観光で来日した2人が同時に逮捕された。帰国便はどうなるか
2026/08/31
観光で日本に来た二人が、その旅の途中で同時に身柄を拘束される。旅程は止まり、予約した便は飛び、宿は空室のまま料金が発生します。この記事は、短期滞在で来日した方が刑事事件の被疑者となった場合に、帰国の予定がどうなるのか、費用と生活はどう回すのか、家族はどの経路で連絡を受けられるのか、そして次に日本へ来るときに何が起きるのかを、時間の流れに沿って整理するものです。
報道された事案
中国のポータルサイト网易が日本の報道を引用して2026年5月11日に伝えたところによれば、東京都台東区の著名な寺院の周辺で、観光客のリュックサックから現金約1万円の入った財布を抜き取ったとして、中国籍の男女2人が現行犯逮捕されました。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。報道からは、この二人がどの在留資格で来日していたかまでは分かりません。以下は、短期滞在の観光目的で来日した方が同じ立場に置かれた場合を想定した解説です。
帰国便は待ってくれない
結論から申し上げると、予約済みの航空券は使えなくなると考えて動くほうが安全です。刑事手続は、逮捕から48時間以内に検察官への送致、逮捕から72時間以内に勾留請求の判断という流れで進み、勾留されれば原則10日、延長されればさらに10日です。旅行の日程を理由に手続が短縮されることはありません。むしろ、日本国内に住居がなく、間もなく出国する予定であるという事情は、逃亡のおそれを基礎づける方向に評価されやすく、短期滞在の方は勾留が付きやすい立場にあります。航空券は変更の可否と払戻しの条件を早めに確認し、旅券が押収されている場合は、その事実を前提に手配し直す必要があります。
在留期限と入管手続の関係
身柄を拘束されている間も、短期滞在の在留期限は進みます。刑事手続が長引き、その途中で期限が到来することは珍しくありません。刑事の処分が決まった後、在留期限が経過していれば、出入国在留管理庁の手続に移行するのが通常の流れです。ここで重要なのは、刑事事件の結論と入管の判断は別物だという点です。不起訴になっても在留期限の問題は残りますし、逆に在留期限内であっても、処分の内容次第で次回以降の上陸審査に影響が及びます。刑事弁護の段階から、出国の方法まで見通して組み立てる必要があります。
費用と生活はどう回すか
宿泊予約のキャンセル料、変更後の航空券、通訳費用、そして被害弁償の原資と、支出はいくつも重なります。本人が所持していた現金は領置され、必要な範囲で差し入れや宅下げの手続を通じてやり取りします。留置施設では、現金で日用品を購入する仕組みがあり、着替えや書籍の差し入れも一定の範囲で認められます。ただし、施設ごとに扱いが異なり、接見禁止が付いていると家族からの差し入れも制限されることがあります。何が届いて何が届かないかは、弁護人を通じて確認しておくのが安全です。
家族はどの経路で連絡を受けられるか
本人が自由に電話をかけることはできません。接見禁止が付けば、弁護人以外との面会や手紙も制限されます。したがって、現実的な連絡経路は弁護人を介したものになります。加えて、外国人が逮捕された場合、本人が要請すれば領事機関への通報が行われる仕組みがあります。領事機関は法的な代理人にはなりませんが、家族への連絡や、通訳・弁護士に関する一般的な情報提供の面で助けになることがあります。家族の側では、本人の氏名と生年月日、旅券番号、逮捕された日と場所、留置されている警察署名を整理しておくと、その後の手続が速く進みます。
次に日本へ来るときに何が起きるか
刑事処分の内容によっては、その後の上陸審査で質問を受けることがあります。上陸を拒否される事由は法律で定められており、一定の刑に処せられたことがある場合や、退去強制を受けた場合には期間の定めが設けられています。他方、不起訴で終わった場合には、刑に処せられたことにはなりません。いずれにせよ、処分の内容を書面で保存しておくことが、将来の説明の裏づけになります。処分を受けないまま出国すれば済むという考え方は、犯人が国外にいる間は公訴時効が進まないと定められていることからも、安全ではありません。
初動でご家族ができること
第一に、留置されている警察署を特定します。第二に、旅券と在留カードに相当する書類、航空券の予約記録を集めます。第三に、日本語と中国語の双方で意思疎通ができる弁護人を選任します。第四に、被害者が旅行者である可能性を考え、弁償の原資と、支払を決められる方をすぐに決めます。第五に、勤務先や学校への連絡の時期を、事実関係が固まってから判断します。第六に、日本での滞在が延びる場合の宿泊と生活費の手当てを準備します。手続は待ってくれませんが、準備が整っているほど、取り得る選択肢は広がります。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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