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「受け取るだけ」「出金するだけ」。三つの事件を並べて読むと何が見えるか

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「受け取るだけ」「出金するだけ」。三つの事件を並べて読むと何が見えるか

「受け取るだけ」「出金するだけ」。三つの事件を並べて読むと何が見えるか

2026/09/01

「荷物を受け取ってくれるだけでいい」「ATMでお金を下ろしてくるだけ」。中国語のSNSや掲示板で見かける、報酬の少ない簡単な仕事です。頼まれた側にとっては、届いた箱を持ち帰るだけの作業に見えます。しかし、その作業が刑事事件になったとき、問われるのは「知らなかったかどうか」です。この記事では、報道された三つの事案を並べて、報酬・回数・指示の秘匿性という三つのものさしが、故意の認定にどのように効くのかを説明します。

三つの報道事案

第一に、中国語ニュースサイトの旅日僑網は2023年7月18日、日本で会社を経営する中国籍の41歳の男と、在留資格「留学」の中国籍の28歳の男が、2022年6月から2023年5月にかけて、他人名義のカード6枚を不正に利用して乗車券96枚(合計約67万円相当)を購入し金券店で転売したとして摘発されたと報じました。報道によれば、この留学生はメッセージアプリで見つけた「荷物の受け取り代行」として、寮で60回以上受け取り、1件あたり50元の報酬を得ていたとされています。

第二に、読売新聞などは2026年5月15日以降、愛知県と埼玉県川口市を中心に、他人のカード情報を通販サイトの決済画面に入力して腕時計や家電などを購入し、荷受けの役割を担う者の自宅へ配送させて転売したとして、中国籍の男女ら6人から7人が私電磁的記録不正作出・同供用、窃盗、詐欺の疑いで逮捕、再逮捕されたと報じました。転売額は約3億7,200万円以上とされています。

第三に、朝日新聞は2022年11月4日、埼玉県和光市に住む中国籍の男2人が、格安のブランド品を売ると称する偽の通販サイトに誘われた利用者が振り込んだ代金を現金自動預払機から引き出したとして、窃盗の疑いで逮捕されたと報じました。

いずれも逮捕・摘発の段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

「受け取るだけ」「下ろすだけ」がなぜ罪になるのか

三つの事案は、担当した作業が違えば罪名も違います。他人名義のカードで購入した商品を受け取る行為は、詐欺や、私電磁的記録の不正作出・供用の一部として構成されます。偽サイトに振り込まれた金を現金自動預払機から引き出す行為は、金融機関に対する窃盗として構成されるのが通例です。

共通しているのは、実行行為の最終段階を担当しているという点です。組織にとって最も危険な部分、つまり現場に姿を現す作業を、最も安い報酬で引き受けているのが、この人たちです。

故意を分ける三つのものさし

故意があったかどうかは、次の三つの事情から推し量られます。

  • 報酬。作業内容に比して不自然に高いか、あるいは不自然に安いか。一件50元という水準は、単価としては低いものの、「箱を受け取るだけ」という労力から見れば説明を要する対価です。金額の絶対値ではなく、作業との釣り合いが問われます。
  • 回数。一度きりであれば、事情を知らずに巻き込まれた可能性が残ります。しかし60回を超えて反復していれば、届く荷物の内容や、名義が自分でないことに気付く機会が繰り返しあったと評価されます。
  • 指示の秘匿性。本名を名乗らない、通信アプリを頻繁に変える、荷物を開けるなと言われる、身分証の写真だけを求められる。こうした事情は、正常な取引ではないと気付き得たことを示す典型的な材料です。

この三つが重なるほど、「知らなかった」という説明は通りにくくなります。逆に、一度きり、報酬が明確な労務の対価として説明でき、依頼者の素性が明らかであれば、故意を争う余地が残ります。

途中から加わった者の責任はどこまで及ぶか

最高裁判所平成29年12月11日決定は、いわゆるだまされたふり作戦が開始された後に受け子として加わった者にも、詐欺未遂の承継的共同正犯が成立するとしました。したがって、「自分が加わる前のことは関係ない」という主張が当然に通るわけではありません。

それでも、責任の範囲は合意の内容によって決まります。三億円を超える転売額が報じられた事案でも、荷受けだけを担当した人が全体の額をそのまま負うわけではありません。指示の文面、報酬の計算方法、担当した回数と期間を証拠に即して示し、認定される範囲を絞り込むことが弁護の中心になります。

在留資格への影響と、今日できること

留学生が関与した場合、刑事処分より先に学籍が失われることが少なくありません。令和7年の在留資格取消しは1,446件と過去最高で、留学が343件(23.7%)を占めます(出入国在留管理庁)。他方、入管法24条4号リによる退去強制事由は、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合であり、全部執行猶予は但書で除かれます。

いま誘われている段階であれば、断ってください。既に受け取ってしまった場合は、依頼のやり取りを保存し、削除しないでください。報酬の少なさと指示の一方向性は、従属的な立場を示す最良の資料です。ご家族は、在留カードと旅券の所在、学校や勤務先への説明の時期、被害弁償の原資、身元引受人の候補を整理してください。通訳を介した取調べでは言葉の訳し方が故意の評価に直結しますから、中国語に対応できる弁護人が早期に接見に入る体制を整えることをお勧めします。

中文版:把“只是收货”“只是取款”的三起案件放在一起读,能看见什么

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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