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1億6千万円が押収されても、その全部が自分の被害額になるわけではない

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1億6千万円が押収されても、その全部が自分の被害額になるわけではない

1億6千万円が押収されても、その全部が自分の被害額になるわけではない

2026/08/31

報道で大きな金額が出ると、ご家族はその数字がそのまま本人の罪の重さだと受け止めてしまいます。しかし、押収された金額と、裁判で本人の責任として認定される被害額は、別のものです。この記事では、報道された事案を手がかりに、訴因で特定される被害と、没収・追徴の対象範囲とを分けて考える視点を説明します。中国籍の方とそのご家族に向けた解説です。

報道の範囲——分かっているのは押収額だけ

日本経済新聞は2025年10月、警察官を装う詐欺に関連して、中国籍の男が関わったとされる事件で東京都内において1億6千万円が押収されたと報じました。当方が確認できているのは見出しの範囲にとどまり、被害の内訳や本人の年代といった詳細は確認できていません。したがって、この記事では、報道から確認できない事実については触れません。逮捕・捜査段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

押収額と訴因の被害額は別物である

押収は、捜査のために物を占有下に置く処分です。証拠として必要か、没収の対象になり得るかという観点から行われます。他方、裁判で判断されるのは、起訴状の公訴事実に書かれた具体的な被害です。いつ、誰が、いくらを、どのような方法でだまし取られたのか。この特定がなければ、有罪の認定はできません。

したがって、現場から出た現金が大きくても、そのうち訴因に取り込まれる部分は、被害者の申告、振込の記録、通話の記録、受渡しの目撃といった証拠で個別に特定できたものに限られます。実務では、押収額の一部だけが起訴されることは珍しくありません。捜査機関が公表する金額と、判決で認定される金額は、しばしば大きく異なります。

没収・追徴はどこまで及ぶのか

没収は、判決で特定の物の所有権を国庫に移す処分です。追徴は、その物を没収できないときに価額相当額の納付を命じる処分です。いずれも、対象が犯罪によって得られた財産であることを前提とします。訴因に含まれない現金について犯罪収益であると主張するのであれば、その立証は検察官が担います。「同じ部屋から出てきた」「同じ紙袋に入っていた」という事情は、状況証拠の一つにはなりますが、それだけで全額の犯罪収益性が認められるわけではありません。

弁護人は、押収された現金の保管状態、区分の有無、他の資金との混和の程度、被疑者の収入や資産との整合性を確認します。適法な出所を示せる部分があるのであれば、その資料を早い段階で提出します。

報道の数字が独り歩きする危険

大きな数字は記憶に残ります。ご家族が「うちの家族は1億円以上の詐欺をした」と思い込んでしまうと、示談の準備も、判決後の見通しも、実態からずれた前提で進んでしまいます。勤務先や学校に説明する際も、報道された数字をそのまま前提にすると、必要以上に厳しい対応を招くことがあります。まず、起訴状に書かれた公訴事実を確認してください。弁護人が選任されていれば、公訴事実の内容と、検察官が請求している証拠の中身を説明してもらえます。

捜査段階では、報道の数字が組織全体の被害総額であることも、複数の被疑者の分を合算したものであることもあります。数字の意味を確認しないまま前提にしないことが大切です。

弁護人が最初に確認すること

順序は決まっています。第一に、逮捕状と勾留状に記載された被疑事実を確認し、何件が立件されているのかを把握します。第二に、押収品目録を取り寄せ、何がどこから押収されたのかを一覧にします。第三に、余罪として捜査されている範囲を、取調べの内容から推測します。第四に、被害者が特定されている件について、示談の可否を検討します。被害者が複数いる場合、全員との示談は難しくても、一部の被害者との間で弁償が実現すれば、量刑に反映される余地があります。

在留資格への影響

詐欺で有罪となった場合、退去強制事由として問題になるのは入管法(出入国管理及び難民認定法)24条4号リです。無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者が対象で、ただし書により全部執行猶予は除かれます。認定される被害額は量刑に直結しますので、訴因の範囲を正確に確定させ、争える部分を争うことは、そのまま在留の帰趨に関わります。出入国在留管理庁の令和7年の統計では、退去強制令書の発付総数約7700人のうち、4号リ単独によるものは41人でした。数字だけを見れば少数ですが、中国籍については他の国籍と比べて比率が高いことが読み取れます。

ご家族が今日できること

第一に、報道された金額をそのまま前提にせず、公訴事実の内容を弁護人から確認してください。第二に、押収されていない適法な資金の中から、被害弁償に充てられる原資を確保し、その出所を説明できる書類を揃えてください。第三に、在留カードと旅券の所在を確認し、勤務先や学校への説明の段取りを決めてください。第四に、面会と差し入れを続け、その記録を残してください。長期化する事件ほど、記録の有無が後で効いてきます。

中文版:即便被扣押1亿6千万日元,也不等于全部都算在你头上

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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