舟渡国際法律事務所

「通販ショップの副業」と勧誘した側も、上から同じ説明を受けていた場合

お問い合わせはこちら

「通販ショップの副業」と勧誘した側も、上から同じ説明を受けていた場合

「通販ショップの副業」と勧誘した側も、上から同じ説明を受けていた場合

2026/08/31

詐欺の事件で、人を勧誘した側として逮捕されると、周囲は「だます側だったのだから重い」と考えがちです。しかし実際には、勧誘した本人が、さらに上位の者から同じ説明を受け、それを信じてそのまま伝えていた、という構図が現れることがあります。この記事は、勧誘役として関与を疑われた中国籍の方とご家族に向けて、詐欺罪の要である欺罔行為と故意が、どのように検証されるべきかを説明します。

報じられている範囲

KSB瀬戸内海放送の報道によれば、香川県において、中国籍の30歳の男性が、「通販ショップの副業」であるという虚偽の勧誘を行ったとして、詐欺の疑いで逮捕されたとされています。当方が確認できたのは見出しの範囲にとどまり、報道日は確認できていません。詐欺の疑いで逮捕されたと報じられています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。報道からは、男性の在留資格も、上位者の存在も、報酬の有無も分かりません。以下は、この類型に共通する法律論です。

欺罔行為の特定という出発点

詐欺罪が成立するには、人を錯誤に陥らせる行為、すなわち欺罔行為が必要です。ここで大切なのは、「副業と称して勧誘した」という抽象的な説明では足りず、どの言葉のどの部分が事実に反していたのかが特定されなければならない、という点です。通販の副業という枠組み自体は現実に存在します。問題になるのは、たとえば実際には商品が存在しないのに存在すると述べたか、報酬の仕組みについて事実と異なる説明をしたか、資金の使途を偽ったか、といった具体的な内容です。弁護人はまず、捜査機関が何を欺罔行為として構成しているのかを、公訴事実の記載や取調べの質問から見極めます。ここが曖昧なまま進む事件は、実務上少なくありません。

故意はどこで判断されるか

次の関門が故意です。自分が述べている内容が虚偽であると認識していたか。ここで問題になるのが、勧誘役自身が上位者から同じ説明を受けていた場合です。もし勧誘の文言が、上位者から与えられたマニュアルや送信文の写しであり、本人がその内容を事実だと信じていたのであれば、欺罔の故意を欠く余地があります。逆に、上位者から「こう言えば信用される」という趣旨の指示を受けていた形跡があれば、虚偽の認識が推認されます。この分かれ目は、供述の言い回しではなく、やり取りの記録に現れます。

未必の故意という現実的な争点

もっとも、実務でよく問題になるのは、確定的に虚偽と知っていた場合ではなく、うすうす怪しいと思いながら続けた場合です。裁判所は、報酬が業務内容に見合わないほど高額であること、募集経路が通常の求人ではないこと、指示が秘匿的で連絡手段が限定されていること、身分証の提示や契約書の作成を求められないことといった事情を積み上げて、未必の故意を認定します。この点は、最高裁が平成29年12月11日の決定で、だまされたふり作戦の開始後に加担した受け子についても詐欺未遂の承継的共同正犯が成立するとしたことに関連して、依頼を受けた時点での認識をどう見るかという形で争われてきました。ですから弁護側も、これらの事情のうち本件に当てはまらないものを、具体的に示していく必要があります。

客観証拠でどう示すか

示すべきは三つです。第一に、勧誘文言の出所です。上位者から送られた文面をそのまま転送していたのであれば、その転送履歴が最も強い材料になります。第二に、本人自身が損をしていないかです。自分や自分の家族・友人も同じ話に乗って出資していた、報酬が支払われていない、あるいは自分の資金を持ち出しているといった事情は、虚偽の認識と整合しません。第三に、離脱の状況です。おかしいと気づいた後にどう行動したか、その時点で連絡を絶ったのか、続けたのかは、責任の範囲を画する材料になります。これらは端末の押収前に消してしまうと二度と戻りません。データを消さないことが、防御の出発点になります。

在留資格への影響

報道からは在留資格が分かりません。詐欺で無期又は1年を超える拘禁刑の実刑となれば、出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号リの退去強制事由に当たり、全部執行猶予は除外されています。故意が争われて不起訴となれば、この条文の問題は生じません。もっとも、別表第一の在留資格であれば、身柄拘束が長引くこと自体が問題になります。在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていない場合は在留資格の取消事由となり、出入国在留管理庁の統計によれば、令和7年の在留資格取消しは総数1,446件、そのうち第5号によるものが350件です。刑事の結論を待つ間にも、在留の側では時間が進んでいます。

ご家族が今日できること

本人の携帯電話とパソコンのデータを、消さずにそのまま保全してください。次に、本人が誰から話を持ちかけられたのか、その相手とのやり取りが残っていないかを確認します。本人や家族自身が出資していた記録、報酬が支払われていない記録も集めてください。あわせて、在留カードと旅券の所在を確認し、弁護人を通じて差し入れを手配します。接見禁止が付いていても弁護人との接見は制限されません。同じ話に乗った知人がいる場合、その方と口裏合わせと受け取られる連絡を取ることは避け、弁護人に伝えてください。

中文版:以“网店副业”招揽他人的人,自己也是被上线这样告知的

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。