保釈保証金は誰が納め、いつ返ってくるのか。没取される場面と中国からの送金
2026/09/01
保釈が認められると、保証金を納めることが条件になります。中国語圏のご家族から最も多いお尋ねは「いくらですか」「本人以外が払えますか」「有罪になったら没収されますか」の三つです。金額は事件と本人の事情によって裁判所が決めるものですから、あらかじめ断定して申し上げることはできません。しかし、性質、納付する人、返還の時期、没取される場面については、制度としてはっきり決まっています。この記事では、その仕組みと、中国から資金を送る場合の実務的な注意点を説明します。
保証金は罰金ではありません
最初に押さえるべきは、保証金の性質です。これは刑罰ではなく、被告人が裁判に出頭することを担保するために、裁判所に一時的に預けるお金です。したがって、有罪になったから没収される、無罪だから返ってくる、というものではありません。決められた条件を守り、裁判に出頭し続ければ、実刑判決を受けた場合であっても、保証金は原則として返還されます。逆に、条件を破って逃げれば、無罪を主張していようと没取されます。返ってくるかどうかを決めるのは、有罪か無罪かではなく、約束を守ったかどうかです。ここを取り違えているご家族が非常に多く、金額の大きさに驚いて準備を諦めてしまう例がありますので、最初に強調しておきます。
誰が納めるのか
納付する人は、被告人本人に限られません。家族や親族、勤務先の関係者、知人が納めることもできます。実務上は、日本にいるご家族や、雇用主が用意される例が多くあります。ここで重要なのは、資金の出所を説明できるようにしておくことです。特に、財産犯や詐欺、資金の移動が問題となっている事件では、保証金の原資が事件と無関係であることを示せなければ、かえって不利な事情として扱われかねません。預金通帳の記録、給与の受取記録、送金の経緯を示す資料を、あらかじめ整理しておいてください。また、現金を納める方法のほか、裁判所が認めた場合には保証書の差出しによる方法もあります。手持ちの資金が足りない場合に、保証金を立て替える民間の仕組みを利用する方法もありますので、弁護人に確認してください。
金額はどのように決まるのか
金額は、犯罪の性質と情状、証拠の重さ、被告人の資力その他の事情を考慮して、出頭を確保するに足りる相当な金額として裁判所が決めます。したがって、同じ罪名でも事件ごとに違います。インターネット上には相場を示す記載が見られますが、当事務所として具体的な金額を示すことはいたしません。重要なのは、資力を偽らないことです。実際の資力を大きく超える金額を約束しても納付できず、保釈の機会を失います。逆に、資力を過少に説明すれば、出頭の担保として不十分と判断されます。正確に申告し、必要であれば家族が援助する構造を示すことが、結果として近道になります。
いつ返ってくるのか
保証金は、裁判が終わり、判決が確定した段階で、原則として返還されます。執行猶予付きの判決であればそのまま返還されますし、実刑判決であっても、刑の執行のために出頭すべき日にきちんと出頭していれば返還されます。返還までには手続と一定の日数がかかり、返還先の口座を指定する必要があります。ここで外国人の事案に特有の問題が生じます。判決の後、そのまま入管の手続に移り、日本を出ることになる場合、本人名義の日本の口座をいつ閉じるかという問題です。口座を先に解約してしまうと、返還先がなくなります。誰の口座で受け取るのか、どのように国外へ送るのかを、判決の前に決めておいてください。
没取されるのはどのような場合か
没取は、被告人が逃亡したとき、逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき、正当な理由がないのに裁判に出頭しないとき、指定された住居に居住しないとき、事件関係者と接触しないという条件に違反したとき、その他裁判所の定めた条件に違反したときに問題となります。全部が没取される場合もあれば、一部にとどまる場合もあります。外国人の事案で最も深刻なのは、無断で日本を出国する場合です。この場合、保証金の没取だけでなく、保釈の取消しによって再び身柄を拘束され、裁判の見通しも大きく悪化します。刑事訴訟法255条1項により、犯人が国外にいる間は公訴時効が停止しますので、出国して時間が経てば終わるということもありません。
中国から送金する場合の実務
ご家族が中国におられる場合、資金の準備には時間がかかります。送金の限度、着金までの日数、受取口座の準備という三つの壁があるためです。保釈は、請求してから決定までが早い場合もありますから、決定が出てから送金を始めると、実際に納付できるまでに本人が拘束されたままの日が続きます。したがって、保釈を請求する方針が固まった段階で、資金の準備を並行して始めることが実務上は重要です。日本にいる親族の口座を経由する場合には、その方に事情を説明し、記録を残しておいてください。第三者を介して現金を持ち込むような方法は、後に資金の出所を説明できなくなるため、避けてください。
ご家族が今日できること
第一に、弁護人に対して、保釈を請求する見通しと時期を確認することです。第二に、用意できる資金の額と、その出所を説明できる資料を整理することです。第三に、返還を受ける口座をどうするかを、日本を出る可能性まで含めて考えておくことです。第四に、保証書や立替えの仕組みが利用できるかを確認することです。第五に、保釈が認められた後に守るべき条件を、本人と家族の双方が正確に理解しておくことです。条件を一つ破れば、納めた保証金を失うだけでなく、身柄が再び拘束されます。保釈は、出口ではなく、裁判に向き合うための時間を確保する手段です。
中文版:日本的保释保证金由谁交?什么时候退还,什么情况会被没收
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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