舟渡国際法律事務所

拠点が中国にあっても日本の裁判で裁かれるのはなぜか 国内犯と共謀の射程

お問い合わせはこちら

拠点が中国にあっても日本の裁判で裁かれるのはなぜか 国内犯と共謀の射程

拠点が中国にあっても日本の裁判で裁かれるのはなぜか 国内犯と共謀の射程

2026/08/31

電話をかけたのは中国国内の建物からで、日本に一度も入っていない。それなのに日本の警察に逮捕され、日本の裁判所で裁かれる。この結果に納得できないというご相談は少なくありません。この記事では、報道された事案を手がかりに、日本の刑罰法規がどこまで及ぶのか、リクルートや渡航手配だけを担当した人がなぜ詐欺そのもので問われるのか、そして時効はどう扱われるのかを説明します。

報道された事案——北海道警の警察官になりすました架電

愛知県警の発表に基づく報道として、2025年11月11日、3人が詐欺未遂の疑いで逮捕されたと伝えられています(当方は一次資料を確認できていないため、以下は報道の範囲での記述です)。報道によれば、3人のうち1人が中国籍、2人が日本国籍とされ、関係する場所として愛知県、岐阜県、埼玉県および中国が挙げられ、北海道警の警察官になりすまして電話をかける手口で、リクルートと渡航の手配が役割として分担されていたとされています。逮捕段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

日本の刑罰法規はどこまで及ぶのか

刑法は、日本国内で罪を犯した者に適用されます。ここでいう「国内で罪を犯した」とは、行為の全部が国内で行われた場合に限られません。犯罪を構成する事実の一部が国内で生じていれば足りると解されています。詐欺は、欺く行為があり、相手が錯誤に陥り、その錯誤に基づいて財物を交付するという一連の過程で成立します。被害者が日本国内にいて、日本国内で電話を受け、日本国内で現金を渡したのであれば、結果は国内で発生しています。したがって、架電した場所が中国であっても、日本の刑罰法規が適用されるという結論になります。

この理屈は、被害者の所在という一点にかかっています。国境をまたいだ組織であっても、被害者が日本にいる限り、捜査も裁判も日本で行われるということです。

リクルーターや渡航手配役は、なぜ詐欺そのもので問われるのか

共謀共同正犯という考え方が使われるためです。実行行為に手を触れていなくても、犯罪の実現について意思を通じ、実行を容易にする役割を分担していれば、実行者と同じ罪で処罰され得ます。人を集める、旅券や航空券を手配する、現地での住居を用意する。これらは詐欺の実行行為そのものではありませんが、組織が動くための不可欠な部分と評価されやすい行為です。

もっとも、共謀の射程は無限ではありません。争点になるのは三つです。第一に、何を認識していたか。「日本で高収入の仕事がある」としか聞かされていなかったのか、詐欺の内容まで知らされていたのか。第二に、いつ加わったか。既に稼働していた組織に途中から入った場合、それ以前の被害まで負うのかは別問題です。第三に、どこまで及ぶ合意だったか。特定の一件についてだけ手配したのか、継続的な関与を約束していたのか。募集の文言、報酬の決め方、連絡の頻度と内容が、この三点を分ける材料になります。

中国にいる間、時効は進まない

刑事訴訟法の規定により、犯人が国外にいる間は公訴時効の進行が停止します。実務上の意味は大きく、何年も前に中国へ戻った人が、後になって入国した時点で逮捕されるという事態が現実に起こります。「もう時間が経ったから大丈夫だろう」という判断は、この規定を見落としています。日本への渡航予定がある方は、事前に自分の立場を確認しておくほうが安全です。

身柄が日本にない共犯者の供述に注意する

国境をまたぐ事件では、共犯者の一部が国外にとどまり、日本にいる被疑者だけが取り調べられるという構図が生まれます。すると、その場にいない人物の役割は、日本にいる被疑者の供述と押収された通信記録だけで組み立てられます。逆に言えば、日本にいる被疑者の供述が、他の共犯者の説明によって一方的に上書きされる危険もあります。取調べでは、自分が知らないことは知らないと述べ、推測を事実として語らないことが重要です。通訳を介した取調べでは、推測と事実の区別が調書上あいまいになりやすく、後の公判で不利に働きます。録音録画の有無を弁護人に確認してもらってください。

在留資格への影響

詐欺で有罪となった場合、退去強制事由として問題になるのは入管法(出入国管理及び難民認定法)24条4号リです。無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者が対象で、ただし書により全部執行猶予は除かれます。未遂にとどまった事案では量刑が相対的に軽くなる余地があり、この線の内側に収まるかどうかが実務上の焦点になります。警察庁の令和6年の統計によれば、海外拠点に関係する特殊詐欺事件等での被疑者検挙は16件・合計50人で、国名別ではカンボジアが最も多いとされています。国外拠点型が特定の国籍に固有の現象ではないことは、数字からも分かります。

ご家族が最初にすべきこと

まず、本人が中国のどこにいつからいたのかを、出入国の記録と航空券、宿泊の記録で確定してください。渡航の経緯を客観的に示せるかどうかが、共謀の範囲を争う出発点になります。次に、募集を受けた際のやり取り、送金の記録、現地で受け取った金額を整理します。最後に、日本国内の在留カードと旅券の所在を確認し、勤務先や学校への説明の段取りを決めてください。逮捕から起訴・不起訴の判断まではおおむね20日以内です。この間に何を提出できるかで、その後が変わります。

中文版:据点在中国,为何仍要在日本受审 国内犯与共谋的射程

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。