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被害金を一円も受け取っていない詐欺未遂で、量刑はどこまで下がるのか

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被害金を一円も受け取っていない詐欺未遂で、量刑はどこまで下がるのか

被害金を一円も受け取っていない詐欺未遂で、量刑はどこまで下がるのか

2026/08/31

受け子として現行犯逮捕された事件では、現金が被害者の手元に戻り、実際の損害が発生していないことが少なくありません。ご家族からは、「お金は一円も動いていないのだから、軽く済むのではないか」というご質問をよくいただきます。結論から申し上げると、実害が生じなかったことは有利な事情として評価されますが、それだけで軽い処分になるわけではありません。この記事では、未遂がどのように量刑に反映されるのか、予定されていた被害額がなぜ重く働くのか、被害者が受け取りを拒む場面で贖罪寄付と謝罪文をどう設計するのかを、具体的に説明します。

未遂は「実害がない」ではなく「実害が生じなかった」と読む

日本の量刑は、行為の危険性と結果の重大性の両方を見ます。だまされたふり作戦で捕まった事件では、被害者が現実に財産を失っていませんから、結果の面では最も軽い部類に入ります。しかし、行為の面では、高齢者を狙って自宅まで受け取りに行くという計画の危険性がそのまま残っています。裁判所は、結果が生じなかったのは被害者と警察が気付いたからであって、被疑者側が思いとどまったからではない、という見方をします。自ら犯行を中止した場合の中止未遂と、外部の事情で結果が生じなかった障害未遂とでは、評価がまったく異なります。ここを取り違えて「未遂だから執行猶予は当然」と考えると、見通しを誤ります。

予定されていた被害額はなぜ重く働くのか

長野放送は、2026年6月9日、中国籍の38歳の女性が、70代女性宅の玄関先で現行犯逮捕され、被害予定額は440万円とされたと報じました。詐欺未遂の疑いで逮捕されたと報じられているものであり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。この440万円という数字は、実際には移動していないお金ですが、量刑上は無視されません。計画されていた侵害の大きさは行為の危険性を示すものだからです。加えて、高齢の被害者を対象としていること、組織的な役割分担の中で自宅まで赴いていることも、いずれも重い方向に働きます。弁護活動は、この重い方向の事情を打ち消すのではなく、それを前提としたうえで、本人の関与の程度と、事後にできることを積み上げていく作業になります。

被害弁償ができないときに贖罪寄付をどう設計するか

未遂事件では、被害者に金銭的損害がないため、そもそも弁償すべき金額が存在しません。被害者が示談にも応じず、謝罪の受領も拒むことは珍しくありません。そこで用いられるのが贖罪寄付です。設計にあたっては、次の点を押さえてください。

  • 宛先。弁護士会が設けている贖罪寄付の窓口や、犯罪被害者支援を目的とする団体など、事件と関係のない公益的な受け皿を選ぶ。
  • 金額の説明。本人と家族の資力に見合った額とし、なぜその額なのかを説明できるようにする。無理な借入れによる高額寄付は、かえって不自然に映ります。
  • 資金の出所。中国国内のご家族から送金する場合は、適法な送金経路を用い、資金の出所を書面で説明できるようにしておく。
  • 時期。処分が決まる前に完了していることが重要です。起訴後にようやく動き出したのでは、評価が下がります。

贖罪寄付は、被害弁償の代わりに刑を買うものではありません。反省が言葉だけで終わっていないことを示す一つの資料にすぎない、という位置付けを間違えないことが大切です。

謝罪文と反省文をどう作るか

母語で書いた文章をそのまま提出しても、裁判所には伝わりません。弁護人を通じて中国語で書き、訳文を添えて提出するのが実務です。内容として避けたいのは、「知らなかった」「だまされた」だけで埋まった文章です。裁判所が読みたいのは、どの時点でおかしいと気付き、なぜそこで断らなかったのか、被害者がその後どのような不安を抱えたと想像しているか、生活のどこを変えれば同じことをしないで済むのか、という具体的な記述です。加えて、家族が身元引受人として何を監督するのかを、家族自身の言葉で書いた上申書を添えると、更生環境の説明として機能します。

量刑の結果がそのまま在留の分かれ目になる

入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、全部執行猶予が付いた場合はただし書により除かれます。つまり、実刑となるか執行猶予となるかが、そのまま日本に残れるかどうかを分けます。法務省の令和7年版犯罪白書によれば、令和6年の被告人通訳事件における全部執行猶予率は全罪名で85・3%、入管法違反を除くと74・8%です。数字そのものが個別の見通しを保証するものではありませんが、公判に進んだ場合でも執行猶予の余地が現に存在することは、量刑弁護に力を注ぐ理由になります。なお、執行猶予中に再び罪を犯した場合の必要的取消し(刑法26条)にも注意が必要です。

ご家族が今日から準備できること

まず、寄付や弁償に充てられる資金の額を、正直に整理してください。用意できない額を前提に計画を立てると、期限までに間に合いません。次に、本人の在留カードと旅券の所在、在留期限、勤務先または在学先の状況を確認してください。身柄拘束が長引くと、在留期間の更新期限を逃したり、在学が続かなくなったりします。そして、本人の生活状況を説明できる資料、たとえば給与明細、家賃の支払い記録、通学の証明、家族の在留状況を集めておいてください。これらは、更生環境の具体的な裏付けとして、量刑段階でも入管の手続でも繰り返し使われます。

中文版:一分钱都没拿到的诈骗未遂,量刑到底能减到什么程度

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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