判決に納得できないとき 控訴の期間と、入管手続との時間のずれ
2026/09/01
判決の内容に納得できないとき、次の手続に進む時間はごく限られています。しかも、外国人の刑事事件では、上訴するかどうかの判断が、刑の重さの問題にとどまらず、その後の在留資格の帰趨に直結します。刑が確定するかどうかで入管手続の動き方が変わり、刑期が1年を超えるかどうかで退去強制事由に当たるかどうかが変わるためです。この記事では、控訴の期間と方式、控訴審がどのような審理をする場なのか、実刑判決が保釈に与える効果、そして刑事手続と入管手続の時間のずれをどう読むかを説明します。
控訴の申立期間は、判決の翌日から14日しかありません
控訴の申立ては、判決が言い渡された日の翌日から14日以内に、判決をした裁判所へ申立書を提出して行います。この期間は延ばすことができません。判決の内容を検討してから決めたい、中国の家族と相談してから決めたいという気持ちは自然ですが、期間の途中で迷っているうちに徒過すると、判決はそのまま確定します。実務では、迷いがある場合にはひとまず控訴を申し立て、後日、控訴趣意書を提出する段階で改めて判断するという運び方をすることがあります。控訴趣意書の提出期限は控訴審の裁判所が別に指定します。上告の申立期間も、控訴審判決の翌日から14日です。
控訴審は、第一審のやり直しではありません
控訴審は、第一審の判決に誤りがあるかどうかを、第一審の記録を基に審査する場です。もう一度最初から証人を呼び直して事実を調べる場ではありません。主張できるのは、事実の認定に誤りがあること、法令の適用に誤りがあること、刑が重すぎること、手続に違法があること、といった点です。第一審で提出しなかった新しい資料は、なぜ第一審で出せなかったのかという事情が説明できなければ取り調べてもらえないことがあります。したがって、控訴で量刑を軽くすることを目指すのであれば、第一審の判決後に新たに整えた被害弁償や示談、就労先の受入れの書面などを、その必要性とともに丁寧に示す作業が要になります。
実刑判決が出た瞬間に、保釈は効力を失います
保釈されて第一審の公判に臨んでいた方に実刑の判決が言い渡されると、保釈の効力はその時点で失われ、身柄を拘束されます。控訴した後に改めて保釈を請求することはできますが、第一審で実刑の判断が示された後は、第一審の段階よりも判断が厳しくなる傾向があります。控訴審での保釈を目指すのであれば、住居、身元引受人、旅券の管理、生活の見通しについて、第一審のときよりも具体的で検証可能な資料を用意する必要があります。
刑が確定するまでは、退去強制手続は動きにくい
入管法24条4号リの退去強制事由は「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」と定められており、この判断は刑が確定して初めて可能になります。したがって、控訴して確定していない間は、この事由を理由とする手続は原則として進みにくいと言えます。ただし、注意すべき点が二つあります。第1に、刑事手続が続いている間も在留期間は進行します。期限が来て更新が認められなければ、刑の話とは無関係に不法残留(24条4号ロ)となり、そちらを理由に手続が進みます。令和7年の退去強制令書発付総数7,722人のうち5,778人が不法残留であり(出入国在留管理庁「出入国管理統計」第57表)、実務上の主戦場はここです。第2に、薬物事犯は4号チに当たり、有罪判決であれば刑の軽重を問いません。時間を稼いでも罪名が変わるわけではありません。
1年を超えるかどうかが、入管では決定的な分かれ目になります
控訴で刑が1年以下に変われば、4号リには当たらなくなります(そもそも全部執行猶予は同号の但書で除かれています)。逆に言えば、刑期が1年を数か月超えているだけの事案では、控訴の実益が量刑面と在留面の双方にあり得ます。令和7年に4号リ単独で退去強制令書が発付されたのは全国で41人、うち中国籍は11人でした。数としては多くありませんが、中国籍については不法残留との並立を含めると47人となり、中国籍の発付総数686人の6.9%を占め、ベトナム籍の2.3%の約3倍にあたります。控訴するかどうかは、刑の重さ、身柄拘束の総期間、そして在留資格への影響という三つの軸を同時に置いて決めるべき判断です。ご家族は、判決の日から数日のうちに弁護人と面談の機会をつくり、この三点について説明を受けてください。
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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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