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他人になりすまして手付金を送金する。マンションが資金洗浄の受け皿になる手口

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他人になりすまして手付金を送金する。マンションが資金洗浄の受け皿になる手口

他人になりすまして手付金を送金する。マンションが資金洗浄の受け皿になる手口

2026/08/31

詐欺の被害金が、そのまま現金で隠されるとは限りません。近年、警察庁の年次報告書が繰り返し取り上げているのは、被害金が不動産の購入資金に姿を変えていく手口です。この記事は、不動産の購入や仲介に関わっている方、名義を貸すよう頼まれた方、そして「送金を頼まれただけ」という立場で捜査を受けている方に向けて、公表された匿名事例をもとに、なぜ送金という一つの行為が犯罪収益等隠匿になるのか、責任がどこまで広がるのかを整理します。

公表されている事例。契約者になりすました送金

警察庁犯罪収益移転防止対策室の「令和7年版 犯罪収益移転防止に関する年次報告書」には、次の事例が掲載されています。警視庁が同年11月に検挙した事案で、中国人の女が、特殊詐欺の被害金の一部について、マンション購入契約者である中国人の男になりすまし、その契約者名義で手付金として不動産仲介業者の口座に送金した、というものです。適用されたのは組織的犯罪処罰法の犯罪収益等隠匿でした。年次報告書の事例は最初から匿名で公表されており、氏名も物件も特定されていません。同じ報告書は、地下銀行を通じたいわゆる円元交換によって、犯罪収益である日本円が国内の不動産、とりわけタワーマンションの購入資金に充てられる手口があることを、類型として明記しています。

なぜ「送金しただけ」が隠匿になるのか

犯罪収益等隠匿は、犯罪によって得られた収益について、その取得や処分に関する事実を仮装し、あるいはこれを隠す行為を処罰するものです。ポイントは「仮装」です。自分の名前で振り込めば、そのお金の流れは自分に結びつきます。ところが他人の名義を使えば、記録上は契約者本人が自己資金で手付金を払ったように見える。この、記録に現れる姿と実際の資金の出所とがずれる状態を作り出すことが、まさに仮装です。金額の多寡ではなく、資金の由来を追跡できなくする点に処罰の理由があります。不動産が選ばれるのは、一度の取引で大きな金額を吸収でき、しかも取引後は資産として堂々と保有できるからです。

名義を貸した契約者は無関係でいられるか

ここが読者にとって最も切実な部分でしょう。名義人が何も知らず、口座情報や本人確認資料を盗用されたのであれば、名義人は被害者の側です。しかし実務では、名義人が事情を薄々知りながら承諾していた、あるいは報酬を受け取っていた、という構図がしばしば問題になります。その場合、名義人は隠匿の共犯として扱われる可能性がありますし、そこまで至らなくても、口座の提供が別途、犯罪収益移転防止法違反として立件されることがあります。「自分の口座を通っただけ」「名前を使わせただけ」という説明は、通帳の動き、印鑑や本人確認書類を誰が持っていたか、連絡アプリのやり取り、報酬の有無によって検証されます。

不動産取引に関わる人の責任は、どこまで広がるか

宅地建物取引業者は、犯罪収益移転防止法上の特定事業者であり、取引時の本人確認と、疑わしい取引の届出の義務を負います。届出は取引の相手方に通知されるものではありませんから、契約が滞りなく進んだからといって、届出が出ていないとは限りません。捜査は、契約書、重要事項説明書、手付金の入金記録、送金依頼書、担当者のメモから組み立てられます。仲介の担当者やその通訳、契約の同席者が、後日、参考人として事情を聴かれることは珍しくありません。逆に言えば、これらの資料は、関与の程度を正確に示す防御資料でもあります。書類を廃棄せず、記憶が鮮明なうちに時系列を整理しておくことが、後の説明の説得力を左右します。

弁護人が争う点と、認識の立証

隠匿の事案で最大の争点は、その資金が犯罪によって得られたものだと認識していたかどうかです。捜査機関は、依頼者との関係、送金の不自然さ、報酬の高さ、現金の受渡しの態様、指示の秘匿性といった間接事実を積み上げて認識を推認しようとします。弁護人は、その一つ一つについて、別の説明が成り立つかを検討します。名義を使った理由が、送金限度額や海外送金の制約といった別の動機で説明できる場合もあります。また、隠匿と収受は別の罪であり、資金の性質についての認識の要求される程度も、関与の態様によって違います。事実関係を丁寧に切り分けることが、処分の重さを大きく変えます。

在留資格への影響と、報道から資格が分からない場合の考え方

この種の事例では、報道や公表資料から本人の在留資格が分からないことがほとんどです。ですから、場合分けで考えます。実刑が1年を超えれば、出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号リの退去強制事由に当たり得ますが、全部執行猶予が付いた場合は除かれます。もっとも、退去強制に至らなくても、次の在留期間更新の審査では素行が正面から評価されます。経営・管理や技術・人文知識・国際業務であれば、勤務先や事業の継続が資格該当性そのものに関わりますし、留学であれば在籍の維持が前提になります。日本人の配偶者等や永住者といった身分に基づく在留資格の方は、退去強制事由への該当の有無が決定的な分かれ目になります。

ご家族が最初にすべきこと

まず、契約に関する書類一式、送金の記録、連絡アプリの履歴を保全してください。削除は、それ自体が不利益に評価されます。次に、本人の在留カードと旅券の所在を確認し、有効期限を把握してください。逮捕から72時間以内に勾留請求がなされ、勾留は原則10日、延長で合計20日となりますから、時間の見通しを持つことが大切です。物件の決済期日や住宅ローンの実行が迫っている場合には、契約の相手方への対応も必要になります。中国語で事情を説明できる弁護人に、早い段階で全体像を伝えてください。

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中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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