否認したまま研究生の身分を保てるか。長期勾留と接見禁止のなかで考えること
2026/09/01
やっていないと述べれば、勾留は長引き、接見禁止が付くことが多くなります。大学に在籍している方であれば、その間に在籍そのものが失われかねません。神奈川県内で逮捕されたと報じられた研究生の事件は、この二つの問題が同時に押し寄せる典型です。この記事では、密室性の高い事案で被害供述の信用性をどう争うのか、接見禁止のもとで大学とどう向き合うのか、そして有罪となった場合に留学の在留資格がどうなるのかを整理します。
報じられた事案
神奈川新聞(カナロコ)の2026年1月27日報道によれば、移動中の車内での不同意わいせつの疑いにより、地方の公立大学の研究生である中国籍の30代の男性が神奈川県内で逮捕されました。被害の申告は別の県でなされたとされ、本人は容疑を否認していると報じられています。行為の態様や、被害を受けた方に関する事情には触れません。逮捕の段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。
密室性の高い事案で、供述の信用性はどう争うのか
移動中の車内のような場面では、第三者の目撃が乏しく、双方の供述が正面から対立します。こうした事案で弁護人が検討するのは、被害を申告された方の供述が、それ自体として一貫しているか、客観的な事実と整合するかという点です。座席の位置関係、乗車と降車の時刻、車内の明るさ、周囲の乗客の有無、通報までの経過と時間、その間に誰に何を話したか。これらは、乗車記録、防犯カメラ、通信の履歴によって確認できることがあります。供述の変遷そのものが直ちに信用性を否定するわけではありませんが、変遷の理由が説明できるかどうかは重要です。否認する以上、こうした客観資料を早期に確保することが不可欠であり、時間が経つほど記録は失われます。
否認すると、なぜ勾留が長期化するのか
勾留は原則10日、延長で最大20日です。しかし否認事件では、罪証を隠滅するおそれがあると判断されやすく、勾留に加えて接見禁止が付くことが多くなります。接見禁止が付くと、ご家族であっても面会できず、手紙のやり取りも制限されます。ここで重要なのは、弁護人との接見は制限されないということです。弁護人は、接見禁止のもとでも本人と会い、外部との橋渡しをすることができます。勾留や接見禁止に対しては、準抗告や一部解除の申立てという不服の手段があります。特に、ご家族のうち事件と無関係な方について接見禁止の一部解除を求めることは、実務上しばしば行われます。差し入れは、現金、衣類、書籍などが可能ですが、施設ごとに扱いが異なりますので、弁護人を通じて確認してください。
大学への説明と、在籍の維持
研究生や留学生の場合、身柄拘束が続けば、授業や研究に出席できない期間が生じます。大学が事情を把握しないまま長期の欠席が続けば、除籍という形で在籍が失われることがあります。他方で、事件の内容を詳細に伝えれば、大学の側で処分の検討が始まることもあります。どの範囲で、いつ、誰に伝えるのかは、慎重な判断を要します。一般的には、事件の内容そのものよりも、当面出席できない事情があること、代理の連絡窓口があることを伝え、休学の手続を取ることで在籍を維持する方向を検討します。この連絡は、ご本人ではなく、弁護人またはご家族が行うのが現実的です。
在留資格はどうなるのか
留学の在留資格は、大学等で教育を受ける活動を前提としています。入管法(出入国管理及び難民認定法)22条の4第5号は、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていない場合を在留資格の取消事由としています。身柄拘束それ自体には正当な理由があると評価される余地がありますが、除籍や退学によって在籍を失えば、活動の基礎そのものが失われます。出入国在留管理庁の令和7年の統計では、在留資格の取消しは1,446件で過去最高となり、そのうち留学が343件を占めています。刑事処分の面では、無期または1年を超える拘禁刑の実刑であれば同法24条4号リの退去強制事由に該当します。全部執行猶予であれば同号には当たりませんが、その場合でも、在留期間の更新は素行の観点から極めて厳しく判断されます。
ご家族が今できること
第1に、弁護人の選任です。接見禁止のもとで本人と連絡が取れるのは弁護人だけです。第2に、大学への連絡と休学手続の検討。第3に、寮や住居の家賃、学費の支払いが滞らないようにすることです。住居を失うと、保釈の際の帰住先がなくなり、身柄の解放が遠のきます。第4に、母国のご家族の連絡先と、日本での身元引受人になれる方の確保です。取調べについては、通訳を介した供述調書が日本語で作られること、内容に違和感があれば署名しなくてよいことを、面会や手紙で伝えられる範囲で共有してください。否認を貫くかどうかは、証拠の内容を見たうえで、弁護人と本人が決めることです。周囲が結論を急がせないことも、支えの一つです。
中文版:一直否认还能保住研究生身份吗:长期羁押与禁止会见之下的选择
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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