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暴行罪は退去強制事由ではない。それでも次に日本へ来るときに響く理由

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暴行罪は退去強制事由ではない。それでも次に日本へ来るときに響く理由

暴行罪は退去強制事由ではない。それでも次に日本へ来るときに響く理由

2026/08/31

「日本で警察沙汰になったら、もう入国できないのですか」。刑事事件のご相談で最も多く聞かれる質問のひとつです。結論から申し上げると、暴行の事案で罰金や不起訴になった方が、そのことだけを理由に退去強制の対象となることは、制度上ありません。この記事では、出入国管理及び難民認定法(入管法)が定める退去強制事由の枠組みを確認したうえで、次に日本へ来るときに何が起きるのか、そのときに嘘をつくと何が起きるのかを、順を追って説明します。

報じられた事案から考える

2026年7月27日から28日にかけて、Record Chinaが、福岡市博多区の商業施設内の遊戯施設で、旅行中の中国籍の男性(37歳)が従業員と口論になり殴打したとして現行犯逮捕されたと報じました。男性は否認していると伝えられています。暴行の疑いで逮捕されたと報じられています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

ここから先は、報道された個別事案の予測ではなく、制度としての一般論として読んでください。

退去強制事由は、罪名ではなく刑の重さで決まる

刑事事件が在留に直結する入口は、入管法24条が定める退去強制事由です。刑罰に関係するものを整理すると、次のようになります。

  • 24条4号リ。無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者。ただし、刑の全部の執行猶予が付いた場合は除かれます。「執行猶予でも退去強制になる」というのは誤りです。
  • 24条4号チ。薬物関係の法令違反。これは有罪判決があれば足り、罰金でも執行猶予でも該当します。在留資格の種類も問いません。
  • 24条の2に定める4号の2。別表第一の在留資格で在留する方に限って適用される特定の犯罪で、危険運転致死傷と、盗難特定金属製物品処分防止法違反が挙げられています。

暴行は、このどれにも当たりません。薬物ではなく、危険運転でもなく、そして罰金である以上、1年を超える拘禁刑の実刑という要件を満たしません。

統計で見ても、刑事事件による退去強制は例外的である

令和7年の出入国管理統計第57表によれば、退去強制令書が発付された方は総数7,722人です。そのうち内訳の最多は不法残留(24条4号ロ)の5,778人で、単独の理由として24条4号リ(1年を超える実刑)による発付は41人、4号チ(薬物)は86人、4号の2は49人にとどまります。中国籍について見ると、令書発付の総数は686人で、そのうち4号リは単独11人、不法残留との並立が36人、合わせて47人です。

この数字の読み方には注意が必要です。中国籍では令書発付の総数に占める4号リの比率が6.9%で、ベトナムの2.3%の約3倍にあたります。「刑事事件で退去強制になる人はほとんどいない」と楽観することも、「刑事事件になったら終わりだ」と悲観することも、どちらも正確ではありません。正しい理解は、実刑で1年を超えるかどうかという一本の線が、在留の帰趨を分けている、ということです。

それでも「次に来るとき」に響くのはどこか

退去強制事由に当たらないことと、次の来日が問題なく認められることとは、別の話です。上陸審査では、入国審査官から過去の犯罪歴や日本での処分歴について質問を受けることがあります。査証(ビザ)の申請書にも、犯罪歴に関する記載欄があります。ここで求められているのは「退去強制事由に当たるか」ではなく、申告した内容が真実かどうかです。

入管法は、偽りその他不正の手段によって上陸の許可等を受けた場合を、在留資格の取消事由の第一号として定めています。つまり、いったん入国できたとしても、後から申告の虚偽が判明すれば、在留資格そのものを失う可能性が残ります。処分歴があることよりも、それを隠したことのほうが重く扱われうる、という構造です。

上陸拒否事由についても触れておきます。入管法5条1項の各号には、退去強制を受けた経歴に応じた年限(出国命令による出国は1年、退去強制で前歴がない場合は5年、前歴がある場合は10年など)や、薬物関係で期間の定めのない上陸拒否といった類型が定められています。暴行の罰金は、これらの類型に直ちに当てはまるものではありません。ただし、一定の重さの刑に処せられた経歴が上陸審査で問題となる場面はありますので、ご自身の処分がどの重さに位置づけられるかは、記録に基づいて個別に確認する必要があります。

在留資格の種類によって、影響の出方が変わる

令和7年末の在留外国人統計では、中国籍の在留者は930,428人で国籍別の第1位です。その内訳を見ると、永住者357,565人、日本人の配偶者等26,617人、永住者の配偶者等21,762人、定住者32,047人の合計437,991人が別表第二、すなわち身分や地位に基づく在留資格です。特別永住者610人を加えると、全体の約47.1%にあたります。この層には、別表第一に限って適用される4号の2は適用されません。

他方、留学、技術・人文知識・国際業務、経営・管理、技能実習、特定技能といった別表第一の在留資格の方は約52.9%を占め、4号の2のリスクを負います。さらに、退去強制事由に当たらない場合でも、在留期間の更新や在留資格の変更の審査では、素行が善良であることが要素として見られます。罰金や起訴猶予が、直ちに更新を不許可にするものではありませんが、審査の場で説明を求められる材料にはなります。短期滞在の旅行者と、日本で生活の基盤を持つ方とでは、同じ罰金でも意味が違ってくるのです。

記録に何が残り、どう説明するか

不起訴になった場合でも、捜査を受けた事実そのものは検察庁の記録に残ります。他方で、不起訴は有罪ではありませんから、犯罪歴を問う欄に有罪の前科として記載する必要はありません。

実務上お勧めしているのは、処分が確定した段階で、不起訴処分告知書や略式命令の写しなど、自分の処分の内容を示す書面を取得して保管しておくことです。数年後の申請の場面で「何があったのか正確に説明できる」状態を作っておくことが、最も確実な備えになります。

中文版:暴力罪不是退去强制事由,但下次入境日本时仍会有影响

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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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