保釈中に帰国できるか。制限住居と旅券の預かり、無断出国が招く結末
2026/09/01
保釈が認められると、ご本人もご家族も、いったん息をつかれます。そこで出てくるのが「裁判までの間に一度中国へ帰れないか」というご相談です。親の病気、子の進学、会社の都合など、事情はさまざまです。しかし結論を先に申し上げると、保釈中に日本を離れて帰国することは、原則としてできません。この記事では、なぜできないのか、旅券はどう扱われるのか、無断で出国した場合に何が起きるのか、そして本当にやむを得ない事情がある場合に何ができるのかを説明します。
結論。保釈中の帰国は原則としてできません
保釈は、裁判に出頭することを前提として、判決までの間、身柄の拘束を解く制度です。裁判所は保釈を許すにあたって住居を指定し、被告人はその住居に居住しなければなりません。住居を離れる場合には裁判所の許可が必要とされ、旅行についても同様です。国外への渡航は、出頭の確保という保釈の根幹に触れますから、通常は許可されません。「一週間で戻ります」「往復の航空券があります」という説明で足りるものではありません。ここを軽く考えて出国すると、次に述べるとおり、取り返しのつかない結果になります。
制限住居と旅行の制限の実際
保釈の決定には、居住すべき住居が具体的に書かれます。転居したい場合には、事前に裁判所の許可を得る必要があります。旅行についても、一定の日数を超えて住居を離れる場合には許可が必要とされるのが通常です。実務では、仕事の都合で出張が必要な場合、あらかじめ弁護人を通じて許可を求め、行き先と日程、連絡方法を明らかにして認められることがあります。重要なのは、事後に説明するのではなく、事前に許可を得るという順序です。無断で住居を離れた事実は、それ自体が条件違反として扱われます。
旅券はどう扱われるのか
外国人の保釈では、旅券の扱いが問題になります。実務上、旅券を弁護人が預かり、保釈中は本人が所持しないという取扱いを、弁護人の側から提案することがよくあります。これは、出国の物理的な可能性を下げることで、逃亡のおそれが小さいことを裁判所に示すためです。旅券を預けることは義務ではありませんが、預けるという申出が保釈の判断において有利に働くことがあります。なお、在留カードは常時携帯が求められますので、旅券とは扱いが異なります。何をどこに預けるのかは、弁護人と具体的に決めてください。
無断で出国すると何が起きるか
結果は重いものになります。第一に、保釈が取り消されます。第二に、保証金が没取されることがあります。ご家族が用意された資金が失われるということです。第三に、身柄が再び拘束され、以後の保釈は極めて困難になります。第四に、公判に出頭しないことにより、審理が進まなくなり、量刑の判断においても不利に扱われます。第五に、刑事訴訟法255条1項により、犯人が国外にいる間は公訴時効が停止します。つまり、国外で時間が過ぎるのを待っても、事件が消えることはありません。そして第六に、在留の問題が生じます。逃亡の事実は、その後の在留資格の審査、上陸の可否の判断において、極めて不利な事情として残ります。
在留の側から見た帰結
刑事の結論が出る前に日本を離れることは、在留手続の観点からも合理的ではありません。日本で生活の基盤を築いてこられた方にとって、判決を受けて執行猶予を得たうえで在留を継続する道と、逃亡して二度と戻れなくなる道とでは、その後の人生が根本的に変わります。参考として、令和7年の退去強制令書発付の総数は7,722人で、その多くは不法残留を理由とするものであり、1年を超える実刑を理由とするものは単独では41人にとどまります(出入国管理統計第57表)。刑事事件になったからといって直ちに日本にいられなくなるわけではありません。逃げることで失うもののほうが、はるかに大きいのが実情です。
どうしても帰国が必要な事情がある場合
肉親の危篤や葬儀など、切実な事情が生じることはあります。この場合でも、まず弁護人に相談してください。弁護人は、事情を疎明する資料を添えて、裁判所に対して住居を離れることの許可を求めることができます。国外への渡航が認められることは多くありませんが、事情の重さと帰国後に戻ることを示す資料の内容次第で、判断が変わることもあります。少なくとも、無断で出国するという選択肢よりは、はるかに良い結果につながります。また、公判の日程を調整することで対応できる場合もあります。いずれにしても、独断で動かず、事前にご相談ください。
保釈中にすべきこと
保釈中の時間は、帰国のためではなく、判決に向けた準備のために使うべきです。第一に、被害弁償と示談の交渉を進めることです。第二に、就労や就学を継続し、生活が安定していることを示す資料を作ることです。第三に、身元引受人との関係を維持し、監督が実際に機能していることを示すことです。第四に、再発防止のための具体的な取組みを始めることです。第五に、判決後に続く入管の手続を見越して、在留に関する資料を整えておくことです。刑事と入管は連続していますから、保釈中にどう過ごしたかは、判決の後にも意味を持ちます。
中文版:日本保释期间可以回国吗?限制住居与护照保管,擅自出境会有什么后果
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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