2年で17回入国と報じられた事件。余罪の捜査で拘束はどこまで長引くか
2026/08/31
「2年間で17回入国していた」。報道にこの一文が入ると、事件の見え方が変わります。一回の被害額がそれほど大きくなくても、捜査機関は同種の行為が繰り返されていた可能性を疑い、余罪の裏づけに時間をかけます。その結果、身柄の拘束は当初の見込みより大幅に長くなります。この記事では、反復入国が捜査でどう扱われるのか、逮捕と勾留がどのように積み重なるのか、そしてご家族がどれくらいの期間を見込んで準備すべきかを整理します。
報道された事実
FNNプライムオンライン、日テレNEWS、TBS、NHKが2026年2月26日に伝えたところによれば、空港と都心を結ぶ特急列車の車内で、網棚に置かれたリュックサックから現金約10万円とクレジットカードを盗み、そのカードで高級カメラなど約220万円相当を不正に購入したとして、中国籍の50代の男性が逮捕されました。報道では、この男性が2年間で17回入国していたと伝えられ、被疑事実を否認しているとされています。被害者は40代の中国籍の男性であったと報じられました。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。
反復入国の記録は、捜査で何に使われるか
出入国の記録は、入国と出国の日時が客観的に残るため、捜査機関にとって扱いやすい資料です。滞在していた期間と、同種の被害が発生した日を重ね合わせることで、他の事件との関連を検討する端緒になります。加えて、交通系ICカードの利用履歴、防犯カメラの画像、宿泊の記録、カードの決済履歴といった資料が、時間の軸に沿って並べられます。ここで注意すべきなのは、滞在期間と被害発生日が重なっているという事実だけでは、その事件を行ったことにはならないという点です。同席や近接は、関与を推認させる一つの間接事実にすぎません。弁護人は、この推認の飛躍を丁寧に指摘していくことになります。
逮捕と勾留は一罪ごとに積み重なる
日本の実務では、被疑事実ごとに逮捕と勾留を行うことができます。ある事件で勾留の期間が満了する時期に、別の事件で改めて逮捕されると、そこからまた72時間と最大20日の期間が始まります。余罪が複数あると疑われている事案で、身柄拘束が数か月に及ぶことがあるのは、この構造によります。ご家族から見ると、「いつ出られるのか分からない」という状態が続きます。弁護人の側では、いくつの事件で立件される見込みなのか、押収された物と被害届の対応関係はどうなっているのかを早い段階で把握し、見通しを共有することが役割になります。
ご家族が備えるべき期間の見通し
単純な事案であれば、起訴か不起訴かの判断まで最大でおよそ23日です。しかし、余罪の捜査が続く事案では、この期間が繰り返され、起訴されるまでに数か月を要することがあります。起訴された後は、保釈の請求が可能になりますが、否認している事案や、余罪の捜査が続いている事案では、許可されにくい傾向があります。公判が始まってから判決までに、さらに数か月を要することも珍しくありません。そして刑事手続が終わった後に、入管の手続が続く場合があります。半年から一年という単位で見通しを立て、住居、費用、家族の生活、本国での仕事の整理を段階的に考えておくほうが、途中で立ち行かなくなる事態を避けられます。
在留への影響をどう見るか
入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた場合を退去強制の理由としており、全部執行猶予が付いた場合は除かれます。被害額が積み上がり、複数の事件が併合されると、実刑となる可能性が現実的になり、この規定が視野に入ります。出入国管理統計(令和7年)では、退去強制令書が発付された総数7,722人のうち、24条4号リの単独適用は41人にとどまりますが、中国籍については、退去強制令書発付686人のうち4号リが単独11人と不法残留との並立36人を合わせて47人、およそ6.9%を占めます。ベトナム籍の約2.3%と比べて高く、実刑が視野に入る類型では、刑の重さがそのまま在留の帰趨につながります。
今できること
第一に、弁護人を一本化します。事件が複数に分かれても、全体の見通しを一人が握っているほうが、方針が揺れません。第二に、被害弁償の原資と、支払を決められる方を決めておきます。被害者が複数になる可能性があるため、配分の考え方も先に整理します。第三に、押収された物のうち、生活や在留に必要な書類の還付を求めます。第四に、通訳の質を確認します。反復入国の経緯や資金の流れは、微妙な言い回しの違いが供述の意味を変える領域です。第五に、本人と家族が接触できない期間が長くなることを前提に、弁護人を介した連絡の頻度と方法を決めておきます。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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