一度出国したのに、再入国のときに空港で逮捕された。逮捕状は消えない
2026/09/01
事件があったとされる後に日本を出国し、しばらくして観光で戻ってきたところ、空港で逮捕された。こうした経過をたどる事件が現に報じられています。出国すれば終わる、時間が経てば消える、という理解は誤りです。この記事では、北海道で報じられた事件を手掛かりに、出国後も逮捕状がどう生き続けるのか、水際での身柄確保はどのように行われるのか、二重国籍の場合に退去強制先や領事通報がどう扱われるのかを整理します。
報じられた事案
UHB北海道文化放送の2025年12月20日報道によれば、2025年9月に列車内で起きたとされる不同意わいせつの事案について、中国と英国の二重国籍で住所不詳の40代の男性が、同年12月に旅行目的で再入国した際、成田空港で逮捕されました。捜査は駅員からの届出によって開始されたとされ、本人は否認していると報じられています。行為の態様や、被害を受けた方に関する事情には触れません。逮捕の段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。
出国しても、逮捕状は生き続ける
被疑者が国外にいるからといって、捜査が終わるわけではありません。裁判所が発付した逮捕状は、執行されるまで効力を保ち、被疑者の所在が把握された時点で執行されます。さらに、刑事訴訟法255条1項は、犯人が国外にいる間は公訴時効が停止すると定めています。つまり、日本を離れている期間は時効の計算に入りません。数年間帰らなければ時効が完成する、という理解は成り立たないということです。加えて、日本の航空・港湾では入国者の情報が照合されますので、上陸手続の場で身柄が確保されることは、制度上むしろ自然な流れです。
空港での身柄確保と、上陸審査との関係
再入国の際には、まず入管の上陸審査があります。ここで刑事手続の対象となっていることが判明すれば、上陸を許可しないという判断のほか、刑事手続に引き渡すという流れが生じます。刑事手続が優先して進めば、上陸の可否の判断は後回しになり、身柄は警察へ移されます。ここで重要なのは、上陸拒否と退去強制は別の制度だという点です。上陸拒否は日本に入る前の段階の話であり、退去強制は既に在留している方を国外へ退去させる手続です。旅行者として来日した方が空港で逮捕された場合、刑事事件が終わった後の在留の扱いは、事件の結果によって変わります。
二重国籍の場合、送還先はどう決まるのか
報道された事案では、被疑者が中国と英国の二重国籍とされています。日本の退去強制手続では、送還先が問題になります。原則としては本人の国籍または市民権のある国が送還先となりますが、複数の国籍を持つ場合、どの旅券で入国したか、どの国が受入れを認めるかによって、実際の取扱いが変わります。旅券の発給や渡航文書の取得に時間がかかると、その間の身柄の扱いが問題になります。また、外国人が逮捕された場合、本人が要請すれば領事機関への通報が行われます(領事関係に関するウィーン条約36条1項)。二重国籍の場合は、どの国の領事機関に通報を求めるのかを、本人が選ぶことになります。この選択は、家族への連絡経路や、旅券の再発給の見通しに直結しますので、弁護人と相談して決めるべき事項です。
住所不詳・無職とされる場合、身柄はどうなるか
勾留の要件のうち、実務で最も重く働くのが、住居不定と逃亡のおそれです。旅行者として来日し、日本国内に定まった住居がない方は、この点で不利になります。否認していれば、罪証隠滅のおそれも加わります。したがって、この類型では起訴前の身柄解放は容易ではありません。起訴後の保釈を目指す場合には、日本国内の帰住先と身元引受人の確保が事実上の前提になります。日本に親族や知人がいれば、その方に身元引受けを依頼できるか、住居を提供できるかを早い段階で確認してください。保証金の準備も併せて必要です。
ご家族が最初に確認すること
母国のご家族にとって、日本の空港で家族が逮捕されたという知らせは、情報の乏しいまま届きます。まず確認していただきたいのは、どの警察署に留置されているか、担当の警察と検察がどこか、そして弁護人が付いているかどうかです。当番弁護士や国選弁護人の制度がありますが、通訳が付くかどうか、どの言語かは事案によって異なります。次に、旅券がどこにあるかの確認です。押収されている場合、帰国の手配は刑事手続が終わるまで進められません。最後に、日本での宿泊先や航空券の予約記録、滞在の目的を示す資料は、捨てずに保管してください。これらは、逃亡のおそれや事件との関わりを判断する際の材料になります。
中文版:已经离境一次,再次入境时却在机场被捕:逮捕状不会自动消失
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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