「現金を運ぶだけ」と言われて受け取った50万円で再逮捕された
2026/08/31
「一度釈放されると聞いていたのに、その日にまた逮捕された」。資金洗浄や特殊詐欺の事件で、ご家族から最も動揺したご様子で伺うのがこの相談です。再逮捕は、日本の刑事手続では珍しいことではありません。むしろ、複数の受渡しや複数の被害が絡む事件では、当初から想定しておくべき展開です。この記事では、報道された事件を手がかりに、なぜ再逮捕が起きるのか、受渡し地と捜査を担当する県警が違うことに何の意味があるのか、そして再逮捕を見越して供述方針と接見をどう設計するのかを整理します。
報道されている事件
神奈川新聞の2024年11月6日報道によれば、中国籍の男性(32)が、他人名義のカードで引き出された現金50万円を、犯罪収益と知りながら受け取ったとして、組織的犯罪処罰法違反の疑いで逮捕されました。報道では、現金の受渡しは東京都北区で行われ、捜査を担当したのは神奈川県警の国際捜査課であるとされ、また再逮捕の事案であるとされています。これは逮捕の疑いで報じられた段階のものであり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。
なぜ50万円という金額で再逮捕が起きるのか
身柄拘束の期間は、一つの被疑事実ごとに区切られています。逮捕後、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留を請求します。勾留は原則10日、延長でさらに10日で、この20日が上限です。捜査機関から見ると、複数の受渡しや複数の被害がある事件では、この20日で全部を調べ切ることができません。そこで、まず一件の受渡しで逮捕し、勾留期間が満了する頃に別の受渡しで再び逮捕する、という形が取られます。金額の大小は決め手ではありません。立件できる単位が別にあるかどうかが決め手です。
ですから、「50万円だけの話なら、すぐ帰れるはずだ」という見通しは危険です。実際の拘束期間は、金額ではなく、捜査機関が把握している受渡しの数によって決まります。
受渡し地と捜査主体が違うことの意味
報道された事件では、受渡しが東京都内で行われ、捜査は神奈川県警が担当したとされています。これは珍しいことではありません。詐欺の被害者が神奈川県にいれば、被害の発生地を管轄する県警が事件全体を捜査します。受渡しがどこで行われたかは、捜査主体を決める唯一の基準ではないのです。
この構造は、弁護活動に具体的な負担をもたらします。留置場所と捜査担当の警察署、そして担当検察庁が離れることがあり、接見のための移動時間が増えます。また、同じ組織をめぐって、複数の県警がそれぞれ別の被害について捜査していることがあり、一つの県警の事件が終わっても、別の県警による逮捕が続く可能性があります。ご家族には、この見通しを早い段階でお伝えするようにしています。
再逮捕を見越した供述方針の立て方
再逮捕が想定される事件では、最初の事件についての供述が、その後の事件の枠組みを決めてしまいます。たとえば、最初の受渡しについて「知り合いに頼まれた」と述べれば、次の事件でも同じ知り合いとの関係が前提として扱われます。逆に、最初の取調べで組織の内部事情まで詳細に述べれば、その内容が別の事件の端緒として使われることもあります。
したがって、方針は事件ごとにばらばらに立てるのではなく、想定される全体像に対して一つ立てる必要があります。黙秘するのか、事実関係だけを述べるのか、依頼の経緯まで述べるのか。この選択は、量刑上の反省の評価にも関わるため、弁護人と本人が中国語で正確に共有したうえで決めるべきものです。
接見の頻度をどう設計するか
接見交通権は刑事訴訟法39条1項に定められており、接見等禁止が付されても弁護人との接見は制限されません。再逮捕が想定される事件では、勾留期間の満了が近づく数日間に、取調べの内容が大きく変わることがあります。この時期は、頻度を上げて接見し、その日に何を聞かれ、何と答えたかを記録しておくことが重要です。通訳人を同行する場合は日程の調整が必要になるため、逮捕の連絡を受けた時点で体制を決めておくほうが確実です。
身柄が長引くことの、生活と在留への影響
再逮捕が重なれば、拘束は数か月に及ぶことがあります。勤務先を離職すれば、就労資格の方は在留資格に応じた活動を行っていない状態が生じ得ます。入管法(出入国管理及び難民認定法)22条の4は、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていないことを取消事由の一つとして定めています。留学の在留資格の方は、出席日数の不足が同じ問題を引き起こします。刑事の見通しと並行して、在留の見通しも立てておく必要があります。
ご家族が今日できること
留置されている警察署と、担当している捜査機関がどこかを確認してください。差し入れの可否や時間帯は施設ごとに違います。また、家賃、携帯電話、在留カードの有効期限といった、放置すると本人が戻ったときに困る事柄を一覧にしておいてください。連絡が取れない期間が長くなるほど、この準備の価値が上がります。
中文版:被告知“只是运送现金”而收下的50万日元,导致再次被捕
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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