑事の情状としても、その後の在留特別許可の判断でも意味を持ちます。差し入れや面会の可否は警察署によって運用が異なりますので、弁護人を通じて確認してください。留置期間中に本人が体調を崩すことは珍しくなく、常用薬がある場合は早めに申し出る必要があります。

中文版:没用过,只是放在家里,这样也构成持有罪

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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