舟渡国際法律事務所

開いていた通用口から入っただけでも建造物侵入になるのか

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開いていた通用口から入っただけでも建造物侵入になるのか

開いていた通用口から入っただけでも建造物侵入になるのか

2026/08/31

門扉も通用口も開いていた。誰にも呼び止められなかった。だから入ってよいと思った。建設現場や工場、テナントビルの事件で、中国籍のご本人やご家族から必ずと言ってよいほど出てくるお話です。しかし日本の実務では、出入口が物理的に開いていたことは、それだけでは「侵入」でないという結論に結び付きません。この記事では、報道された事案を手がかりに、建造物侵入がどのような枠組みで判断されるのか、作業服を着ていたことがなぜ不利に働くのか、弁護人がどこを争えるのか、そして在留資格にどう跳ね返るのかを順に説明します。

報道されたのはどのような事案か

2025年9月12日にニュース配信サイトで配信された報道(配信元の媒体名までは確認できていません)によれば、内装工として働く50代の中国籍の男性が、東京都内の建設現場に作業服を着て通用口から立ち入り、約15分間屋内を物色したうえで電動工具2点を持ち去った疑いで摘発されたとされています。逮捕されたと報じられているにとどまり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。ここでは個人を論評するのではなく、この形の事案が日本の刑事手続でどう扱われるのかを一般論として説明します。

開いている通用口から入っても「侵入」になるのか

日本の裁判実務は、建造物侵入の成否を、鍵を壊したか、塀を乗り越えたかという物理的な突破の有無では決めていません。判断の中心にあるのは、その建物を管理している人(管理権者)の意思に反する立入りかどうかです。工事現場の通用口が日中開いているのは、資材の搬入や作業員の出入りのためであって、関係のない人が自由に出入りしてよいという意味ではありません。管理権者が与えている承諾は、あくまで「その現場の作業に関係する者が、作業のために入ること」に限定された承諾です。物色して工具を持ち出す目的で入ることまで承諾している管理権者はいませんから、開いていたという事実は、侵入性を否定する事情にはなりにくいのです。

作業服を着ていたことは、なぜ不利に働くのか

ご本人の感覚では、作業服は「怪しい者ではない」ことの証明のように思えます。ところが法的な評価は逆向きになりがちです。作業服を着ることで、現場の関係者だと誤信させる外観をみずから作り出したと評価されると、管理権者の承諾は、その誤信の上に成り立っていたにすぎないことになります。つまり、承諾があったという推定を自分で作り出したにすぎず、真意に基づく承諾ではなかった、という筋道です。「誰にも止められなかったから許されていると思った」という弁解も、作業服のせいで止められなかっただけだと反論されます。取調べで身分や来訪目的をどう説明したかが、後の主張と食い違うと大きな痛手になりますので、供述する前に弁護人と方針を決めておく必要があります。

弁護人は何を争い、何を争わないのか

この類型で実際に検討するのは、第1に立入り時点の目的です。入った時点では別の用件があり、屋内で初めて領得の意思が生じたのであれば、建造物侵入の成否そのものを争う余地が出ます。第2に滞在時間と動線です。約15分という物色時間や、どの区画をどう移動したかは、防犯カメラ映像、入退場記録、作業日報、通信記録から客観的に再現できますから、供述に頼らずに検証すべき部分です。第3に処分の見通しです。建造物侵入と窃盗はひとつのまとまりとして処理されるため、侵入部分だけを形式的に争っても量刑が動かない場合があり、それより被害品の返還と被害弁償、再発防止の体制づくりに資源を投じたほうが、不起訴や執行猶予に近づくことがあります。どこで争い、どこで詫びるかの配分を早い段階で決めることが、この類型の弁護の要です。

在留資格にはどう跳ね返るか

報道からはご本人の在留資格が分かりません。そこで場合分けが必要になります。出入国管理及び難民認定法(入管法)が定める退去強制事由のうち、一般の刑事事件で問題になるのは24条4号リで、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合です。ただし全部執行猶予が付いた場合は除かれますから、執行猶予判決なら直ちに退去強制になるわけではありません。また、就労資格の方が身柄拘束によって勤務先を失えば、在留資格に応じた活動を続けられなくなり、更新時の在留資格該当性や素行要件で不利に働きます。永住者や定住者など別表第二の資格の方は退去強制の入口こそ狭いものの、永住許可の取消しや将来の申請への影響は残ります。なお法務省の令和6年の統計では、来日外国人の窃盗の起訴率は52・53%で、全体の44・84%より高い水準にあります(法務省『令和7年版犯罪白書』)。起訴前に手を打つ意味は小さくありません。

ご家族が今日のうちにできること

弁護士に連絡する前でも準備できることがあります。第1に、在留カードと旅券の所在を確認してください。逮捕時に警察が保管していることも、自宅や勤務先に置かれたままのこともあり、後の入管手続で必ず必要になります。第2に、被害弁償の原資を家族内で相談しておいてください。被害品が返っているか、弁償額がいくらになりそうかで見通しが変わります。第3に、勤務先への説明のタイミングです。無断欠勤が続くと解雇に至り、在留資格の維持がかえって難しくなりますから、伝え方を弁護人と相談したうえで動くのが安全です。第4に、差し入れです。現金、下着、眼鏡、常備薬は、拘束が長引くほど重みを増します。接見禁止が付いていても、弁護人との接見は制限されません(刑事訴訟法39条1項)。中国語で率直に話せる弁護人を早く付けることが、最初の分かれ道になります。

中文版:通用门开着我就进去了,这也算侵入建筑物吗

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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