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器物損壊は親告罪 告訴が取り下げられれば刑事処分はどう変わるのか

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器物損壊は親告罪 告訴が取り下げられれば刑事処分はどう変わるのか

器物損壊は親告罪 告訴が取り下げられれば刑事処分はどう変わるのか

2026/08/31

神社の石柱への落書きが報じられた事案をきっかけに、「被害者が許してくれれば事件は終わるのか」というご相談を受けることがあります。日本の刑法では、被害者の告訴がなければ起訴できない犯罪を親告罪といい、器物損壊はこれに当たります。もっとも、落書き事案では、器物損壊のほかに礼拝所に対する不敬の罪が同時に問題になることがあり、こちらは親告罪ではありません。この記事では、告訴の取下げをどう交渉するのか、被害者が宗教施設である場合に何が違うのか、原状回復の費用と謝罪をどう形にするのかを、在留への影響とあわせて説明します。

報じられた事案の概要

2024年7月ごろ以降、産経新聞、日本経済新聞、東京新聞などにより、東京都内の神社の石柱に落書きがされ、中国籍の男が器物損壊等の疑いで逮捕されたこと、また別に中国籍の少年に逮捕状が出て、その少年は出国した後に中国のSNSへ画像を投稿したと報じられています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。報道からは処分の結果まで確認できていないため、以下は制度の一般的な説明です。少年の年齢など特定につながる事情には触れません。

親告罪とは何か なぜ器物損壊が親告罪なのか

親告罪とは、被害者などの告訴がなければ検察官が起訴できない犯罪をいいます。器物損壊が親告罪とされているのは、侵害されるのが個人の財産という私的な利益であり、事件を公にするかどうかを被害者の意思に委ねるのが相当だと考えられているからです。告訴は、犯人を知った日から6か月以内にしなければならないとされ、また第一審の判決があるまでは取り消すことができます。いったん取り消すと、同じ事件について再び告訴することはできません。この構造があるために、告訴の取下げは、被疑者にとって不起訴に直結する最も強い手段になります。

落書き事案で告訴の取下げに至るには何が必要か

順序があります。第1に、原状回復の費用を全額負担することです。石材や木部の落書きは、洗浄剤で拭き取れば済むものではなく、専門業者による薬剤洗浄や再研磨を要し、歴史的な価値がある構造物では素材を傷めない工法が必要になります。まず被害者側が選んだ業者の見積書を前提に、全額を一括で支払える形を整えます。分割を提案すると、それだけで誠意を疑われることがあります。

第2に、謝罪の形です。定型の謝罪文ではなく、何をしたのか、なぜしたのか、施設と参拝者に何を与えたのかを本人の言葉で書き、中国語で書いたものと日本語訳を添えるのが実務的です。第3に、再発防止の誓約と、二度と当該施設に近づかない旨の約束を書面に入れること。第4に、被害者への接触は弁護人を通して行うことです。本人や家族が直接訪ねていけば、罪証隠滅を疑われ、勾留が延びる原因になります。

被害者が宗教施設である場合の特殊性

宗教法人が被害者である場合、示談の判断は個人と同じようには進みません。まず意思決定に時間がかかります。責任役員会や氏子総代会など内部の手続を経る必要があり、担当者が個人的に許す気持ちを持っていても、その場で告訴の取下げを約束できないことが通常です。

次に、失われた利益が金銭に還元しにくいという問題があります。石柱の修復費用は算定できても、参拝者が受けた感情的な打撃や、施設の宗教的な意義が傷つけられたことは、見積書には載りません。したがって、金額の提示だけでは足りず、行為の意味を理解したことを示す必要があります。

さらに重要なのは、社会的な注目を集めた事案では、被害者側が特定の個人を許すかどうかという観点だけでなく、同種の行為を助長しないかという観点から判断せざるを得ないことです。この場合、告訴の取下げまでは得られなくとも、宥恕の意思、すなわち被告人の処罰を強く望むものではないという趣旨の書面を得られれば、量刑上の意味は大きく残ります。

告訴が取り下げられると処分はどう変わるか

器物損壊について告訴が取り下げられれば、その罪では起訴できません。起訴前であれば不起訴となり、すでに起訴されていれば公訴棄却の判決がされます。前科がつかないという結果は、その後の在留資格の更新や変更の審査でも、素行に関する評価の前提を変えます。

ただし注意が必要です。落書きが礼拝所や墳墓に対する不敬の罪にも当たる場合、この罪は親告罪ではないため、器物損壊の告訴が取り下げられても検察官の判断で起訴できます。器物損壊だけを見て、示談すれば終わると考えるのは危険で、どの罪名で捜査されているのかを最初に確認しなければなりません。

在留への影響と、ご家族が準備できること

器物損壊も礼拝所に対する不敬の罪も、有罪判決のみで退去強制事由となる入管法(出入国管理及び難民認定法)24条4号チの薬物関係には当たらず、別表第一の在留資格者に限られる同条4号の2の特定犯罪にも含まれません。法定刑からみて1年を超える実刑が想定しにくいため、同条4号リが現実になる場面も多くはありません。もっとも、在留資格の更新や変更では素行が審査されますし、短期滞在で来日していた方の場合、次に上陸しようとするときの審査で問われることがあります。

ご家族としては、原状回復費用の原資を早く確保すること、本人が国内にいる場合は住居と身元引受人を固めること、本人の在留カードと旅券の所在を確認しておくことが優先されます。修復費用の見積りは被害者側の手配を待つ場面が多く、時間がかかります。待っている間に何もしないのではなく、支払能力を示す資料を先に整えておくことが、交渉の入口を作ります。

中文版:毁坏器物是亲告罪 告诉一旦被撤回,刑事处分会怎样变化

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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

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この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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