銀座の路上で2185万円。3人の役割分担が量刑を分ける
2026/08/31
路上で紙袋を奪い、被害者にスタンガンを押し当てたとして、中国籍の男女3人が逮捕されたと報じられた事件があります。共犯者が複数いる事件では、ご家族が最初に抱く疑問は決まって同じです。うちの子は見張りをしていただけだと聞いている、それでも同じ罪になるのか、というものです。この記事では、報道された事実を確認したうえで、役割の違いが共同正犯の範囲と量刑にどう反映されるのか、そして在留資格にどう跳ね返るのかを説明します。
報道されている事実
時事通信は2026年6月2日、東京都中央区銀座の路上で、高級腕時計の売却代金2185万円が入った紙袋が奪われ、被害者がスタンガンを押し当てられて約2週間のけがを負ったとして、中国籍の男女3人が強盗致傷の疑いで逮捕されたと報じています。年代は20代から30代とされています。逮捕の段階で報じられたものであり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。
ここで確認しておきたいのは、報道からは3人それぞれがどの役割を担ったのか、また各人の在留資格が何であったのかが分からないということです。報道の見出しだけを見て自分の家族の立場を決めつけるのは危険です。
強盗致傷という罪名の重さ
強盗致傷は、暴行または脅迫によって財物を奪う際に人を負傷させた場合に成立します。法定刑の下限は拘禁刑6年で、法定刑に無期が含まれるため裁判員裁判の対象になります。負傷の結果について故意がなくても成立する、いわゆる結果的加重犯であり、けがの程度が比較的軽いことは量刑の事情にはなっても、罪名を軽くする事情にはなりません。
そして共同正犯の原則として、共謀に基づいて誰かが実行した以上、自分が手を下していなくても、共謀の範囲に含まれる結果の全体について責任を負います。「自分は車で待っていただけ」という説明が、そのまま処罰の軽さに直結するわけではないのは、この原則によります。
役割の違いは、どこで量刑に反映されるのか
とはいえ、役割が量刑に反映されないわけではありません。裁判所が見るのは、おおむね次の点です。第1に、関与の時期です。計画の段階から加わっていたのか、当日になって誘われたのか。第2に、指示を出す側だったのか、受ける側だったのか。第3に、報酬の額と分配の方法です。第4に、犯行の準備、とりわけ凶器や逃走手段を誰が用意したのか。第5に、犯行後の行動、すなわち分け前の受領や証拠の処分に関与したかどうかです。
これらは、供述だけでは動きません。通信履歴を時系列に並べ、誰から誰へ指示が流れていたのかを可視化すること、位置情報や送金記録によって関与の実質を裏づけることが、弁護活動の中心になります。年齢の上下から支配関係を推認されがちですが、それは事実による裏づけを要する仮説にすぎません。
凶器の使用についての認識をどう切り分けるか
共同正犯の責任は、共謀した内容の範囲にとどまります。したがって、財物を奪う点では意思を通じていたが、凶器を用いて相手に危害を加えることまでは話に出ておらず、予期もしていなかったという事案では、共謀の射程が争点になります。この主張が通れば、強盗致傷ではなく、より軽い罪の限度で責任を負うにとどまる余地が生じます。
もっとも、この主張は簡単には認められません。事前に凶器が用意されていた、犯行前に凶器の話題が出ていた、その場で凶器の使用を見ながら行動を続けたといった事情があれば、少なくとも暗黙のうちに了解していたと評価されます。争うのであれば、凶器の入手経路と入手時期、当日までのやり取りの内容、犯行時の各人の位置関係といった客観的な材料を、早い段階で集めておく必要があります。
在留資格にどう跳ね返るか
実刑判決を受け、その刑期が1年を超えると、入管法24条4号リの退去強制事由に当たります。全部執行猶予はこの号から除かれていますので、分かれ目は執行猶予が付くかどうかです。出入国管理統計(令和7年)によれば、この号を単独の理由とする退去強制令書の発付は全国で41人、うち中国籍は11人であり、不法残留を理由とする並立の類型を含めると中国籍は47人です。中国籍の発付総数686人に対する比率は約6.9%で、ベトナム国籍の約2.3%の三倍近くに達しています。刑事事件が直ちに退去強制につながるわけではありませんが、この類型に限れば現実の危険があるということです。
同じ統計で、在留特別許可は年間1,030人に対して与えられています。刑事の段階で積み上げた資料は、そのまま入管手続における主張の土台になります。
ご家族が最初にすべきこと
共犯事件では接見禁止が付くことが多く、ご家族は面会も手紙のやり取りもできない状態が続きます。しかし弁護人との接見は制限されませんので、まずは弁護人を通じて本人の状況を把握してください。次に、被害弁償の原資です。被害額が大きい事件では全額の弁償は難しいことが通例ですが、可能な範囲で弁償し、謝罪の意思を形にしておくことは量刑に反映されます。中国からの送金は日数を要しますので、着手は早いほど有利です。
あわせて、本人の在留カードと旅券の所在、勤務先や学校との関係、日本国内での生活の実態を示す資料を整理しておいてください。家賃の支払、健康保険料や税の納付、家族の在留状況といった資料は、量刑の場面でも、後に入管手続に進んだ場合の在留特別許可の判断でも用いられます。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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