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「こんなの泥棒にならない」という言い分は通るのか。不法領得の意思と否認の分かれ道

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「こんなの泥棒にならない」という言い分は通るのか。不法領得の意思と否認の分かれ道

「こんなの泥棒にならない」という言い分は通るのか。不法領得の意思と否認の分かれ道

2026/08/31

「ゴミみたいなものを拾っただけで、こんなの泥棒にならない」。畑の農作物をめぐる事件で、実際に報じられた弁解です。同じ趣旨の言い分は、置き引き、店舗での万引き、資材置場からの持ち出しなど、さまざまな場面で出てきます。この記事では、この種の弁解が法律上どう扱われるのか、窃盗罪でいう「盗む意思」(不法領得の意思)とは何か、そして否認を維持することの利益と危険を、実務の順序に沿って比較します。

実際に報じられた弁解

集英社オンライン2025年2月5日の報道によれば、茨城県内の畑からキャベツ8個を盗んだ疑いで現行犯逮捕された中国籍の男性2人は、「ゴミみたいなのは奪ったけど、こんなの泥棒にならない」という趣旨を述べて否認していたと伝えられています。この事件については、その後、水戸地方検察庁下妻支部が不起訴としたと報じられました。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。以下は、この報道を手がかりにした一般的な解説です。

窃盗罪でいう「盗む意思」とは何か

窃盗罪の成立には、他人の財物を自分の支配下に移すという認識のほかに、講学上「不法領得の意思」と呼ばれるものが必要とされています。内容は二つに分けて説明されます。一つは、権利者を排除して自分が所有者であるかのように振る舞う意思です。もう一つは、その物の経済的用法または本来の用法に従って利用し、処分する意思です。ここが重要なのですが、この意思は本人が心の中でどう思っていたかを直接に測るものではなく、外に現れた行動から認定されます。「価値がないと思った」という説明は、意思の内容についての本人の言い分にすぎず、それだけで犯罪の成立が否定されるわけではありません。

主観は客観的な態様から認定される

実務では、次のような客観的事情が積み上げられます。行為の時間帯と場所、周囲から見えにくい態勢を取ったか、持ち去った数量、運搬の手段を用意していたか、その場を離れる速さ、声をかけられたときの反応、押収された物の保管状況、そして供述の変遷です。たとえば、廃棄された物だと本当に信じていたのなら、堂々と昼間に持ち帰り、所有者に尋ねることもできたはずだ、という具合に、行動の一つひとつが評価の材料になります。逆に、収穫の残りが山積みにされ、外形上も投棄されたと見える状態であったといった事情は、弁解の裏づけになり得ます。弁護人が最初に確認するのは、供述の当否ではなく、現場の状況を裏づける客観的な資料が残っているかどうかです。

「価値がない物だと思った」は通る場合があるのか

争点になり得る場面はあります。第一に、その物がなお誰かの支配下にあったといえるかという占有の問題です。所有者の管理する敷地内にある限り、外形が悪くても占有は認められやすい一方、収集場所に出された廃棄物であれば評価が変わることがあります。第二に、本人が置かれていた情報環境です。日本語の掲示が読めず、自由に取ってよい場所だと誤解する事情があったのかどうかは、故意の有無や情状に関わります。ただし、法律を知らなかったこと自体は、罪を犯す意思がなかったことにはならないと定められています。誤解の中身が、事実に関する誤りなのか、法律の評価についての誤りなのかで、扱いが変わります。

否認を維持することの利益と危険

利益は明確です。事実を争えば、不起訴や無罪の可能性を残せますし、いったん認めた供述を後から撤回するより、はじめから争っておくほうが公判での説得力が保たれます。他方、危険もあります。第一に身柄です。否認事件では罪証隠滅のおそれが認められやすく、勾留延長や接見禁止が付きやすい傾向があります。第二に、被害弁償や謝罪の申入れがしにくくなり、財産犯で最も効きやすい情状を積めません。第三に、就労や在学が長期の身柄拘束で途切れ、在留資格の基礎そのものが揺らぐことがあります。争う価値のある事案かどうかを、証拠を見たうえで冷静に見極める必要があります。

方針を決めるのは誰か、いつか

決めるのはご本人ですが、判断の材料をそろえるのは弁護人の役割です。取調べは逮捕直後から始まり、初期の供述は後の手続で繰り返し参照されます。ですから、最初の取調べの前に、通訳を介して事実関係と証拠の見通しを確認する時間を作ることが、実務上いちばん効きます。供述調書に署名や押印をすることは義務ではなく、内容が自分の説明と違うと感じたときは訂正を求めることができます。ご家族としては、本人を責めずに、事実の記憶を整理できる状態を保つこと、現場の写真や連絡の履歴など後から集めにくい資料を早めに保存しておくことが助けになります。

中文版:“这种东西算什么偷”的否认,与不法领得的意思

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

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この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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