国外に出ている間、公訴時効は止まる 帰国したら逮捕されるのか
2026/08/31
日本で事件を起こした後に出国し、そのまま数年が過ぎたという方から、「もう時効ではないか」「日本に戻ったら空港で捕まるのか」というご相談をいただきます。結論から申し上げると、日本の刑事訴訟法には、犯人が国外にいる間は公訴時効の進行が止まるという定めがあります。国外で過ごした年月は、時効の計算に入りません。この記事は、日本を離れている中国籍の方とそのご家族に向けて、時効が止まる仕組み、逮捕状が出ている状態で帰国することのリスク、そして帰国の前に弁護人を立てておくことにどんな意味があるのかを説明します。
報じられた事案から見えること
2024年7月ごろ以降、産経新聞、日本経済新聞、東京新聞などにより、東京都内の神社の石柱に落書きがされた事件について、中国籍の男が器物損壊等の疑いで逮捕されたこと、また別に中国籍の少年に逮捕状が出され、その少年は出国した後に中国のSNSへ画像を投稿したと報じられています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。ここで注目したいのは、被疑者が国外にいるという一点で捜査が終わるわけではない、という構造です。
公訴時効は、何年か経てば当然に消えるという制度ではない
公訴時効は、一定の期間が過ぎると検察官が起訴できなくなる制度です。期間は罪の重さに応じて定められており、法定刑が軽い罪ほど短くなります。ここまでは中国の刑事法における追訴時効と発想が似ています。
違うのは止まり方です。刑事訴訟法255条1項は、犯人が国外にいる間は時効の進行が停止すると定めています。三年の時効期間の罪について、事件の直後に出国して五年間日本を離れていたのであれば、その五年は数えられません。帰国してから改めて期間が進みます。「ほとぼりが冷めるまで国外にいれば消える」という理解は、この条文によって成り立たないのです。
逮捕状が出たままの状態とは、どういう状態か
逮捕状は、裁判官が発付した令状です。被疑者が所在不明であったり国外にいたりする場合、捜査機関は指名手配の措置をとり、令状は執行されないまま維持されます。ここで押さえておきたいのは、逮捕状が出ていることは有罪を意味しないという点です。逮捕状は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるという裁判官の判断にすぎず、事実関係を争う機会はこれから訪れます。
他方で、日本に入国しようとすれば、上陸の審査では旅券の情報が確認されます。手配がされている場合、空港で身柄を拘束されることは十分に考えられます。荷物も携帯電話も持ったまま、その日のうちに警察署へ連れて行かれるという展開になります。
帰国後に何が起こるか 時間の流れを知っておく
逮捕されると、司法警察員は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留を請求します。勾留は原則10日、延長されるとさらに10日で、合計20日に及びます。この間、起訴前の保釈という制度は日本にはありません。外国から戻ってきたばかりで住居も勤務先も日本にない方の場合、逃亡のおそれがあるとして勾留が認められやすい傾向は否定できません。
取調べには通訳人が付きます。もっとも、通訳の質は事件ごとに差があり、微妙な言い回しが調書で単純化されることがあります。調書に署名する前に、内容を読み上げてもらい、違う部分ははっきり指摘してください。弁護人との接見は、接見禁止が付いても制限されません。
帰国の前に弁護人を立てておくと何が変わるか
第1に、出頭の形を整えられます。空港で突然逮捕されるのと、弁護人が事前に捜査機関と連絡を取り、日時を決めて出頭するのとでは、身柄拘束の必要性についての説明の仕方が変わります。逃げも隠れもしないという姿勢を、行動で示すことができるからです。
第2に、被害弁償や示談を先行させられます。親告罪であれば告訴の取下げが処分そのものを左右し、そうでない罪でも、被害が回復していることは起訴するかどうかの判断に影響します。国外にいる間でも、弁護人を通じて弁償の申入れをすることは可能です。
第3に、住居と身元引受人を先に固められます。日本に住居がないことは勾留を基礎づける事情になりますから、滞在先の確保、家族や知人による身元引受けの書面、帰国後の生活の見通しを準備しておくことに意味があります。
在留と、次に日本へ来ることへの影響
刑事処分の重さによって、その後の扱いは変わります。出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号リの退去強制事由は、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合であり、全部執行猶予は但書で除外されています。軽微な財産犯でこの水準に達することは多くありません。もっとも、一定の刑に処せられたことは、日本へ入国しようとする際の上陸拒否の判断にかかわる場合があります。短期滞在で来日を繰り返してきた方ほど、この点は軽視できません。
ご家族が今日できること
まず、事件がどの警察署のどの係で扱われているのかを確認します。ご本人の記憶があいまいでも、弁護人が受任すれば照会できます。次に、帰国の時期を独断で決めないことです。旅券の有効期限、渡航記録、日本国内の滞在先、被害弁償の原資を整理し、弁護人と順序を決めてから動いてください。最後に、日本国内に残っている本人の荷物、在留カード、通帳の所在を確かめておくと、後の手続が速く進みます。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------