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責任能力を疑うべき事案で、精神鑑定はいつ請求するか

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責任能力を疑うべき事案で、精神鑑定はいつ請求するか

責任能力を疑うべき事案で、精神鑑定はいつ請求するか

2026/08/31

不可解な動機、脈絡のない供述、極端な言葉。事件の経過を聞いて、まず精神状態を疑うべき事案があります。しかし、精神鑑定は本人が求めれば当然に行われるものではなく、請求の時期を誤ると、判断の材料が失われたまま手続が進みます。この記事は、責任能力に疑いのある事案で、どの段階で何を求めるのか、そしてご家族にしかできない準備は何かを説明します。

疑うべき徴表と、報道の読み方

西日本新聞をはじめとする各社は2026年6月10日と同年6月30日、福岡市博多区の職場で同僚2人が相次いで襲われたとして、中国籍の20歳の技能実習生の男が殺人未遂の疑いで逮捕・再逮捕されたと報じ、極端な内容の供述をしたことも伝えています。逮捕段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、無罪推定が及びます。

ここで注意していただきたいのは、報道された一言だけで精神状態を判断することはできないという点です。同時に、そうした供述が報じられている事案では、少なくとも精神状態を検討する端緒はあると考えるべきです。動機が了解しがたい、行動が唐突である、事件前に生活の破綻や不眠が続いていた、家族から見て以前と様子が違った。これらは、いずれも検討を始める理由になります。

捜査段階の簡易鑑定と、本鑑定の違い

捜査段階では、検察官の判断により、精神科医が短時間の面接と記録の検討によって意見を述べる簡易鑑定が行われることがあります。数時間程度で終わることが多く、起訴・不起訴の判断材料として用いられます。手軽である一方、生育歴や既往歴の掘り下げは限られます。

これに対し、鑑定のために身柄を病院等に移して数か月にわたり検査と面接を行う本格的な鑑定があります。捜査段階で行われることもあれば、起訴後の公判段階で裁判所の決定により行われることもあります。時間はかかりますが、資料の網羅性が違います。弁護人としては、簡易鑑定の結果が「責任能力に問題なし」であっても、そこで諦めるのではなく、資料の不足を指摘して本格的な鑑定を求めるかどうかを検討します。

請求のタイミングを間違えない

実務上の要点は二つです。第1に、簡易鑑定が行われる前に、弁護人の側から資料を提出しておくことです。鑑定人が本人の説明だけを聞くのと、家族が語る幼少期からの経過や診療記録を併せて検討するのとでは、結論が変わり得ます。第2に、公判に進む場合、争点と証拠を整理する手続の中で鑑定請求を行うことです。この段階を過ぎてから請求すると、審理計画の変更を伴うため、認められにくくなります。

逆に言えば、逮捕直後から起訴までの限られた期間に、どれだけ資料を集められるかが結論を左右します。逮捕後、送致と勾留請求を経て、勾留は原則10日、延長を含めて最大20日です。この間に動く必要があります。

ご家族からの情報提供が、要になる

鑑定の質を決めるのは、本人の面接だけではなく、その人がどう育ち、どう変わってきたかという縦の情報です。そしてこれは、ご家族にしか提供できません。具体的には、出生から現在までの経過、学校での様子、就労歴、性格の変化が現れた時期、精神科や心療内科への受診歴、処方された薬の名称、家族内の既往、来日前後の生活の変化です。

外国籍の方の事案には、固有の難しさがあります。診療記録が中国国内にあり、取り寄せと翻訳に時間がかかること。面接が通訳を介して行われるため、精神症状の微妙な表現が伝わりにくいこと。文化的な背景の違いが、症状の評価に影響し得ること。これらを踏まえ、弁護人は通訳人の適格性や面接の方法についても意見を述べていくことになります。

責任能力が認められない場合、その先はどうなるか

刑法は、心神喪失者の行為は罰しないと定め、心神耗弱者の行為については刑を減軽するとしています。責任能力が否定されれば不起訴となり、著しく減退していたと認められれば刑が減軽されます。裁判で争点になれば審理は長期化し、身柄拘束も長引くのが通例です。

そして在留の問題は、刑事とは別に進みます。不起訴となれば有罪判決を前提とする退去強制事由には当たりませんが、活動に基づく在留資格の方は、長期の身柄拘束によって在留資格の取消しが問題になり得ます。刑事と入管の両方を見通した対応が要ります。

ご家族に今お願いしたいこと

まず、本人の生育歴を時系列で書き出してください。日付が曖昧でも構いません。次に、中国国内の医療機関の受診記録、処方の記録、学校の記録を集めてください。母国の資料は、本人が身柄を拘束されている状況では、ご家族しか動けません。そして、これらは翻訳を添えて弁護人に渡してください。捜査機関に直接渡すのではなく、まず弁護人に相談することが大切です。

中文版:应当怀疑责任能力的案件,何时申请精神鉴定

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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