日本にいる家族と連絡が取れません。逮捕されたかどうかを確かめる方法
2026/09/01
「日本にいる息子と一週間連絡が取れません。逮捕されたのでしょうか」。中国から国際電話でこうしたご相談をいただくことがあります。日本では、逮捕された事実が自動的にご家族へ通知される仕組みにはなっていません。だから、連絡が途絶えた理由を確かめるところから始めなければなりません。この記事では、警察や検察庁への問い合わせで何がわかり何がわからないのか、領事館に何を頼めるのか、当番弁護士という制度をどう使うのか、そして逮捕以外の可能性をどう潰していくのかを順に説明します。
結論:問い合わせても、教えてもらえるとは限りません
先に率直に申し上げます。ご家族が警察署に電話をして「うちの子はそちらにいますか」と尋ねても、答えが得られないことがあります。捜査に関する事項であること、本人の意思の確認が必要であることが理由です。そのうえ、日本には警察署が数多くあり、どの署が扱っているのかが分からなければ、そもそも問い合わせ先を絞れません。したがって、闇雲に電話をかけるより、本人の生活圏から当たりを付け、弁護士を通じて確認する方法のほうが結果につながりやすいのが実情です。
まず、本人の生活圏から手がかりを集めてください
確認していただきたいのは次の点です。最後に連絡が取れた日時と、そのときの内容。住んでいる住所と、その地域を管轄する警察署。勤務先やアルバイト先の名称と連絡先。同居している人、同じ寮に住む人、同郷の知人。携帯電話が通じるのか、着信はするが出ないのか、そもそも電源が切れているのか。SNSの最終ログイン。家賃や公共料金の引き落としが続いているか。もし逮捕されていれば、携帯電話は押収されて電源が切れた状態になっているのが通常です。反対に、電話が鳴るのに出ないだけであれば、別の事情も考えられます。この整理は、後で弁護士に依頼するときにもそのまま役立ちます。
警察・検察庁への問い合わせでできること、できないこと
ご家族が地域の警察署に照会しても、身柄の有無を明かしてもらえないことがあります。一方、弁護士から照会した場合には、接見のために必要な範囲で確認が取れることがあります。また、逮捕された事件は、原則として48時間以内に検察官へ送致され、その後24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留の請求がされます。勾留が決まれば、事件は裁判所にも記録が残ります。つまり、日にちが経っているほど、確認できる場所が増えるという面があります。ただし、いずれの場合も、事件の内容そのものをご家族に説明してもらえるわけではありません。事件の中身を知る最短の経路は、弁護人が接見して本人から直接聞くことです。
領事館に頼めることと、その限界
領事関係に関するウィーン条約36条1項により、外国人が身柄を拘束された場合、本人が要請すれば本国の領事機関へ通報が行われます。中国籍の方であれば中国大使館・総領事館です。ここで押さえておいていただきたいのは、通報は本人の要請を前提とする点です。本人が通報を望まなければ行われませんし、通報されたとしても、領事館がご家族に個別に連絡してくれるとは限りません。領事館は在外自国民の保護のために面会などの支援を行いますが、弁護活動を行う機関ではありません。したがって、領事館への相談は選択肢の一つとして有効ですが、それだけで事態が動くと期待しないほうがよいでしょう。
当番弁護士という制度があります
日本には、逮捕された人のもとへ弁護士が一度、無料で駆けつける制度があります。各地の弁護士会が運営しており、一般に当番弁護士と呼ばれています。中国語の資料では値班律师などと訳されることがありますが、日本で通じる呼び方は「当番弁護士」です。本人が警察官や裁判官に「当番弁護士を呼んでほしい」と伝えれば手配されます。ご家族から弁護士会に申し込む方法もありますが、取扱いは弁護士会によって異なりますので、地域の弁護士会に確認してください。なお、当番弁護士は原則として一度きりの派遣です。その後も弁護活動を続けてもらうには、勾留後に国選弁護人を請求するか、私選で弁護人を選任することになります。所在の確認と初回の接見を急ぐのであれば、ご家族から弁護士に依頼して接見に行ってもらう方法が最も速いことが多いといえます。
逮捕以外の可能性も潰してください
連絡が取れない理由は、刑事事件だけとは限りません。在留期間が切れている方であれば、入管の施設に収容されている可能性があります。この場合、警察署に照会しても見つかりません。ほかに、事故や急病で入院している、勤務先を移って連絡先が変わった、借金の問題で連絡を絶っているといった事情もあります。可能性を一つずつ潰していく作業が必要で、この順序を間違えると時間を浪費します。在留資格の期限が近かった、入管から通知が来ていた、といった事情がある場合は、刑事と入管の両面から確認してください。
所在が分かったら、その日のうちにすること
第一に、施設の名称と所在地、担当部署を控えてください。差入れも接見も、ここが起点になります。第二に、弁護人の選任を急いでください。逮捕から起訴・不起訴が決まるまでは、延長を含めても最長20日ほどしかありません。法務省『令和7年版犯罪白書』によれば、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴猶予率は48.35%でした。この期間に何を出せるかが結論を左右します。第三に、旅券と在留カードの所在、住まいの契約、勤務先や学校への説明の段取りを整理してください。第四に、ご家族の連絡先を弁護人に伝え、中国にいるご家族とも時差を踏まえた連絡方法を決めておいてください。所在の確認は入口にすぎません。そこから先の20日間が本番です。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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