風営法違反で経営者も従業員も不起訴。処分が分かれる理由と在留への影響
2026/09/01
店に警察が入り、身柄を取られた。その時点で、ご本人もご家族も「もう終わりだ」と感じられることが多いと思います。しかし、摘発と有罪は同じではありません。京都で摘発された性風俗店の事件では、中国籍の女性3人が逮捕された後、検察庁が3人とも不起訴としたと報じられています。この記事では、その報道を手掛かりに、風営法違反で処罰されるのは誰なのか、従業員の立場で何を争えるのか、不起訴にはどのような種類があるのか、そして処分が在留資格にどこまで跳ね返るのかを、順を追って整理します。
報じられたのはどのような事件だったのか
京都新聞の2025年4月14日報道によれば、京都市内の店舗について、条例で営業が禁止された区域内での性風俗営業などの疑いで、中国籍の女性3人が逮捕されました。うち経営者とされた方と従業員の1人は容疑を認め、もう1人は否認していたと報じられています。その後、京都地方検察庁は同年5月2日付で3人とも不起訴としたと報じられました。不起訴の理由は公表されていません。逮捕は捜査の一過程にすぎず、起訴・有罪が確定したものではありません。被疑者には無罪推定が及びます。
風営法の禁止区域内営業は、そもそも誰を処罰する規定か
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)は、店舗型の性風俗特殊営業について、都道府県の条例で営業してはならない区域を定める仕組みを置いています。この違反で処罰の名宛人となるのは、原則として営業を営む者、つまり営業主体です。したがって捜査と公判の中心は、行為の外形よりも、どの区域で、誰の計算で、誰の指揮のもとに営業が行われていたのかという点に置かれます。賃貸借契約の名義、売上金の管理、料金の決定、求人と採用、警察や近隣への対応窓口が誰であったか。これらが営業主体の認定を支える具体的な事実です。逆にいえば、その店で働いていたという事実だけから、営業を営む者と認められるわけではありません。
従業員の側は何を争うことができるのか
報道された事件で従業員とされた方が不起訴になった理由は公表されていませんので、断定はできません。一般論として、従業員側の弁護は、まず自分が営業主体ではないことを客観資料で示すところから組み立てます。報酬は固定額か歩合か、シフトを決めていたのは誰か、店舗の鍵と売上金を管理していたのは誰か、客からの代金は最終的に誰に渡っていたか。通帳の入出金、勤務表、メッセージアプリの履歴といった資料は、供述よりも強い意味を持ちます。もっとも、営業主体でなくとも、営業を手助けしたとして立件される余地は残ります。現に長野県内の同種事件では、従業員側が経営を幇助したとして立件されたと報じられています(TBS NEWS DIG 2026年6月10日報道。同事件も起訴・有罪が確定したものではなく、無罪推定が及びます)。関与の程度と認識を早い段階で具体的に説明できるかどうかが分かれ目になります。
不起訴には種類があり、意味がまったく違う
不起訴には、犯人でないことが明らかな嫌疑なし、証拠が足りない嫌疑不十分、犯罪の成立は認められるが訴追を見送る起訴猶予があります。検察庁は理由を公表しないのが通例で、この事件でも理由は明らかにされていません。法務省の令和7年版犯罪白書によれば、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴猶予率は48.35%でした。これは結果を保証する数字ではありませんが、起訴・不起訴が決まる前の段階に弁護活動の実益が大きいことを示しています。起訴されてしまえば、争点は有罪か無罪か、量刑をどうするかに移ります。処分が決まる前に、営業主体の認定を左右する資料を出し切ることが重要です。
不起訴になれば、在留への影響はどこまで遮断されるのか
刑事手続と入管手続は別の手続です。風営法違反は、入管法(出入国管理及び難民認定法)24条4号チが列挙する薬物関係の法令違反にも、別表第一の在留資格をもって在留する方だけが対象となる4号の2の特定犯罪にも含まれません。したがって、この罪名が直ちに退去強制事由となるのは、無期または1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた場合(同条4号リ。全部執行猶予の場合は除かれます)に限られます。不起訴であれば、この経路は生じません。ただし、在留期間の更新や在留資格の変更の審査では、素行が良好であることが考慮されます。摘発を受けた事実そのものは残り得ますので、営業形態を是正した記録、店舗を閉めたのであればその経緯を残しておくことに意味があります。
逮捕の連絡を受けたご家族が、その日のうちにできること
第1に、在留カードと旅券の所在を確認してください。逮捕の際に押収されていることもあれば、自宅に残っていることもあります。第2に、身元引受けの準備です。帰る住居があり、日常的に監督する人がいることは、勾留や保釈の判断に影響します。第3に、店舗と雇用に関する資料を散逸させないことです。賃貸借契約書、給与の振込記録、勤務表、求人のやり取りは、誰が営業主体であったかを示す最も強い材料になります。取調べでは、記憶にないことを認めない、分からないことは分からないと述べる、この二つを守ってください。通訳を介した取調べでも供述調書は日本語で作成されますので、読み聞かせの際に違和感があれば、その場で述べることが後の弁護活動を支えます。
中文版:违反风营法却全员不起诉:经营者与员工的处分为何会分开
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
----------------------------------------------------------------------