退去強制手続はどのように進むのか|収容から在留特別許可までの流れを段階で理解する
2026/06/28
外国人の刑事事件にかかわるとき、最も恐れられているのが退去強制、いわゆる強制送還です。しかし、退去強制は一つの処分で突然決まるものではなく、いくつかの段階を経て進みます。どの段階で、どのような主張ができるのかを知っておくことは、最後まで在留を諦めないための備えになります。本記事は、退去強制手続の流れを段階ごとに整理する、制度理解のための解説です。
第一段階|収容と違反調査
刑事手続が終わったあと、退去強制事由に該当する疑いがあると、入国警備官による違反調査が行われ、収容令書に基づいて収容されることがあります。ここで、そもそも退去強制事由に該当するのか、たとえば入管法24条のどの号に当たるのかが問題となります。号ごとに要件は異なり、4号リは無期または1年を超える拘禁刑、4号チは薬物関係の有罪というように構造が違いますので、本当に該当するのかを丁寧に検討する必要があります。
第二段階|入国審査官による違反審査と認定
収容の後、入国審査官が、退去強制事由に該当するかどうかを審査します。これを違反審査といいます。ここで該当すると認定されても、手続はそこで終わりません。本人がこの認定に納得できない場合には、次の口頭審理を請求することができます。この段階から、本人の言い分を記録に残し、事実関係や法的な評価について主張していくことが重要になります。
第三段階|特別審理官による口頭審理
口頭審理は、特別審理官の面前で、認定が正しかったかどうかをあらためて審理する手続です。ここでは、退去強制事由への該当性を争うこともできますし、仮に該当するとしても、在留を特別に認めるべき事情があることを主張することもできます。事実認定のための資料や、本人の置かれた事情を示す証拠を整えて臨むことが、その後の判断を左右します。
第四段階|法務大臣への異議の申出と在留特別許可
口頭審理の結果にも納得できない場合は、法務大臣に対して異議を申し出ることができます。そして、この異議の判断の中で検討されるのが在留特別許可です。令和5年改正入管法により、在留特別許可の申請手続が法律上整理され、考慮される事情が入管法50条に明示されました。在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間、人道的な配慮を要する事情などが総合的に判断されます。出入国在留管理庁が公表してきた過去の許可事例は、行政自身が許可相当と判断した先例であり、同種の事情を有する事案について平等な取扱いを求める根拠にもなり得ます。
第五段階|行政訴訟という最後の砦
在留特別許可が認められず退去強制令書が発付された場合でも、その処分の取消しを求めて裁判所に訴えることができます。行政の判断が常に正しいとは限らず、裁判所による審査の対象となります。松村大介弁護士は、従来の実務の枠組みそのものを問い直す視点を大切にしており、たとえば退去強制事由の判断にも故意・過失の要件が及ぶべきではないかという論点を、現在係争中の事案で正面から問うています。これは結論を予断できる段階にはありませんが、各段階での主張の積み重ねが、最後の司法判断の土台になります。
当事務所のご案内
退去強制手続は段階が多く、それぞれの段階で適切な主張を積み重ねることが、最後まで在留の可能性を残すうえで重要です。舟渡国際法律事務所では、刑事手続の段階から、その先の退去強制手続までを一体で見据えた弁護を行ってまいりました。たとえば、不法滞在で起訴され強制送還の危機にあった方について、過去の入管庁公表事例を分析し在留特別許可を一度の申請で獲得した事例があります。松村大介弁護士が全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳とともに対応いたします。刑事手続終了後の在留資格の手続については、提携の行政書士と連携してご支援いたします。
おわりに
退去強制は、一つの処分で突然すべてが決まるものではなく、収容から行政訴訟まで、複数の段階を経て進みます。どの段階にも、主張し、争う余地が残されています。だからこそ、早い段階から見通しを立て、各段階での主張を積み重ねていくことが大切です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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