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被害者と会わない宅配ボックス型の特殊詐欺で、人物の同定をどう争うか

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被害者と会わない宅配ボックス型の特殊詐欺で、人物の同定をどう争うか

被害者と会わない宅配ボックス型の特殊詐欺で、人物の同定をどう争うか

2026/08/31

被害者と一度も顔を合わせない手口では、「その場にいたのは本当にこの人か」という問いが事件の中心になります。目撃者がいないため、立証はもっぱら防犯カメラの映像に頼ることになるからです。この記事では、報道された事案を手がかりに、映像による人物の同定にはどのような限界があるのか、そして弾劾のためにどのような手順を踏むのかを、中国籍の方とそのご家族に向けて説明します。

報道された事案

産経新聞は、宅配ボックスを使って現金を回収する手口の特殊詐欺について、中国籍の3人と男1人が関与したとされ、被害額は約1億円とされる事件を報じています。当方が確認できているのは見出しの範囲にとどまり、報道日と発生場所は確認できていませんので、これらについては記載しません。逮捕段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。以下は、この手口の類型に共通する一般的な解説です。

対面しない手口では、何が立証の柱になるか

被害者が直接手渡す従来型では、被害者自身が犯人を見ており、面通しや写真による識別が行われます。ところが、宅配ボックスや指定場所に現金を置かせる手口では、被害者は犯人を見ていません。そのため、立証の柱は、第一に防犯カメラの映像、第二に携帯電話の位置情報や基地局の記録、第三に交通機関の利用履歴、第四に共犯者の供述に移ります。

このうち、映像は一見すると強力な証拠に見えます。しかし、実際の映像は、画素数が低く、逆光や夜間で不鮮明であり、帽子とマスクで顔が隠れていることが多いのが実情です。そこで捜査機関は、顔以外の要素、すなわち服装、体格、歩き方、持ち物、腕時計や靴といった特徴から同定を試みます。

防犯カメラによる同定の限界

争うべき点は具体的です。第一に、服装は同定の根拠として弱いという点です。量販の衣類は同一のものが多数流通しており、色と形が一致することは個人の特定を意味しません。第二に、体格の推定です。カメラの高さ、レンズの歪み、被写体との距離によって、映像から得られる身長や体格の推定値には幅が生じます。基準物を置いた実測が行われているかを確認する必要があります。第三に、歩容による識別です。歩き方の特徴は、路面の状態、履物、荷物の有無、急いでいたかどうかで容易に変化します。

第四に、複数のカメラをつなぐ「追跡」の問題です。ある地点の人物と別の地点の人物が同一であるという判断は、それ自体が推認です。途中に空白の時間帯があれば、同一性の連鎖は切れます。第五に、捜査報告書の書き方です。「本件被疑者と酷似する人物が映っている」という記載は、結論を先取りした表現であり、根拠となる観察事実が具体的に記されているかを確認しなければなりません。

弾劾のために踏む手順

順序があります。まず、映像の保全です。防犯カメラの記録は一定期間で上書きされますので、弁護側に有利な映像が存在し得るのであれば、早期に保全を求める必要があります。次に、証拠開示です。捜査機関が押収した映像のうち、一部だけが証拠請求されることがあります。同じ日の前後の時間帯、別角度のカメラ、通り沿いの店舗の映像が残っていないかを確認します。

そのうえで、原本の再生です。証拠として提出される静止画は、加工や切り出しを経ています。原データの形式、フレームレート、時刻設定のずれを確認し、必要であれば専門家による検討を求めます。最後に、被疑者側の資料です。当日の所在を示す通信履歴、交通系ICカードの利用記録、勤務先の記録、同席者の証言が揃えば、同一性の主張は大きく揺らぎます。

認める部分と争う部分を切り分ける

すべてを否認することが常に有利とは限りません。複数の回収に関与したとされる事案では、一部については関与を認め、他の一部について同一性を争うという構成があり得ます。この切り分けを誤ると、供述全体の信用性が失われます。逆に、切り分けが合理的であれば、認めた部分については被害弁償を進めることができ、争う部分は証拠に基づいて丁寧に検討できます。方針の決定は、証拠開示の内容を確認したうえで行うべきで、取調べの初期に急いで結論を出すべきではありません。

取調べでは、映像を示されて「これはあなたですね」と問われる場面が生じます。ここで、記憶が曖昧なまま「そうかもしれません」と答えると、その一言が同一性の自認として扱われます。分からないことは分からないと述べる。通訳を介する場合、この区別が調書上あいまいになりやすいため、弁護人に録音録画の有無を確認してもらってください。

在留資格への影響

詐欺で有罪となった場合、退去強制事由として問題になるのは入管法(出入国管理及び難民認定法)24条4号リです。無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者が対象で、ただし書により全部執行猶予は除かれます。回収の回数と認定される被害額は量刑を大きく左右しますので、同一性を争って認定される件数を絞ることは、そのまま在留の帰趨に関わります。なお、身柄拘束が長期化して就労や就学が三か月以上途切れると、在留資格の取消しが別途問題になり得ます。刑事の見通しと並行して、在留の手当ても考えておく必要があります。

ご家族が今日できること

まず、本人の当日の行動を裏づける資料を集めてください。交通系ICカードの利用履歴、勤務先のタイムカード、学校の出席記録、通信アプリの送受信時刻、決済の履歴。これらは時間が経つほど取得が難しくなります。次に、本人が普段身につけていた衣類や持ち物を保存してください。映像に映る人物との異同を検討する材料になります。第三に、在留カードと旅券の所在を確認し、勤務先や学校への説明の段取りを決めてください。最後に、逮捕から起訴・不起訴の判断までは長くて20日ほどです。この間に何を提出できるかで、その後が変わります。

中文版:不与被害人见面的快递柜型特殊诈骗,如何争辩身份同一性

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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