逮捕直後に本人が電話をかけられないのはなぜか 弁護人だけが会える理由
2026/09/01
「逮捕されて何日たてば本人から電話が来ますか」というご質問をよくいただきます。この問いに対する日本の制度の答えは、残念ながら「日数の問題ではない」というものです。逮捕された方が留置施設から自由に電話をかけられる制度は、そもそも用意されていません。他方で、弁護人には逮捕された直後から本人と会う権利が法律上保障されています。この差がどこから来るのかを理解しておくと、ご家族が何を頼み、何を頼めないのかがはっきりします。
結論 留置施設から自由に電話をかけることはできない
逮捕された方の携帯電話は、多くの場合、逮捕の際に押収されます。留置施設内に、被留置者が外部に電話をかけるための一般的な仕組みは置かれていません。手紙のやり取りは、勾留された後であれば可能な場合がありますが、検査を経ますので時間がかかり、中国語の手紙は翻訳のために更に時間を要することがあります。つまり、逮捕から数日の間に本人の肉声がご家族に届く経路は、実際には弁護人を通じたもの以外にほとんどありません。
弁護人だけが逮捕直後から会える理由
刑事訴訟法39条1項は、身体の拘束を受けている被疑者・被告人が、弁護人または弁護人になろうとする者と、立会人なくして接見し、書類や物の授受をすることができると定めています。これが接見交通権と呼ばれるものです。立会人がいないという点が重要です。捜査官が同席しませんから、本人は事実をそのまま話すことができます。この権利は逮捕された直後から働きます。勾留が決まるのを待つ必要はありませんし、休日でも夜間でも接見は可能です。ご家族が「まだ勾留も決まっていないので弁護士に頼むのは早いのではないか」と考えて数日待ってしまうことがありますが、実務上はその数日が最も大きな意味を持ちます。
接見禁止が付くとどうなるか
共犯者がいる事件、否認している事件、関係者が国外にいる事件などでは、裁判所が接見等禁止の決定(刑事訴訟法81条)を付けることがあります。この決定が付くと、ご家族を含む一般の方は面会も手紙のやり取りもできなくなります。中国から来日して面会に行ったのに窓口で断られた、というご相談はこの決定によるものであることが多いです。ただし、この決定によっても弁護人との接見は制限されません。ここが制度の要です。接見禁止が付いている事件でこそ、弁護人が唯一の情報の通り道になります。なお、接見禁止の一部を解除するよう裁判所に申し立てる方法もあり、家族との面会だけを認めてもらえる場合があります。
「電話させてほしい」と頼んでも通らないのはなぜか
ご本人が捜査官に「家族に電話させてほしい」と頼むことはできますが、これは権利として認められているものではありません。捜査機関の側から見れば、外部との自由な連絡は、口裏合わせや証拠の隠滅につながりうるものと評価されます。特に共犯が疑われる事件では、まず認められないと考えておいた方がよいでしょう。したがって、ご家族への連絡は、弁護人が接見の際に本人から伝言を預かり、本人の同意を得たうえでご家族に伝える、という形をとるのが現実的です。
弁護人を通じて伝えられること、伝えてはいけないこと
弁護人を通じて伝えられるのは、体調のこと、必要な差し入れのこと、家族が生活の面倒を見ていること、勤務先や学校への対応をどうするか、といった内容です。逆に、事件の内容について「こう言っておきなさい」という趣旨の伝言は、してはいけません。それは証拠隠滅と評価されうる行為で、ご本人の身柄にも処分にも悪い影響を与えます。ご家族が善意で「絶対に認めるな」「知らないと言え」と伝えてしまい、かえって不利になった例は少なくありません。伝えたいことがあるときは、まず弁護人に相談してください。
中国語での意思疎通と通訳
取調べや裁判の場面では通訳が付きます。刑事訴訟法175条は、国語に通じない者に陳述をさせる場合には通訳人に通訳をさせなければならないと定めており、憲法31条の適正手続の要請や、国際人権規約B規約14条3項が定める、理解する言語で告げられる権利、通訳の援助を受ける権利がその背景にあります。法務省『令和7年版 犯罪白書』によれば、令和6年に通訳を要した被告人の通常第一審終局人員は4,649人で、言語別では中国語が726人、全体の15.6%を占め、ベトナム語に次ぐ第2位でした。中国語の通訳が付くこと自体は珍しいことではありません。ただし、通訳人は中立の立場で通訳をする人であって、味方でも相談相手でもありません。中国語で相談ができる相手は、弁護人だけです。
中文版:在日本被抓多长时间让联系家人?为什么只有律师能马上见到人
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------