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「悪いことだとは思っていなかった」という供述は有利か不利か

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「悪いことだとは思っていなかった」という供述は有利か不利か

「悪いことだとは思っていなかった」という供述は有利か不利か

2026/08/31

特殊詐欺の受け子・出し子として逮捕された方が、取調べでよく口にする言葉があります。「悪いことだとは思っていなかった」。ご本人としては正直な気持ちを述べたつもりですし、実際、募集の経緯を聞けばそう思うのも無理はない事案もあります。しかし、この一言は、日本の刑事手続では二通りに読まれます。故意を否定する主張として読まれることもあれば、反省がないことの表れとして読まれることもあります。この記事では、その分かれ目がどこにあるのか、弁護人が早い段階で何を整理すべきかを、報道された事件を手がかりに考えます。

報道されている事件

山陽新聞の2022年2月22日報道によれば、中国籍の男性(38)が、銀行協会の職員を装ってキャッシュカード3枚をだまし取り、50万円を引き出したとして、詐欺と窃盗の疑いで逮捕されました。報道では、本人が「悪いことだとは思っていなかった」と供述したとされています。これは逮捕の疑いで報じられた段階のものであり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

この一言は、二つの意味に読まれる

第一の読み方は、故意の否認です。カードを受け取る行為が詐欺の一部であるとは認識していなかった、という趣旨であれば、これは犯罪の成立自体を争う主張になります。第二の読み方は、規範意識の欠如です。他人のカードを持ち去って現金を引き出すことが違法だと分からないはずがない、それを「悪いと思わなかった」と言うのは反省がないからだ、という評価につながります。

同じ言葉が、無罪方向にも量刑加重方向にも働くのです。どちらに読まれるかは、その後に本人が何を語ったか、依頼の経緯がどこまで説明されたかによって決まります。

故意の否認としての価値は、どこにあるか

特殊詐欺の受け子について、最高裁判所は平成29年12月11日の決定で、いわゆるだまされたふり作戦が開始された後に加担した者にも、詐欺未遂の承継的共同正犯が成立するとの判断を示しています。途中から加わったこと自体は、責任を免れる理由にはなりません。したがって、争点は関与の時期ではなく、依頼を受けた時点で、それが詐欺の一部だと認識していたか、少なくともその可能性を認識しつつ引き受けたかという点に集約されます。

ここで意味を持つのは、募集の経路がどのようなものだったか、報酬が労働の対価としてどの程度不自然だったか、指示の内容がどれほど秘匿的だったかです。交流サイトの求人を通じて、荷物の受取という名目で、短時間に高額の報酬を提示され、身分を明かさない相手から指示を受けていたという事情は、通常、未必の故意を推認させます。逆に、知人からの依頼で、報酬も常識的な範囲にとどまり、業務内容の説明も一応筋が通っていたのであれば、「悪いことだとは思っていなかった」という言葉に実質が伴います。

反省の欠如と読まれる危険

問題は、事実関係を争わない方針を採る場合です。認めたうえで情状を積み上げようとしているのに、取調べの初期に「悪いことだとは思っていなかった」という調書が残っていると、公判で被害者に謝罪しても、その言葉が後付けに見えてしまいます。検察官はこの供述を引用し、規範意識の乏しさを論告で指摘します。認める方針と、この供述は相性が悪いのです。

弁護人が早期に位置づけを整理するとはどういうことか

したがって、逮捕直後の段階で決めなければならないのは、本件を争うのか、認めて情状で戦うのかという方針です。そのうえで、争うのであれば「悪いことだと思っていなかった」の中身を、依頼の経緯という具体的事実に分解して語る。認めるのであれば、当時の認識の乏しさを述べつつ、現在は違法性を理解しているという時間軸を明示する。どちらも、本人が中国語で正確に理解したうえで話す必要があります。

ここを整理しないまま取調べが進むと、争うにも認めるにも中途半端な調書が積み上がります。実務でよく見る失敗です。

方針を決めるために、初期に集める材料

募集を見た交流サイトの画面、指示者とのやりとり、報酬の受取記録、当日の移動経路。これらは、本人の認識を裏づけるほとんど唯一の客観資料です。ご家族には、本人の端末を初期化しないこと、通信アプリのアカウントを削除しないことをお願いしています。不利に見える記録の中にこそ、本人がどこまで知らされていなかったかを示す部分が含まれています。

在留資格への影響

詐欺や窃盗は、入管法(出入国管理及び難民認定法)24条4号チの薬物関係にも、別表第一の在留資格の方に限って適用される24条4号の2の特定犯罪にも含まれません。分岐点は24条4号リ、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた場合であり、全部執行猶予がついた場合は但書により除かれます。反省の評価は量刑を通じてこの分岐点との距離を変えます。取調べの初期に何をどう語るかは、在留の問題でもあるということです。

中文版:“没觉得是坏事”这样的供述,是有利还是不利

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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

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この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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