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給付金や支援金の詐取は、返還すれば処分が変わるのか

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給付金や支援金の詐取は、返還すれば処分が変わるのか

給付金や支援金の詐取は、返還すれば処分が変わるのか

2026/09/01

公的な給付金を要件を満たさないまま受け取ってしまった。返せば刑事の処分は軽くなるのでしょうか。ご相談の場でよく受けるご質問です。結論から申し上げると、返還は量刑や処分の判断で確かに考慮されますが、私人間の事件における示談とは働き方が違います。この記事では、報道された二つの事案を手がかりに、返還がどう評価されるのか、なぜ公的給付では示談という枠組みが使いにくいのか、そして分割で返す場合に何を準備すべきかを説明します。

報道されている二つの事案

読売新聞は2026年2月4日、北海道札幌市北区の中国籍の夫婦2人(男性54、女性53、男性は貿易業の代表取締役)について、2020年8月から12月にかけて、家賃支援給付金の給付要件を満たすように装って約334万円をだまし取ったとして、北海道警察の外事課が逮捕したと報じました。また同紙は2024年11月7日、熊本市南区の中国籍の女性(43、会社役員)について、国外にいる子を国内に居住していると偽って申請し、児童扶養手当64万8,120円を受給したとして詐欺の疑いが持たれていると報じています。いずれも逮捕・捜査の段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

返還は、量刑にどう効くのか

詐欺の事件では、被害が回復されたかどうかが量刑上の大きな要素になります。全額を返還していれば、被害が現に残っていないという事情として評価されます。起訴するかどうかの判断でも、返還の有無は考慮されます。ただし、返還によって成立した犯罪が消えるわけではありません。ここが、しばしば誤解される点です。返したのだから事件にならないはずだ、という前提で捜査に臨むと、期待と現実の落差に苦しむことになります。

また、返還の時期も評価に影響します。捜査が始まる前に自ら返した場合と、逮捕された後に家族が用意した場合とでは、意味合いが違います。前者は是正の意思の表れとして評価されやすく、後者は少なくとも被害回復という結果として評価されます。どちらであっても、返還した事実は書面で残してください。振込の控え、受領の連絡文書、担当窓口とのやり取りの記録が資料になります。

公的給付は、なぜ示談が難しいのか

私人が被害者の事件では、被害弁償に加えて、宥恕、つまり処罰を望まないという意思表示を得られるかどうかが結論を大きく左右します。ところが公的給付の場合、被害者は国や自治体、あるいは基金です。担当部署には、返還金を受け取る権限はあっても、処罰感情について意思表示をする立場がないのが通常です。示談書を交わすという枠組み自体が用意されていません。したがって、弁護活動としては、返還の完了と、その原資の説明、再発しない体制の説明を、こちらから積み上げて示すほかありません。

もう一つの特徴は、返還請求が行政の手続として並行して進むことです。給付の決定が取り消され、加算金を含めた返還が求められることがあります。刑事の処分が決まる前に、行政の側から通知が届くこともあります。二つの手続は別ですが、片方での説明が他方に影響しますから、方針をそろえておく必要があります。

分割での返還を申し出るときに準備するもの

一括で返せない場合、分割の申出をすることになります。ここで重要なのは、返す意思があるという言葉ではなく、返せるという裏付けです。収入の資料、家計の状況、支援してくれる親族の陳述書、勤務先の在籍証明。金額と期間を具体的に書いた計画表を作り、初回の支払いを先に実行してから提出すると、実効性のある提案として受け止められやすくなります。逆に、計画だけを示して支払いが始まっていない状態では、評価は限定的です。

身柄が拘束されている場合、本人は動けません。この作業はご家族と弁護人が担うことになります。会社を経営されている方の場合は、会社の資金と個人の資金を混同しないよう、原資の出所を明確にしておくことも大切です。

起訴猶予率をどう読むか

令和6年の犯罪白書によれば、来日外国人の被疑事件の起訴猶予率は48.35%でした。約半数が起訴猶予、すなわち不起訴となっています。ただし、これは全罪名を通じた数字です。同じ資料で詐欺の起訴率をみると、来日外国人は53.35%、全体では51.42%となっており、詐欺は起訴される割合が相対的に高い類型です。統計の名前と分母が違えば、読み取れることも変わります。ここでは、返還や生活状況の説明が意味を持つ余地はあるが、詐欺は起訴されやすい類型でもある、という二つの事実を同時に踏まえていただきたいと思います。

在留への影響と、ご家族の準備

詐欺は、入管法24条4号チが挙げる薬物関係の罪ではありませんから、有罪になっただけで直ちに退去強制の対象になるわけではありません。問題になるのは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた場合を定める24条4号リですが、刑の全部の執行を猶予されればこの号からは除かれます。令和7年の出入国管理統計第57表では、この号を単独の理由とする退去強制令書の発付は全国で41人、うち中国籍は11人でした。他方で、有罪判決の事実は在留期間の更新や在留資格の変更の審査に影響し、就労資格の方は事件を契機に職を失えば別の経路から在留が危うくなります。

ご家族にお願いしたいのは、給付金の申請書類一式と入金の記録の保全、返還の原資の確保、在留カードと旅券の所在と在留期限の確認、そして勤務先や学校への説明の時期を弁護人と決めることです。書類は手を加えず、そのままの状態で保管してください。

中文版:骗取补助金、支援金,全额返还就能改变处分吗

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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