「販売代行しませんか」という副業の誘いが刑事事件になる
2026/09/01
「大手フリマで販売代行しませんか」「月に20万、30万稼げます」。SNSでこうした誘いを受け取り、荷物を受け取って送るだけの仕事だと理解して引き受けた結果、医薬品医療機器等法(薬機法)違反で逮捕される。実際にそのような事件が報じられています。この記事では、配送を担当しただけの人がなぜ処罰されるのか、薬機法違反という罪名がどれほど重い扱いを受けるのか、そして留学や就労の在留資格にどう影響するのかを、事件報道を手がかりに整理します。
報じられた事件の概要
2023年2月1日の産経新聞の報道によれば、大阪府警は、模造フェイスパウダー1点を宅配便で販売したとして、埼玉県蕨市に住む中国籍の男性2人(いずれも30歳。会社員と専門学校生)を医薬品医療機器等法違反の疑いで逮捕したと伝えられました。報道では、SNSで「大手フリマで販売代行しませんか」「月に20万、30万稼げます」と勧誘する、いわゆる闇バイトによって在日中国人を中心とする販売グループが形成され、出品を担う人員は100人から200人規模とされ、逮捕された2人はその中の配送役だったとされています。2人は容疑を否認していると報じられました。これは逮捕された段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。
「送っただけ」がなぜ処罰されるのか
刑法の共犯の考え方では、一連の犯罪を複数人で分担した場合、自分が担当した部分だけを切り離して評価するわけではありません。出品する人、入金を管理する人、商品を保管する人、宅配便で送る人が結びついて初めて販売は完結します。だからこそ、配送だけを担当した人も、その全体の一部を担ったものとして責任を問われ得ます。もっとも、これは自動的に全員が同じ刑になるという意味ではありません。どこまで事情を知っていたか、いつから関与したか、報酬の額と受け取り方、上位者との連絡の密度によって、責任の重さは大きく変わります。争うべき点は、まさにここにあります。
薬機法違反という罪名の重さ
化粧品や医薬品の分野の規制は、商標法違反とは性質が異なります。商標法が守るのはブランドの信用と取引の秩序ですが、薬機法が守るのは、その品物を肌に付け、口に入れる人の健康そのものです。成分が不明な模造品は、それだけで健康被害の危険を含みます。この違いは、弁護活動に直接響きます。特定の被害者がいる犯罪であれば、示談によって被害が回復したと評価される余地がありますが、社会全体の安全を守る規制に違反した場合、示談で解消できる相手がそもそもいません。だからこそ、在庫の完全な廃棄、販売経路の遮断、収益の返還、再発防止の具体的な体制といった、被害者不在の類型に合わせた活動を組み立てる必要があります。
弁護人が実際に争う点
この類型で現実に争われるのは、次のような点です。
- 模造品であること、無承認の品であることを知っていたか。単に荷物を送ってほしいとだけ言われていたのか
- グループの構造をどこまで認識していたか。上位者の指示内容が記録に残っているか
- 関与の期間と回数。継続的な収入源だったのか、数回で終わっていたのか
- 報酬の性質。歩合だったのか、送料実費に近い定額だったのか
- 勧誘時のやりとり。合法な仕事だと誤信させる説明を受けていなかったか
否認する場合であっても、記録を消すことは絶対に避けてください。勧誘のメッセージや振込の履歴は、自分の関与の限界を示す証拠でもあります。消せば、弁解を裏づける手段を自ら失うことになります。
留学・就労の在留資格に何が起きるか
薬機法違反は、入管法24条4号チが列挙する薬物関係の罪には当たりません。指定薬物の規制も薬機法に基づくものであり、覚醒剤取締法や麻薬及び向精神薬取締法の違反とは別扱いになります。この違いを見落とすと、必要以上に絶望することになります。退去強制の可否は、原則として4号リ、すなわち1年を超える拘禁刑の実刑に処せられたかどうかで判断されます。ただし、専門学校生や留学生の場合は別の入口があります。逮捕・起訴によって学校を除籍されると、在留資格に応じた活動を3か月以上行っていないとして在留資格の取消し(入管法22条の4第5号)が問題になり得ます。令和7年の在留資格取消しは1446件と過去最高で、そのうち留学が343件を占めます(出入国在留管理庁)。刑事処分より先に在留の足元が崩れることがあるのです。
ご家族と本人が最初にすべきこと
まず、勧誘のやりとりを保存したうえで弁護人に渡してください。次に、報酬がいくら、どの口座に、何回入ったかを整理してください。金額が小さいことは、関与の限界を示す事実になります。学校や勤務先への連絡は、除籍や解雇の判断を早めてしまう場合があるため、タイミングを弁護人と相談してください。そして、同じ誘いを受けている友人がいるなら、その人に今すぐ手を引くよう伝えてください。この類型は、末端の一人が捕まると、名簿や通信履歴から関与者が次々に特定されていきます。副業のつもりで始めたことが、在留の全部を失わせる事件になり得ます。
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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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