逮捕人数が媒体によって7人と5人で食い違うとき、何を信じればよいのか
2026/08/31
ご家族が逮捕されたという知らせを受けたとき、多くの方はまずインターネットで報道を探します。ところが、同じ事件のはずなのに、媒体によって逮捕された人数が違う。名前が出ている記事と出ていない記事がある。金額も一致しない。この記事は、そうした食い違いに直面したご家族に向けて、報道でどこまで分かるのか、確実な情報はどこから得られるのか、そして家族が捜査機関に聞ける範囲はどこまでかを説明します。
実際に人数が食い違った例があります
産経新聞ほかが2026年7月2日に報じた、アメリカで発生した詐欺の被害金を日本国内で洗浄したとされる組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)事件では、逮捕された人数について、媒体により7人と5人という食い違いがみられました。この事件は逮捕の段階であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。人数の違いは、どちらかの媒体が誤っているとは限りません。発表の時点が違う、同日に逮捕された者と後日に逮捕された者を分けて数えている、別の被疑事実で逮捕された者を含めているかどうかが違う、といった理由で数字はずれます。
報道の限界を、あらかじめ知っておく
刑事事件の報道は、多くの場合、捜査機関の発表と記者の取材に基づいて書かれます。発表は捜査の必要に応じて範囲が決められ、被疑事実の要約は起訴状の記載とは異なります。金額として報じられる数字も、捜査機関が全体としてみている額であって、後に起訴される事実の金額とは一致しないことが普通です。さらに、逮捕の報道は大きく扱われる一方、不起訴になったこと、起訴された罪名が変わったこと、判決の内容は、ほとんど報じられません。当事務所が事例を検討していても、続報が確認できない事件が大半です。報道からその後の経過を知ろうとしても限界がある、という前提に立ってください。
確実な情報はどこにあるのか
事件の内容を正確に示す資料は、逮捕状に記載された被疑事実、勾留請求の際に示される勾留の理由、勾留状の記載、そして起訴された場合の起訴状です。これらに接することができるのは、原則として本人と弁護人です。弁護人は、接見を通じて本人から被疑事実の告知内容を確認し、留置されている警察署、担当の警察官と検察官、事件の受理番号を特定していきます。ここまで確認して初めて、報道で見た事件とご家族の事件が同一のものかどうかが分かります。逆に言えば、弁護人を選任しない限り、ご家族は事件の輪郭をつかむ手段をほとんど持ちません。
家族が捜査機関から得られる情報の範囲
ご家族が警察署に問い合わせて確認できるのは、おおむね次の範囲です。本人がその署に留置されているかどうか、面会(一般面会)ができるかどうか、接見等禁止が付いているかどうか、差し入れができる物の種類と時間帯、健康状態に関する一般的な事項です。他方で、証拠の内容、共犯者の供述、今後の見通しといった捜査の内容は教えてもらえません。接見等禁止が付いている場合、ご家族は面会も手紙もできませんが、弁護人との接見は制限されません(刑訴法39条1項、81条)。したがって、本人の様子を知り、本人にご家族の意向を伝える経路は、事実上、弁護人だけになります。
弁護人の役割は、情報の経路をつくることです
弁護人がすることは、法廷での弁論だけではありません。逮捕直後の段階では、本人に黙秘権と署名押印を拒む権利を説明し、通訳の質を確認し、被疑事実の内容を家族に伝え、勾留に対して意見を述べ、必要であれば勾留の裁判に対する準抗告を申し立てます。並行して、被害者との示談の可否を探り、身元引受人の確保、勤務先の理解の取り付けを進めます。逮捕から送致、勾留請求までは72時間、勾留は原則10日で延長は最大10日ですから、動ける時間は限られています。報道の人数が合わないと悩んでいる時間を、事件を特定する作業に振り向けたほうがはるかに有益です。
在留への影響を見据えて、いま準備できること
刑事処分の内容が決まらないうちは、在留への影響も確定しません。入管法上、退去強制事由となる刑罰は限られており、無期または1年を超える拘禁刑の実刑(24条4号リ、全部執行猶予は除かれます)や、薬物関係の罪の有罪判決(同号チ)などです。令和7年の出入国管理統計では、退去強制令書の発付7,722人のうち、圧倒的多数は不法残留の5,778人でした。ご家族には、在留カードと旅券の所在の確認、在留期間の満了日の把握、住居地の届出状況の確認、勤務先や学校への説明の段取り、そして弁償の原資の準備をお願いしています。事実が確定していない段階で悲観的な結論を先取りする必要はありません。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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