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「何も答えたくない」と黙秘したとき、量刑で不利になるのか

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「何も答えたくない」と黙秘したとき、量刑で不利になるのか

「何も答えたくない」と黙秘したとき、量刑で不利になるのか

2026/08/31

逮捕された方が取調べで「何も答えたくない」と述べたと報じられることがあります。ご家族はここで、黙っていたら不利になるのではないか、態度が悪いと思われるのではないかと不安になります。この記事は、黙秘という選択の意味を、権利としての建前と、量刑実務の現実の両面から説明します。結論を先に言えば、黙秘は認められた権利であり、黙ったこと自体を理由に刑を重くすることは許されません。しかし、それで話が終わるわけではありません。

報じられている範囲

新潟ニュースNSTの報道によれば、新潟県において、中国籍の男性が、70代の男性から150万円をだまし取ったとして詐欺の疑いで逮捕されたとされ、受け子とみられると報じられています。県外に住む被害者の息子からの通報が端緒になったこと、男性が「何も答えたくない」と供述していることも伝えられています。当方が確認できたのは見出しの範囲にとどまり、報道日は確認できていません。詐欺の疑いで逮捕されたと報じられています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。以下は、この局面に共通する制度と実務の説明です。

黙秘権という建前

取調べにおいて供述を拒むことは、憲法と刑事訴訟法が保障する権利です。権利の行使ですから、黙ったことを理由に不利益な推認をすることは許されません。裁判所が「黙秘したから反省していない」と述べて刑を重くすることはできません。この建前は、外国籍の方にとって特に重要です。日本語で行われる取調べでは、質問の意味を取り違えたまま答えてしまう危険が常にあり、いったん調書になった供述を後から覆すのは容易ではないからです。分からないまま答えるより、話さない方が安全な局面は現実に存在します。

それでも残る現実

他方で、量刑の実務では反省の程度が考慮されます。反省は、被害弁償、謝罪、更生の見込みといった具体的な事実を通じて示されるものであって、取調べで何を述べたかだけで決まるものではありません。しかし、起訴・不起訴を決める段階では事情が違います。検察官は、事実関係の説明、被害弁償の申出、共犯関係の解明といった要素を総合して処分を決めます。法務省『令和7年版 犯罪白書』によれば、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴猶予率は48.35%で、およそ半数が起訴猶予となっています。この判断に働きかける余地を残すかどうかは、方針の選び方に関わります。つまり黙秘は、不利益推認を防ぐ盾ではあっても、有利な事情を積み上げる手段ではありません。

通訳を介した取調べに特有の危険

過去には、中国籍の男性が「悪いことだとは思っていなかった」と供述したと報じられた事件もあります(山陽新聞 2022年2月22日報道。この事件も有罪が確定したものではありません)。このような供述は、日本語ではしばしば「違法性の認識がなかった」という主張として読まれますが、話し手の意図は「まさかここまでの犯罪だとは思わなかった」に近いこともあります。通訳を介するとき、ニュアンスは容易に削れます。だからこそ、取調べの録音録画がされているかを確認すること、調書の読み聞かせを受けて内容が違えば署名押印を留保すること、通訳人の訳が不正確だと感じたらその場で申し出ることが大切になります。

方針をどう決めるか

実務では、全面黙秘、一部黙秘、そして事実は認めたうえで評価を争う、という選択肢があります。判断の枠組みは概ね次のとおりです。第一に、事件の外形が客観証拠で固まっているか。防犯カメラや通信記録で受領の事実が動かないなら、それを争っても得るものは少ない。第二に、争点が事実そのものなのか、故意や共謀の範囲なのか。第三に、共犯者の供述がどう出ているか。第四に、被害弁償を進めるうえで本人の説明が要るか。これらは、弁護人が証拠の開示状況を見ながら、身柄拘束の期間中に何度も見直すべきものです。最初に全面黙秘を選んでも、途中で方針を変えることは可能です。逆に、一度した供述を消すことはできません。この非対称が、初期の慎重さを求める理由です。

在留資格への影響

報道からは在留資格が分かりません。詐欺で無期又は1年を超える拘禁刑の実刑となれば、出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号リの退去強制事由に当たり、全部執行猶予は除外されています。黙秘の選択は、直接には入管手続に影響しません。ただし、起訴されるか否か、実刑か執行猶予かという結論を通じて、間接的に在留を左右します。方針を決めるときには、刑事処分の見通しだけでなく、その先の在留の帰趨まで含めて考える必要があります。

ご家族が今できること

本人が黙秘していても、ご家族が動ける領域は残っています。在留カードと旅券の所在の確認、差し入れ、身元引受人の確保、生活環境の整備、そして被害弁償の原資の準備です。接見禁止が付いていても弁護人との接見は制限されませんから、弁護人を通じて本人の意思を確認できます。本人が要請すれば、領事関係に関するウィーン条約36条1項に基づき領事機関への通報が行われます。ご家族が焦って捜査機関に事情を説明しに行くことは、かえって本人の防御を難しくすることがありますので、先に弁護人と相談してください。

中文版:在讯问中保持沉默“什么都不想说”,量刑上会吃亏吗

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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