重大事件は裁判員裁判になる 手続と期間はどこがどう変わるのか
2026/09/01
ご家族が重大事件で逮捕されたとき、まず知っておいていただきたいのは、その事件が裁判員裁判の対象になる可能性があるということです。裁判員裁判は、市民が裁判官とともに事実認定と量刑を行う手続で、通常の裁判とは進み方も期間もまったく異なります。とりわけ、判決までに一年前後を要することがあり、その間の身柄拘束をどう考えるかが、ご家族にとって現実の問題になります。この記事では、対象となる事件、手続の流れ、通訳の問題、そしてご家族の備えを説明します。
どの事件が裁判員裁判になるのか
裁判員裁判の対象となるのは、死刑または無期の拘禁刑に当たる罪の事件と、法定合議事件のうち故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた罪の事件です。具体的には、殺人、強盗致死傷、傷害致死、現住建造物等放火、危険運転致死などが含まれます。強盗致傷のように、財産犯から始まった事件でも結果が重ければ対象になります。逆に、被害額の大きい詐欺や、一般的な傷害は対象外です。まず、ご本人の事件がどちらに属するのかを確認することが、見通しを立てる出発点になります。
公判前整理手続に数か月かかる
裁判員裁判の事件は、例外なく公判前整理手続に付されます。これは、公判が始まる前に、裁判所、検察官、弁護人が争点と証拠を整理し、審理計画を立てる手続です。市民である裁判員に短期間で集中的に審理してもらうため、事前の準備を徹底するという趣旨です。この手続の中で、検察官が保管する証拠の開示が行われ、弁護側は証拠の内容を検討したうえで主張を明示します。争点が多い事件では、この段階だけで半年から一年近くかかることがあります。ご家族から見ると「何も動いていない」ように見える期間ですが、実際にはここで裁判の骨格が決まっています。
法廷の進み方と、通訳の負担
公判が始まると、裁判員の負担を考慮して、連日的に開廷されます。数か月に一回という通常の裁判とは異なり、数日から数週間で集中的に審理し、結審後まもなく判決が言い渡されます。外国籍の被告人の場合、この全過程に通訳が必要になります。法務省『令和7年版犯罪白書』(対象年次は令和6年)によれば、通訳を要する被告人の通常第一審の終局人員は4,649人で、通訳言語は41言語に及びました。最も多いのはベトナム語の1,794人(38.6%)で、中国語は726人(15.6%)で第2位です。中国語が最も多いという説明は誤りです。裁判員裁判では、供述の微妙な言い回しが評価を左右するため、通訳の正確性そのものが弁護の対象になります。
統計をどう読むか
同じ白書によれば、令和6年の殺人の起訴率は全体で33.11%、来日外国人では65.85%でした。この数字だけを見ると外国籍の被疑者が起訴されやすいように見えますが、来日外国人の殺人の終局処理人員は42人にすぎず、母数が小さいため年による変動が大きい点に注意が必要です。また、警察庁『令和6年における組織犯罪の情勢』によれば、中国籍の刑法犯検挙件数1,779件のうち凶悪犯は44件(2.5%)で、うち殺人12件、強盗17件でした。全体の中では小さな割合です。統計は、個別の事件の見通しを示すものではありません。事件ごとの事実関係が結論を決めます。
弁護人が争う点
重大事件で実際に争われるのは、多くの場合、事実の全部ではなく特定の一点です。人が亡くなった事件であれば、殺意があったのか、傷害の故意にとどまるのか。複数人が関与していれば、共謀がどこまで及んでいたのか。相手からの攻撃があったのであれば、正当防衛または過剰防衛が成立するのか。精神的な疾患があれば、責任能力の程度はどうか。これらは、いずれも証拠に基づいて争われる論点であり、本人の説明だけで決まるものではありません。公判前整理手続で主張を明示した後は、原則として新たな主張や証拠の追加が制限されますから、この段階での方針決定が決定的な意味を持ちます。
ご家族の備えと、在留への影響
長期化を前提とした準備が必要です。起訴前の保釈制度はなく、保釈請求ができるのは起訴後です。裁判員裁判の対象事件では、証拠隠滅のおそれを理由に保釈が認められにくい傾向があります。ご家族には、面会と差し入れの方法の確認、通訳を介した連絡経路の確保、本国のご家族との情報共有の窓口を一本化すること、そして、勤務先や学校への説明の時期を弁護人と相談することをお願いしています。在留については、入管法24条4号リが無期又は1年を超える拘禁刑を退去強制事由とし、但書で全部執行猶予を除いています。重大事件で実刑となれば、この号に当たることが多く、服役後に退去強制手続が続くことを前提に、早い段階から在留の見通しも併せて検討しておく必要があります。
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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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