否認して身柄拘束が長引くとき、ご家族が今日できることの優先順位
2026/09/01
「やっていない」と述べているために勾留が延び、面会もできない。ご家族にとって、この状態はもっとも消耗する時間です。しかも本人は日本語での取調べに一人で向き合っています。この記事は、中国籍のご本人が不正アクセスや決済不正の事件で否認し、身柄拘束が長引いているご家族に向けて、なぜ長引くのかという仕組みと、今日から手をつけられることの優先順位を、具体的に示します。
否認していると、なぜ身柄が長引くのか
勾留の理由は、住居が定まらないこと、証拠を隠すおそれがあること、逃げるおそれがあることです。否認していること自体が理由になるわけではありませんが、実務では、供述が事件の中心的な証拠になっている段階で、関係者との口裏合わせや端末の処分が懸念されると判断されやすくなります。逮捕後、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留を請求します。勾留は原則10日、延長でさらに10日までです。この判断に対しては準抗告という不服申立てができ、否認事件でも釈放が認められることはあります。
報道された二つの否認事件
電子チケットの不正取得と転売が問題となった事件では、東京都内に住む中国籍の40代の男性が、他人のアカウントに複数回接続して電子チケットを取得し、仲介サイトに定価の約4倍で出品したとして摘発され、「自分ではない」と否認していると報じられました(福井新聞・産経新聞 2026年6月10日、同月29日再逮捕の各報道)。電子決済サービスへの不正接続が問題となった事件では、神奈川県内に住む中国籍の30代の夫婦が、他人の電話番号とパスワードで決済し商品を詐取したとして摘発され、両名とも否認していると報じられています(福井新聞 2025年2月18日・19日報道)。いずれも起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。否認事件では、接続元の情報が本当に本人の端末を指すのか、共用の回線や譲渡されたアカウントが介在していないかが争点になります。
優先順位の第一は、差し入れより先に弁護人です
ご家族が最初にされるのは、たいてい差し入れの手配です。もちろん大切ですが、優先順位でいえば弁護人の選任が先です。接見禁止が付いていると、ご家族は本人に会えませんが、弁護人の接見は制限されません。取調べで何を聞かれ、本人が何と答えているのかを知る方法は、弁護人を通すほかにありません。中国語の通訳を確保できているか、取調べに通訳が付いているかも、弁護人でなければ確認できない事柄です。外国籍の方が逮捕された場合、本人が求めれば領事機関への通報が行われる仕組みもあります。
第二は、帰る場所の確保です
釈放や保釈が認められるかどうかは、帰住先が具体的に示せるかに大きく左右されます。賃貸物件の契約が本人名義で、家賃が滞りそうであれば、支払いの手当てを先に済ませてください。同居できる親族がいるなら、その方の在留状況と住居の状況を書面にまとめておきます。身元引受書は、誰が、どこで、どのように本人を監督するのかを具体的に書いたものほど価値があります。「きちんと出頭させます」といった言葉だけより、勤務先や住居の実態が伝わる記載のほうが説得力を持ちます。
第三は、勤務先と学校への説明です
無断欠勤が続けば解雇の理由になり、就労資格の土台が崩れます。留学生であれば、出席日数の不足が除籍につながります。説明の時期と範囲は弁護人と相談して決めますが、連絡を絶つことだけは避けてください。会社に対しては、休職扱いにできないかを打診し、学校に対しては、事情により登校できない期間があることを伝えて在籍の維持を求めます。ここで得られた「復帰できる見込み」は、勾留に対する不服申立てや、後の量刑の場面でも意味を持ちます。
差し入れと面会の実際
差し入れは、現金、下着や衣類、書籍などが中心です。施設ごとに数量や種類の制限があり、事前に確認が必要です。一般面会は時間が短く、職員が内容を確認できる言語で行うよう求められることがあるため、中国語で自由に話せるとは限りません。込み入った話や事件の内容は、弁護人を通すのが確実です。差し入れる本や手紙には、事件について指示と受け取られかねない内容を書かないでください。それが証拠隠滅のおそれの根拠とされ、身柄が延びる原因になります。
中文版:否认导致羁押拉长时,家属今天能做的事,按优先顺序排列
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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