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カンボジアの拠点で働いていた期間は、量刑で有利な事情になるか

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カンボジアの拠点で働いていた期間は、量刑で有利な事情になるか

カンボジアの拠点で働いていた期間は、量刑で有利な事情になるか

2026/08/31

海外の拠点で詐欺の仕事をしていた。その期間について、本人が「自分も逃げられなかった」と語ることがあります。これは量刑上、有利な事情として扱われるのでしょうか。それとも、長く関与していた証拠として不利に働くのでしょうか。この記事では、報道された事案を手がかりに、現地での自由の有無をどう主張し、どのような客観資料で裏づけるのか、そして主張の立て方を誤ると何が起きるのかを説明します。

報道された事案

時事通信、CBCテレビ、テレビ愛知は2026年1月8日、カンボジアに拠点を置いたとされる詐欺グループの事件について、中国籍の夫婦2人が日本人のかけ子と共謀して700万円を詐取したとして起訴され、名古屋地方裁判所の初公判で起訴内容を認めたと報じました。報道の時点で判決が確定したものではありません。ここでは、海外拠点で稼働していた期間の評価という一般的な論点を扱います。

現地での自由の有無が量刑に影響する理由

量刑は、行為の重さだけで決まるものではありません。行為に至った経緯、動機の形成、意思決定の自由度も考慮されます。海外拠点型の事案では、渡航してから初めて仕事の中身を知り、旅券を取り上げられ、寮から出られず、帰国の費用も持たない状態に置かれることがあると指摘されています。もしそのような状況にあったのであれば、犯行を続けたことについて本人を強く非難できるかという問題が生じます。

もっとも、これは自動的に認められる事情ではありません。裁判所は、抽象的な訴えではなく、具体的な事実の積み重ねを見ます。したがって、主張の中心は「かわいそうだった」ではなく、「この日、この場所で、この選択肢がなかった」という記述になります。

渡航経緯を客観資料で裏づける

まず押さえるのは、どのような募集に応じて渡航したのかです。募集の文言が残っていれば、それ自体が最も強い資料になります。求人の広告、紹介者とのやり取り、提示された職種と給与、渡航費用を誰が負担したか、航空券を誰が手配したか、現地で最初に連れて行かれた場所。これらは携帯電話の記録と出入国の記録から相当程度に復元できます。募集の段階で詐欺の内容が示されていなかったのであれば、当初の故意の欠如という主張につながります。

次に、現地での生活実態です。宿舎の写真、外出の可否、食事の提供方法、通信手段の制限、監視の有無、同じ拠点にいた他の人の状況。本人の記憶が新しいうちに、時系列で聞き取り、書面化しておくことが必要です。時間が経つと、日付と場所の記憶は急速に失われます。

報酬の実額と帰国の自由

二つの数字が重要です。一つは、実際に受け取った報酬の額です。被害額に比して受領額が著しく少ないのであれば、組織内での位置づけが低いことの徴表になります。もう一つは、帰国のために必要だった費用と、本人が持っていた資金です。旅費を持たず、旅券も手元になければ、離脱の物理的な可能性は限られていたことになります。

あわせて、実際に帰国できたのはいつか、どのような経緯だったのかも見ます。自力で抜け出したのであれば、その経緯自体が離脱の意思を示す事情になります。逆に、組織の指示で帰国し、日本国内で別の役割を担ったのであれば、自由がなかったという主張は成り立ちにくくなります。事実を選んで語るのではなく、全体像を出したうえで評価を争うほうが、結果として信用されます。

主張の立て方を誤ると何が起きるか

三つの失敗があります。第一に、裏づけのない強い主張です。客観資料と食い違えば、供述全体の信用性が損なわれ、他の有利な事情まで軽く扱われます。第二に、責任転嫁と受け取られる語り方です。被害者への謝罪や弁償の努力を欠いたまま自分の苦境だけを述べれば、反省が伝わりません。第三に、時期の混同です。自由を欠いていた期間と、自らの判断で関与を続けた期間が混在している場合、両者を区別せずに語ると、全体が信用されなくなります。期間を区切って、いつまでが何であったかを明確にすることが必要です。

在留資格への影響

詐欺で有罪となった場合の退去強制事由は、入管法(出入国管理及び難民認定法)24条4号リです。無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者が対象で、全部執行猶予はただし書で除かれます。したがって、現地での事情が量刑を動かせば、そのまま在留の帰趨も変わります。なお、警察庁の令和6年の統計によれば、海外拠点に関係する特殊詐欺事件等での被疑者検挙は16件・合計50人で、国名別ではカンボジアが7件・27人と最も多いとされています。海外拠点型は特定の国籍に固有の現象ではありません。

ご家族が集められる資料

ご家族の側でできることは具体的です。第一に、渡航前後のやり取りの保存です。通信アプリの履歴、送金記録、家族への連絡の頻度と内容は、本人の自由度を示す資料になります。第二に、渡航費用と現地での送金の記録です。第三に、本人が帰国を望んでいたことを示す連絡の記録です。第四に、日本国内の生活基盤、つまり住居、就労先、監督できる方の存在を示す資料です。これらは量刑資料としても、後に在留特別許可を求める際の疎明資料としても使えます。面会や手紙のやり取りは、家族関係が現に続いていることの証明にもなりますので、記録を残しておいてください。

中文版:在柬埔寨据点工作的那段经历,能否成为有利的量刑情状

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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

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この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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