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パスポートを預かっていた事実は、他人を支配していた証拠になるのか

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パスポートを預かっていた事実は、他人を支配していた証拠になるのか

パスポートを預かっていた事実は、他人を支配していた証拠になるのか

2026/08/31

一緒に働いていた仲間の旅券を、まとめて自分が持っていた。理由は「なくすと困るから」だった。ところが取調べでは、それが「他人を支配していた証拠」として扱われる。この落差に戸惑うご相談があります。この記事では、報道された事案を手がかりに、旅券の保管がなぜ支配の徴表とされるのか、そしてどのような事実を示せばその評価を動かせるのかを説明します。

報道された事案と、旅券管理という論点

愛知県警の発表に基づく報道として、2025年11月11日、北海道警の警察官になりすまして電話をかける手口の詐欺未遂で、3人が逮捕されたと伝えられています(当方は一次資料を確認できていないため、報道の範囲での記述にとどめます)。報道によれば、3人のうち1人が中国籍、2人が日本国籍とされ、愛知県、岐阜県、埼玉県および中国が関係地として挙げられ、人のリクルートと渡航の手配が分担されていたとされています。逮捕段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。渡航手配が分担された類型では、旅券を誰が持っていたかがしばしば論点になります。

なぜ旅券の保管が「支配」の徴表とされるのか

旅券は、国境を越える自由を実際に支える文書です。手元になければ、帰国も移動も自力ではできません。したがって、他人の旅券を保管している者は、その他人が組織から離脱することを事実上妨げる立場にあると評価されやすくなります。捜査機関は、この評価を組織内の上下関係の推認に結びつけます。旅券を持っている側が上、預けている側が下、という単純な図式です。

この推認は、まったく根拠のないものではありません。しかし、保管という外形は同じでも、その意味は経緯によってまったく異なります。ここを分けて示すのが弁護の中心になります。

保管の経緯を具体的に示す

確認すべきは次の点です。誰が言い出して預けることになったのか。預けた側が自分の判断で渡したのか、渡さなければ仕事を続けられないと言われたのか。保管していた者自身も、さらに上位の者へ旅券を差し出していたのか。集合住宅で共同生活をしていた場合、金庫や引出しの鍵は誰が持っていたのか。旅券のほかに携帯電話や在留カードもまとめられていたのか。

保管者自身の旅券も同じ場所にあり、その保管者もまた上位者の指示で動いていたという事実が示せれば、支配の頂点は別にあるという主張が成り立ちます。共同生活の実態、住居の賃借人が誰か、家賃を誰が払っていたか、食事の費用を誰が出していたかといった生活面の資料が、ここでは意外に効きます。

返還の可否と本人の自由度——ここが決定的

最も重要なのは、預けた側が返してほしいと言えば返してもらえたかどうかです。実際に返還を求めた場面があり、その場で返されていれば、保管は支配ではなく単なる預かりに近づきます。逆に、返還を拒んだ、条件を付けた、借金の返済と結びつけたといった事情があれば、評価は厳しくなります。

あわせて、預けた側の行動の自由も見ます。単独で外出できたか、自分の意思で買い物や通院ができたか、家族と自由に連絡できたか、給与や報酬を自分で管理していたか。これらが確保されていたのであれば、旅券の保管という一点だけで支配関係を認定するのは無理があります。関係者の携帯電話の位置情報、交通系ICカードの利用履歴、送金や通話の記録が、こうした自由度を裏づける客観資料になります。

取調べで危ないのは「預かっていました」の一言

取調べでは、「旅券を預かっていましたか」という問いに「はい」と答えるだけで、その一言が調書に残ります。しかし、実際の記憶は「同じ部屋に住んでいて、机の引出しに全員分がまとめて置いてあった」という程度かもしれません。保管という言葉には、管理する意思と排他的な支配という含みがあり、日本語の調書ではその含みが前面に出ます。通訳を介した場合、この微妙な差は失われやすくなります。事実として何がどこにあったのかを、動作のレベルで述べること。評価を含む言葉は避けること。この二点を接見で確認してもらってください。

在留資格への影響——旅券の所在は入管手続でも問われる

詐欺で有罪となった場合の退去強制事由は、入管法(出入国管理及び難民認定法)24条4号リであり、無期または1年を超える拘禁刑の実刑が基準になります。全部執行猶予はただし書で除かれます。組織内での位置づけが上位だと認定されるほど量刑は重くなり、この線を越える危険が高まります。旅券管理の評価は、単なる一事情ではなく、量刑を通じて在留の帰趨に直結します。

また、旅券が押収されたままだと、その後の入管手続や帰国の準備が進みません。事件の終結後に旅券が返還されるのか、本国の在外公館で再発給を受ける必要があるのかは、早めに確認しておくべき点です。

ご家族が今日できること

共同生活の実態を示す資料を集めてください。賃貸借契約書、公共料金の名義、家賃の送金記録、部屋の写真、同居していた人数と期間のメモ。本人が自由に出入りしていたことを示す通勤・通学の記録や交通系ICカードの履歴も有用です。あわせて、本人の旅券の番号と有効期限、在留カードの番号を控えておいてください。押収されている場合でも、番号が分かれば手続の照会が進めやすくなります。面会が制限されている段階では、こうした周辺の資料集めが、ご家族にできる最も実質的な支援になります。

中文版:保管他人护照这一事实,会成为支配关系的证据吗

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

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この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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