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中国籍の被疑者が「かけ子」で逮捕された報道はほとんど見当たらない。その意味を考える

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中国籍の被疑者が「かけ子」で逮捕された報道はほとんど見当たらない。その意味を考える

中国籍の被疑者が「かけ子」で逮捕された報道はほとんど見当たらない。その意味を考える

2026/08/31

特殊詐欺の報道を継続して読んでいくと、一つの偏りに気づきます。被害者に電話をかける役、いわゆるかけ子として中国籍の方が逮捕されたという報道は、ほとんど見当たりません。他方で、リクルート、渡航手配、指示、資金の回収といった位置での逮捕は報じられています。この記事は、その偏りが何を意味するのか、そして、その位置に立たされることが刑事責任の上でどういう意味を持つのかを、報道された事例に即して整理します。

まず確認しておきたいこと

以下は、公表された報道から読み取れる構造の分析であり、国籍と犯罪傾向を結びつけるものではありません。特殊詐欺は日本人が被疑者の大多数を占める犯罪類型です。警察庁の「令和6年における組織犯罪の情勢」によれば、令和6年の特殊詐欺の検挙人員は2,320人であり、そのうち中枢被疑者として検挙されたのは58人、全体の2.5%にとどまります。ここで論じるのは、組織が人をどこに配置するかという機能の問題であって、人の属性の問題ではありません。

報じられている二つの事例

2025年11月11日、愛知県警の発表に基づく報道によれば、北海道警の警察官になりすまして電話をかけたとして3人が詐欺未遂の疑いで逮捕され、そのうち中国籍は1人、他の2人は日本国籍とされ、役割はリクルートと渡航手配であったと報じられています。この報道は二次媒体によるもので、一次資料での確認が取れていない点をお断りしておきます。もう一件は、2026年1月8日の時事通信、CBCテレビ、テレビ愛知の報道です。カンボジアを拠点として日本人のかけ子と共謀し、700万円をだまし取ったとして起訴された中国籍の夫婦2人が、名古屋地方裁判所の初公判で起訴内容を認めたと報じられています。前者は逮捕段階であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

なぜ役割が分かれるのか

理由は単純です。かけ子は、高齢の被害者を相手に、警察官や銀行員や役所の職員を演じ切らなければなりません。方言、敬語、役所の言い回し、電話越しの間の取り方まで求められます。日本語を母語としない者には、この役は務まりません。したがって、日本語を話す者がその役に充てられ、日本語を必要としない役、すなわち人を集める、渡航を手配する、口座を用意する、現金を回収する、資金を海外へ動かすといった役に、それ以外の者が配置されます。これは、犯罪組織が効率を優先して人を配置した結果であって、それ以上のものではありません。

上流に配置されることの、刑事責任上の意味

ここが最も重要です。かけ子や受け子は、外形上は目立ちますが、組織の中では末端です。これに対して、人を集める役、資金を動かす役は、組織の継続そのものを支える位置にあります。刑事責任の重さは、報酬の額でも、拘束された時間でもなく、犯行全体への寄与度で測られますから、上流の役割は重く評価されます。また、共謀の射程も広くなります。自分が直接関与した一件だけでなく、その組織が同時期に行った複数の犯行について責任を問われる可能性が出てきます。さらに、拠点が国外にあっても、被害者が日本国内にいる以上、日本の刑法が適用されます。国外にいる間は公訴時効が停止するという定めもあり(刑訴法255条1項)、帰国を待って立件されることもあります。

統計で裏づけを取る

警察庁の同じ資料によれば、令和6年のSNS型投資・ロマンス詐欺の検挙は232件・113人で、うち外国人は26人でした。その内訳は、受け子9人、出し子6人、現金回収運搬1人、道具調達3人、指示役2人、見張り1人、その他4人です。かけ子という区分は現れません。また、海外拠点に関する特殊詐欺事件等での被疑者検挙は16件・合計50人で、国名別ではカンボジアが7件・27人と最多、次いでフィリピン、ベトナム、タイと続きます。国外拠点型の摘発が現実に進んでいることが分かります。

在留資格への影響

詐欺は、出入国管理及び難民認定法(入管法)の退去強制事由のうち、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合の規定によって判断されます。全部執行猶予が付いた場合は除かれますが、組織的な詐欺で上流の役割を担ったと認定されれば、実刑が1年を超える可能性は現実的です。出入国管理統計(令和7年)によれば、この規定による退去強制令書の発付は、中国籍について単独11人、不法残留との並立を含めて47人であり、中国籍の発付総数686人の約6.9%を占めます。この比率はベトナムの約2.3%の約3倍であり、罪名の分布の違いが表れていると考えられます。刑事の弁護方針を立てる段階から、判決後の入管手続を見越して、家族関係や在留の実績を示す資料を保全しておく必要があります。

ご家族が最初にすべきこと

本人が海外から帰国した直後に逮捕された場合、渡航の経緯を示す資料が決定的な意味を持ちます。航空券の予約履歴、現地での滞在先、誰の指示で渡航したか、旅券を誰が管理していたか。旅券を他人に預けさせられていたのであれば、本人もまた支配下に置かれていた可能性を示す事情になります。これらは時間が経つと失われます。あわせて、在留カードと旅券の所在、在留期限、勤務先や学校への連絡の要否を確認してください。勾留は原則10日、延長で合計20日ですが、共犯者の多い事件では再逮捕が繰り返され、拘束が長期化します。早い段階で、中国語で事情を聞き取れる弁護人に相談することをお勧めします。

中文版:几乎找不到中国籍嫌疑人作为拨号手被捕的报道,这意味着什么

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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