舟渡国際法律事務所

口座の売買・地下銀行・資金洗浄で逮捕されたら|中国籍の方の刑事事件と在留

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口座の売買・地下銀行・資金洗浄で逮捕されたら|中国籍の方の刑事事件と在留

口座の売買・地下銀行・資金洗浄で逮捕されたら|中国籍の方の刑事事件と在留

2026/09/05

使っていない銀行口座を買い取りたいと持ちかけられた。友人の依頼で日本円を渡し、中国側で人民元を受け取る形にした。指示されたとおりに現金を口座間で動かしただけだ。こうした行為は、日本では犯罪収益移転防止法、銀行法、組織的犯罪処罰法に触れます。中国語圏で言う跑分、地下钱庄、对敲は、いずれも日本法では明確な処罰対象です。しかも問題は刑罰にとどまらず、どの罪名で処理されるかによって在留資格の帰趨まで変わります。

本記事の要点

  • 預貯金通帳やキャッシュカードを他人に譲り渡す行為そのものが、犯罪収益移転防止法28条により処罰されます。相手が不正に利用する目的であることを知っていた場合や、業として反復した場合はより重く処罰されます。
  • 日中間で現金を相互に受け渡して資金を移転する仕組み、いわゆる地下銀行・对敲は、銀行法にいう為替取引を無免許で業として行うものとして処罰されます。
  • 犯罪収益の移転を隠す行為は組織的犯罪処罰法10条の犯罪収益等隠匿罪、事情を知って受け取る行為は同法11条の犯罪収益等収受罪に当たります。
  • これらはいずれも特別法犯であり、入管法24条4号の2の列挙対象ではありません。他方、詐欺の共犯として立件されれば同号の列挙対象となり、別表第一の方は執行猶予でも退去強制事由に該当します。罪名の選択が在留を左右します。
  • 争点は資金の流れそのものではなく、その資金が犯罪によるものだと知っていたかという主観です。ここを争って不起訴となった実例が報じられています。

口座を売っただけでも犯罪になりますか

犯罪になります。犯罪収益移転防止法28条は、預貯金通帳、キャッシュカード、インターネットバンキングのIDやパスワードといった払戻しの手段を他人に譲り渡し、又は譲り受ける行為を処罰しています。相手方が不正に利用する目的であることを知って譲り渡した場合や、業として反復した場合には、より重い法定刑が定められています。

条文は、その口座が実際に使われたかどうかを問わず、譲渡という行為そのものを処罰します。警察庁犯罪収益移転防止対策室の令和7年版年次報告書によれば、同法違反の検挙件数は4,699件で、うち譲渡等が4,489件を占めます。さらに、口座が特殊詐欺の被害金の受け皿として使われれば、渡した人が詐欺の幇助犯として立件されることがあります。この場合の罪名は刑法の詐欺罪となり、後述のとおり在留への影響がまったく異なります。

地下銀行や对敲は日本のどの法律に触れますか

銀行法です。同法2条2項は為替取引を銀行業の要素として定めており、免許を受けずにこれを業として行えば処罰されます。最高裁判所平成13年3月12日決定は、為替取引について、顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受け、又はこれを引き受けて実行することをいうと判示しました。

この定義は、日本側で日本円を受け取り中国側で人民元を渡す、いわゆる对敲の仕組みをそのまま捉えます。現金が国境を越えていないから送金ではない、という理解は日本法の下では通用しません。手数料を取らず知人の依頼に応じただけであっても、反復継続していれば業として行ったと評価される可能性があります。

報道によれば、令和8年6月に産経新聞ほかが伝えた事案では、中国籍の男性らが留学生から人民元を受け取り日本円約120万円を交付したとして、銀行法違反の疑いで逮捕されたと報じられました。逮捕の報道であり、有罪が確定したものではありません。金額は大きくありませんが、業としての反復継続性が問題とされたことがうかがえます。なお同種の摘発は中国籍の方に限られず、同月には他国籍の夫婦も同様の疑いで逮捕されたと報じられています。

資金洗浄はどの罪に問われますか

組織的犯罪処罰法です。犯罪収益の取得や処分に関する事実を仮装し、又はこれを隠匿する行為は同法10条の犯罪収益等隠匿罪、事情を知りながらこれを受け取る行為は同法11条の犯罪収益等収受罪に当たり、隠匿罪のほうが重く定められています。

典型的な形は、被害金を受け入れた口座から次々と別の口座へ移し替える、暗号資産に交換する、名義を借りて不動産の代金に充てる、といったものです。警察庁の年次報告書には、投資詐欺の被害金を架空法人名義の口座に振り込ませ、一般の財産と混ぜたうえで二次・三次の口座へ分散移転したとして検挙された事例が挙げられています。同報告書によれば、来日外国人が関与した同法上のマネーロンダリング事犯は304件(隠匿237件、収受67件)で全体の17.1%、国籍別では中国人の関与が134件で最も多く、ベトナム人111件がこれに次ぎます。

知らなかったという主張は通りますか

争点になります。実際に不起訴となった例も報じられています。報道によれば、令和8年1月に配信された記事では、投資詐欺の被害金約8,000万円を複数の口座に移転したとして組織的犯罪処罰法違反の疑いで5人が逮捕された事案につき、うち3人が嫌疑不十分で不起訴になったと報じられました。資金移転の外形が立証されても、犯罪被害金であるという認識と共謀が立たなければ起訴には至らないということです。

