入管に収容されたら、いつ出られますか。刑事の勾留との決定的な違い
2026/09/01
「不法就労で警察に捕まった家族が、刑事の手続は終わったのにそのまま入管の施設に移された。今度はいつ出られるのか」。中国語でいただくご相談のなかで、最も多い問いのひとつです。先に結論を申し上げます。入管の収容には、刑事の勾留のような「10日」「20日」という日数の上限がありません。だから「あと何日ですか」という問いには、日数ではお答えできないのです。この記事では、刑事の勾留と入管の収容がどう違うのか、収容が終わるきっかけは何か、そしてご家族が今日から準備できることを順に説明します。
入管の収容に、刑事の勾留のような日数の上限はありません
刑事の身柄拘束には、法律で明確な時計が組み込まれています。逮捕されると、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は身柄を受け取ってから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に裁判官へ勾留を請求します。勾留が認められると原則10日、やむを得ない事由があるときにさらに10日まで延長され、起訴前の身柄拘束は最長でも20日です。起訴されれば公判のための勾留に切り替わり、保釈を請求できるようになります。ところが入管の収容は、これとまったく別の制度です。退去強制の手続を進め、最終的に送還を確保するための行政上の身柄拘束であり、法律に「何日まで」という上限が置かれていません。したがって収容の終わりは、日数の経過ではなく、後述する「どの出口を選ぶか」によって決まります。
刑事の勾留と入管の収容は、判断する人も目的も別です
両者は名前が似ているだけで、中身が違います。整理すると次のようになります。
- 根拠:刑事の勾留は裁判官が発する令状によります。入管の収容は、入国警備官の請求に基づいて主任審査官が発付する収容令書、あるいは退去強制令書によります。裁判官の審査を経ません。
- 目的:刑事は罪証隠滅と逃亡の防止、そして捜査の遂行です。入管は退去強制手続の遂行と送還の確保です。
- 期間:刑事は起訴前最長20日という上限があります。入管には上限がありません。
- 争い方:刑事では勾留に対する準抗告や、起訴後の保釈があります。入管では口頭審理の請求、法務大臣に対する異議の申出、在留特別許可を求める活動、監理措置の申出、そして訴訟という別の道具を使います。
「刑事で20日たったから、入管でも同じくらいで出られるだろう」という見込みは、制度の作りから見て成り立ちません。ここを取り違えたまま何もせずに待ってしまうご家族が、実際に少なくありません。
収容が終わるのはどんなときですか
出口は大きく分けて次の五つです。第一に、自ら費用を負担して帰国する自費出国。出入国在留管理庁の統計では、令和6年に送還された7,698人のうち6,808人が自費出国でした。第二に、国の費用による送還。第三に、在留特別許可が出て在留が認められる場合です。令和7年の出入国管理統計では、審査・口頭審理・異議の申出の各段階を合わせて1,030人に在留特別許可が出ています。第四に、収容を解いて手続を続ける監理措置の決定。第五に、仮放免です。つまり「時間が来れば出られる」のではなく、「どの出口に向けて材料をそろえたか」で結果が変わります。
監理措置の申出という選択肢があります
令和5年改正入管法(出入国管理及び難民認定法)により令和6年6月10日から始まった監理措置は、収容しないまま退去強制手続を進めるための仕組みです。ご本人を監督する監理人を選び、住居や届出の条件を守ることを前提に、身柄を解いて手続を続けます。出入国在留管理庁が公表した施行後の運用状況(令和6年6月10日から同年末まで)では、監理措置の決定は1,123件(退去強制令書発付前647件、発付後476件)、同時期の仮放免は127件でした。監理人になった方の9割以上は親族・知人であり、この期間に所在不明となった人はいないと報告されています。つまり、身近な方が監理人を引き受けられるかどうかが、実務上とても大きい要素になります。
3か月ごとの収容の見直しとは何ですか
収容が続く場合には、3か月ごとに、監理措置に切り替えるべきでないかを見直す仕組みが置かれています。前記の期間の報告では、見直しの報告128件のうち監理措置の決定に至ったのは10件でした。数としては多くありません。しかし裏を返せば、見直しの機会に、住居・監理人・生活の見通し・健康状態といった判断材料が何も提出されていなければ、判断は動きようがないということです。収容が長引いている事案ほど、この見直しの時期に合わせて資料を出す意味があります。
ご家族が今日から準備できること
まず、どこの施設に収容されているのかを確認してください。刑事の留置施設から入管の施設へ移ると、面会の受付時間も差入れのルールも変わります。次に、監理人を引き受けられる方がいるかを家族内で話し合ってください。日本に住所があり、ご本人と関係があり、届出や監督の負担を現実に負える方が候補になります。あわせて、旅券と在留カードの所在、住まいの契約が続いているか、家賃や公共料金の支払いが止まっていないか、勤務先や学校への説明をいつ誰がするかを整理します。在留特別許可を目指すのであれば、日本での生活の実態、家族関係、健康上の事情を示す資料を早い段階から集めておくことが有効です。収容の期間は日数では決まりませんが、準備の量と時期は、こちらで決められます。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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