日本で逮捕されたとき中国大使館・領事館に連絡してもらうには
2026/09/01
日本で中国籍の方が逮捕されたとき、「大使館に連絡してもらえないのか」というご質問をよくいただきます。領事関係に関するウィーン条約36条1項は、外国人が逮捕・拘禁された場合に、本人が要請すれば、その国の領事機関に通報が行われることを定めています。ここで見落とされがちなのが、通報は本人の要請を前提とするという点です。放っておいても自動的に大使館に連絡が行くわけではありません。この記事では、誰にどう申し出るのか、通報の後に何が起きるのかを具体的に説明します。
結論 通報は本人が要請して初めて行われる
ウィーン条約36条1項の仕組みは、拘束された外国人本人が希望を述べたときに、その国の領事機関へ通報がなされ、また領事官が本人と連絡・面会できるというものです。逆に言えば、本人が何も言わなければ、通報が行われないまま日が過ぎることがあります。ご本人は逮捕直後の混乱の中にあり、そもそもこのような仕組みがあることを知らないことも多いのです。ご家族が中国側から働きかけても、本人の要請という前提を代わりに満たすことはできません。ここが実務上の落とし穴です。
誰にどう申し出るか
申し出る相手は、逮捕・勾留されている警察署の担当者、取調べを行う警察官や検察官、そして弁護人です。言い方はできる限り単純にします。「私は中国国籍です。中国の領事機関に連絡してほしい」と述べれば足ります。取調べに通訳が付いている場面であれば、その場で述べておくのがよいでしょう。述べた日付と、誰に述べたかを覚えておいてください。実務上は、弁護人に接見の際に伝え、弁護人から捜査機関に対して書面または口頭で申し入れてもらうのが通例です。申入れの記録が残りますので、通報がされないまま時間が過ぎる事態を避けられます。
通報の後に何が起きるか
通報がされると、領事機関が事実を把握し、必要に応じて領事官が本人と面会します。面会では、健康状態の確認、日本の手続についての一般的な説明、家族への連絡の希望の確認などが行われます。ご家族にとって重要なのは、この経路を通じて、本人が生きて、どこで、どのような状態で拘束されているのかが確認できることです。長期間連絡が取れない場合には、これが大きな意味を持ちます。
領事館ができないこと
他方で、期待を正確に調整しておく必要があります。領事機関は、本人に代わって取調べに立ち会うことも、弁護人として意見書を出すことも、勾留に不服を申し立てることも、示談交渉をすることもできません。日本の刑事手続の中で処分を左右する行為は、弁護人が行うものです。また、領事官の面会には職員の立会いが付き、内容が記録されうる点も、弁護人との接見とは異なります。したがって、事件の内容そのものを領事官に詳しく話すことは適切ではありません。領事通報は生活と身分の確認の経路、弁護活動は処分を左右する経路と、役割を分けて考えてください。
中国にいるご家族ができる確認
ご家族が中国側でできるのは、本人の氏名、生年月日、旅券番号、日本での住所、勤務先または学校、最後に連絡が取れた日時を整理し、領事機関に相談することです。この情報がそろっていれば、確認の作業が早く進みます。同時に、日本側で弁護人を選任することを並行して進めてください。領事機関からの情報と、弁護人が接見で得る情報は内容が異なります。前者は所在と健康、後者は事件の中身と見通しです。両方がそろって初めて、ご家族は判断ができます。
領事通報と弁護人接見はどちらを先にすべきか
両立するものですから、順番を争う必要はありません。ただし、時間の使い方としては弁護人の接見が先です。逮捕から72時間、その後の勾留20日という期間は、処分の方向が決まっていく時間だからです。領事通報を待っている間に取調べは進みます。ご本人には、まず黙秘権があること、供述調書は署名する前に内容を確認できること、通訳が正確でないと感じたら述べてよいことを、弁護人から早い段階で伝えることが重要です。領事通報の要請も、その接見の場で併せて弁護人に託すのが、最も効率のよい進め方です。
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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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