特に収受罪は、条文が情を知ってという主観的要件を置いており、隠匿罪よりも故意のハードルが高くなります。現金の運搬を頼まれたという認識にとどまる場合には争う余地があります。他方、法律を知らなかったという弁解は別問題で、刑法38条3項により故意を否定する理由になりません。争うべきは、業として為替取引を行うという認識の有無であり、資金の性質についての認識の有無です。

したがって初動で確認すべき事実は決まっています。依頼者との連絡はどのアプリで、どのような文言で行われたか。報酬は相場に比べて不自然に高くなかったか。口座の名義について秘匿を求められていなかったか。これらは捜査機関が未必の故意を推認する材料であると同時に、こちらから故意の不存在を示す材料でもあります。

有罪になると在留資格はどうなりますか

どの罪名で処理されるかによって結論が大きく変わります。犯罪収益移転防止法違反、銀行法違反、組織的犯罪処罰法違反はいずれも特別法犯であり、入管法24条4号の2が列挙する刑法の章には含まれません。別表第一の在留資格の方でも、これらの罪で執行猶予付きの拘禁刑を受けただけでは同号に該当しません。他方、同じ資金の流れが詐欺の共犯として構成されれば、詐欺罪は刑法第2編第37章であり4号の2の列挙対象ですから、執行猶予でも退去強制事由に該当します。

罪名と刑別表第一(留学・技術人文知識国際業務・家族滞在等)別表第二(永住者・日本人の配偶者等・定住者)
犯罪収益移転防止法違反で罰金退去強制事由に非該当。更新・変更の素行要件で不利非該当
銀行法違反・組織的犯罪処罰法違反で拘禁刑・執行猶予付き4号の2の列挙外で非該当。更新は極めて困難非該当
詐欺罪で拘禁刑・執行猶予付き4号の2に該当非該当
1年を超える実刑(罪名を問わない)4号リに該当4号リに該当

この違いは弁護の設計に直結します。資金の移転に関与した事実を争えない場合でも、詐欺の共謀まで認定されるかどうかで在留の結論が変わるため、罪名の枠組みを争う実益は大きいのです。出入国在留管理庁の統計によれば、令和7年に4号の2により退去強制令書が発付された人員は49人で、うち中国籍が15人でした。外国人の刑事事件と在留のページも併せてご覧ください。

中国の幇助情報ネットワーク犯罪活動罪(帮信罪)と何が違いますか

日本には、これに直接対応する罪名がありません。中国の刑法にいう幇助情報ネットワーク犯罪活動罪が口座の提供や決済の手助けを包括的に捉えるのに対し、日本では同じ行為が、犯罪収益移転防止法違反、銀行法違反、組織的犯罪処罰法違反、詐欺罪の幇助・共同正犯といった複数の罪に分かれて評価されます。中国での量刑感覚をそのまま持ち込むと見通しを誤るのはこのためです。なお中国法上の評価について当事務所は意見を述べる立場になく、中国の弁護士にご確認いただく必要があります。

当事務所はどのように対応しますか

当事務所は執行猶予判決ではなく、起訴前の不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えています。この類型では、資金の流れという客観面と、被害金であるという認識という主観面を切り分け、主観面を正面から争うことが弁護の中心になります。刑事弁護と入管手続をひとつの事件として扱い、逮捕直後の接見から在留手続まで松村弁護士本人が一貫して対応します。中国語通訳が接見に同行し、微信(WeChat ID:matsumura1119)で中国本国のご家族とも直接やり取りできます。ご相談の窓口は中国人の刑事事件・在留のご相談、関連する解説は詐欺・特殊詐欺のページにもまとめています。本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。

よくある質問

口座を貸しただけで、お金は一円も受け取っていません

報酬の有無は犯罪の成否を左右しません。犯罪収益移転防止法28条は譲渡という行為自体を処罰の対象としており、報酬がないことは量刑の事情にとどまります。もっとも報酬の有無や金額は、相手方の目的を知っていたかという主観面の判断材料にはなります。

友人に頼まれて両替しただけでも銀行法違反になりますか

日本側と中国側で相互に受け渡す形をとっていれば、為替取引に当たり得ます。一回限りであれば業として行ったとは評価されにくいものの、回数、期間、手数料の有無、依頼者の範囲によって判断が分かれます。実際に立件された事案では、取引額が100万円台であっても摘発されています。

執行猶予がついた場合、在留資格は残りますか

罪名によります。犯罪収益移転防止法違反、銀行法違反、組織的犯罪処罰法違反は入管法24条4号の2の列挙外であるため、執行猶予であれば同号に該当しません。しかし詐欺罪で処理された場合、別表第一の方は執行猶予でも該当します。いずれの場合も、在留期間の更新の審査では素行が問題となります。退去強制・在留特別許可・監理措置のページもご覧ください。

取調べでは黙秘したほうがよいのでしょうか

一律には申し上げられません。この類型では通信履歴という客観証拠が豊富に残るため、供述との整合性が後の判断を左右します。事実関係を整理しないまま説明を続けると、意図しない形で共謀を認めたと受け取られる調書ができてしまいます。弁護人と方針を決めてから話す旨を伝えるのが安全です。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

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