罰金や不起訴で終わっても、次の在留期間の更新でつまずくことがある
2026/08/31
刑事事件が不起訴で終わった。あるいは略式の罰金で終わった。多くの方が、そこで一区切りついたと考えます。しかし、在留資格を持って日本で暮らす方にとっては、そこからもう一つ、別の審査が控えています。在留期間の更新です。刑事処分と入管の判断は、別々の物差しで動いています。この記事は、退去強制事由に当たらないことと、更新が許可されることが、なぜ同じではないのかを整理します。
まず、報道された三つの終わり方を見る
2026年6月10日のKSB瀬戸内海放送の報道によれば、香川県で、中国籍の30歳の男が、他人名義のカードを使ってコンビニエンスストアの現金自動預払機から19万9,000円を引き出したとして、窃盗の疑いで逮捕されたと報じられています。続報は確認できておらず、処分の結果は分かりません。次に、2026年1月29日にライブドアニュースが掲載した報道によれば、SNS型投資詐欺の現金約8,000万円を複数の口座に移転させたとして中国籍の男性ら5人が逮捕され、うち3人が嫌疑不十分で不起訴となりました。もう一件、YBC山形放送は、SNS型ロマンス詐欺の出金役として中国籍の男性が逮捕されたと報じています。この報道については、当方で報道日を確認できていないため、日付を記載しません。いずれも起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。
退去強制事由に当たらないことは、出発点にすぎない
出入国管理及び難民認定法(入管法)の退去強制事由のうち、刑事処分に直接結び付くのは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合の規定です。ここには但書があり、全部執行猶予が付いた場合は除かれます。ですから、不起訴、罰金、執行猶予にとどまれば、この規定によって退去強制の対象になることはありません。ただし例外があり、覚醒剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律などの薬物関係の違反は、別の号で扱われ、罰金でも執行猶予でも有罪判決があれば該当します。薬物だけは扱いが違うということを、まず押さえてください。そのうえで、退去強制にならないという結論は、日本に住み続けられるという結論とは別のものです。
更新の審査では、素行が正面から見られる
在留期間の更新は、権利として当然に認められるものではなく、更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるかどうかという判断に委ねられています。出入国在留管理庁は、変更・更新の許否判断にあたって考慮する要素を示しており、その中には、素行が善良であること、独立して生計を営むに足りる資産又は技能があること、雇用や活動の状況が在留資格に合致していることなどが含まれます。ここでいう素行は、退去強制事由に当たるかどうかという厳格な線引きではなく、より幅のある評価です。ですから、退去強制の要件を満たさない処分であっても、更新の場面では消極的に働き得ます。刑事の終わりが、入管の始まりになるのです。
不起訴の記録は、どこまで残るのか
正確に区別しましょう。前科と呼ばれるのは、有罪判決が確定した場合です。不起訴は有罪ではありませんから、前科にはなりません。他方で、捜査を受けたという事実は、捜査機関の記録として残ります。不起訴となった場合には、請求により、その旨の告知を受けられる取扱いがあります。この告知を得ておくと、後の手続で、自分の事件がどのような理由で不起訴になったのかを示す資料として使える場合があります。入管が個々の事件の情報をどの範囲で把握し、どう評価しているかについては、詳細な運用が公表されていません。したがって、この点について断定的な説明はできません。分かっているのは、更新の申請書には賞罰の記載欄があり、正確に記載しなければならないということです。ここで虚偽を記載すれば、それ自体が新たな不利益を招きます。
在留資格ごとに、影響の出方が違う
留学の方は、在籍の維持が前提です。事件で長く身柄を拘束されて出席日数が足りなくなり、除籍や退学に至れば、そもそも活動の実体が失われます。技術・人文知識・国際業務の方は、勤務先が継続して雇用する意思を持っているかどうかが決定的で、事件を理由に退職すると、資格該当性の説明が難しくなります。経営・管理の方は、事業そのものの適法性が問われます。家族滞在の方は、扶養者の在留と収入が土台です。これに対して、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者といった身分に基づく在留資格の方は、活動の内容を問われませんから、退去強制事由に当たるかどうかが最大の分かれ目になります。在留外国人統計(令和7年末)によれば、中国籍の在留者930,428人のうち、こうした身分に基づく在留資格と特別永住者を合わせると約47%を占めます。ご自身がどちらの側にいるかで、次に打つ手が変わります。
今日から準備できること
第一に、事件の結末を示す書面を整えることです。不起訴であればその旨の告知、罰金であれば納付を終えた事実、執行猶予であれば判決の内容。次に、更新の際に素行以外の要素で説得できる材料を厚くします。継続して働いていること、納税と社会保険料の納付を怠っていないこと、住居が安定していること、家族が日本にいること、地域や職場で果たしている役割。これらは、事件の後に急に作れるものではありません。第三に、更新の時期が近い場合は、申請の前に弁護士に相談してください。書き方一つで、同じ事実がまったく違う印象を与えます。刑事の弁護人と、入管の手続を扱う者が同じ窓口であることの意味は、この場面で最も大きくなります。
中文版:即便以罚金或不起诉了结,下一次在留期间更新仍可能受阻
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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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