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凶器で頭部を殴っても、殺意を否定できる場合がある

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凶器で頭部を殴っても、殺意を否定できる場合がある

凶器で頭部を殴っても、殺意を否定できる場合がある

2026/08/31

頭部を凶器で殴ったという事実がある事件で、弁護人が殺意を争うと聞くと、無理な弁解に思われるかもしれません。しかし、殺意は心の中の事柄であり、外形的な行為から推認されるものです。推認である以上、反証の余地が構造的に残されています。この記事では、報道された事件を手がかりに、裁判所が殺意をどのように認定するのか、そして何をもって反証するのかを説明します。

報道されている事実

西日本新聞をはじめとする各社は2026年6月10日、福岡市博多区の食品製造会社の事務所で、同僚の女性が斧のようなもので頭部を複数回殴打され重傷を負ったとして、中国籍の20歳の技能実習生の男が殺人未遂の疑いで逮捕されたと報じました。さらに同年6月30日には、その約3週間前後に同じ職場で、逃げた同僚の男性を追いかけてバール等で頭部を殴打したとして、同じ男が殺人未遂の疑いで再逮捕されたと報じられています。逮捕の段階で報じられたものであり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

殺意は、どのように推認されるのか

裁判所は、被告人が「殺すつもりはなかった」と述べても、その言葉をそのまま採用することはしません。まず見るのは、凶器の性状です。刃物か鈍器か、大きさと重さはどうか。次に攻撃部位です。頭部、頸部、胸部といった生命に直結する部位への攻撃は、殺意を強く推認させます。次に回数と力の強さ、そして生じた創傷の程度です。これらが一定の水準を超えると、確定的な殺意までは認められなくとも、死んでも構わないという未必の殺意が認定されます。

報道されているような、頭部を複数回という態様は、この推認が働きやすい類型です。したがって、弁護人が殺意を争う場合には、推認を上回る反対事実を積み上げる必要があります。

反証の三つの柱

第1は、動機です。殺害に向かう動機がそもそも存在しないこと、あるいは動機とされる事情が些細で、殺害という結果と釣り合わないことを示します。加害と被害の関係、直前のやり取り、職場での立場の推移を丁寧に再現する作業になります。

第2は、攻撃の中断です。制止する者がいないのに自ら攻撃をやめた、まだ攻撃を続けられる状況で立ち去った、という経過は、殺害の意図と整合しません。中断の理由を本人が説明できるかが要になります。

第3は、犯行後の救助行為です。救急車を呼んだ、止血を試みた、その場にとどまったといった行動は、死の結果を望んでいなかったことを示す有力な事情です。逆に、放置して逃走した場合には、この柱は使えません。

殺人未遂と傷害で、何が変わるか

殺人未遂は、死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑という重い法定刑を前提に、未遂として減軽され得る構造です。これに対し傷害は、15年以下の拘禁刑又は罰金であり、量刑の幅が大きく異なります。裁判員裁判の対象となるかどうかも変わります。したがって、殺意を争うことは、単に罪名の問題ではなく、実刑の長さ、ひいては在留の帰趨を左右する争いになります。

もっとも、殺意を争う方針には代償もあります。事実を争う姿勢は、反省がないと受け取られるおそれがあり、示談交渉も進めにくくなります。争うのか、認めて情状に力を注ぐのか。この選択は、証拠を精査したうえで本人と十分に協議して決めるべきものです。

供述と通訳が、事実認定を左右する

この類型で見落とせないのが、供述の記録のされ方です。報道では、本人が極端な内容の供述をしたと伝えられていますが、こうした発言が、どのような質問に対し、どういう文脈で述べられたのかは、報道からは分かりません。母語で話した内容が通訳を経て日本語の調書になる過程で、ニュアンスは容易に変わります。「殺してやろうと思った」と「もうどうなってもいいと思った」とでは、法的な評価がまったく違います。

ですから、取調べでは、調書に署名する前に読み聞かせを受け、自分の言葉と違う箇所は訂正を求めることが重要です。訂正に応じてもらえないときは署名を拒むこともできます。取調べの録音・録画が行われている事件では、その記録を後に検証することが可能です。

在留資格と、ご家族ができること

この類型で実刑が1年を超えれば、入管法24条4号リの退去強制事由に当たります。技能実習など活動に基づく在留資格の方の場合は、身柄拘束が長期化すること自体によって、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていないとして在留資格を取り消される道筋(入管法22条の4第5号)もあり、刑事処分を待たずに在留が失われることがあります。

ご家族にお願いしたいのは、本人の生育歴、来日の経緯、日本での生活状況、通院歴や服薬の有無といった情報を、時系列で整理して弁護人に伝えることです。これらは動機の解明にも、責任能力の検討にも、量刑にも用いられます。事件そのものについて本人と直接やり取りをすることは避けてください。

中文版:即使用凶器击打头部,也有可能否定杀意

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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