商品を集めて中国へ送る発送拠点。その作業は法的にどう評価されるのか
2026/09/01
「商品を受け取って、箱を詰め替えて、中国宛てに送っていただけです」。この説明は、ご本人にとっては実感のこもった真実であることが多いのですが、日本の刑事手続では、そこから先が問題になります。同じ作業が、窃盗や詐欺の共同正犯として評価されることもあれば、盗品に関与する罪として評価されることもあり、どちらになるかで争点も見通しも変わるからです。この記事は、集積・発送拠点で働いていた中国籍の方とそのご家族に向けて、この作業がどう評価されるのかを整理します。
報じられた事件における発送拠点
山形テレビが2026年6月29日に報じた事件では、フィッシングメールなどで得たIDとパスワードで他人名義のアカウントにログインし、タブレット端末などを注文してだまし取ったとして、中国籍の40代の女性を含む計4人が不正アクセス禁止法違反と窃盗の疑いで逮捕されたと報じられています。報道によれば、東京都内のビルの一室が商品の集積と発送の拠点となっており、集められた商品は中国へ送られていたとされています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。
二つの構成のどちらに乗るのか
第1の構成は、注文から発送までを一連の計画とみて、拠点での作業を窃盗や詐欺の共同正犯の一部と評価するものです。この場合、犯行が完成するために不可欠な役割を分担したと評価されれば、自分が注文をしていなくても、本体の罪の責任を負います。第2の構成は、犯罪によって得られた物であることを知りながら保管し、運搬し、あるいは売却の仲立ちをしたとみて、盗品に関与する罪として評価するものです。旅日僑網が2023年7月18日に報じた事件では、他人名義のカードで購入した乗車券を金券ショップで転売した事案について、電子計算機使用詐欺とともに盗品等有償処分あっせんの罪名が報じられています。
分岐点はどこにあるのか
分かれ目は、二つあります。一つは時間です。物が取られる前から計画に組み込まれていたのか、取られた後に初めて関与したのか。もう一つは認識です。何がどのように取得された物なのかを、どの段階でどこまで知っていたのか。朝日新聞が2022年11月4日に報じた事件では、偽の通販サイトに振り込まれた代金を現金自動預払機から引き出す役だけが摘発されており、この類型では、後から加わった者が本体の詐欺についてまで共謀を負うのかが最大の争点になります。発送拠点の作業も同じ構造で、いつ、何を知って、どこから入ったのかが結論を左右します。
「転送代行の仕事だと聞いていた」という説明をどう支えるか
越境の物流には、正規の転送代行という業態が実際に存在します。したがって、そのように説明されて始めた場合、故意の内容を争う余地は確かにあります。ただし、説明を信じたという主張は、それだけでは通りません。求人がどこに出ていたか、契約書や業務委託の書面があるか、報酬が業務量に見合う水準だったか、送り状の依頼主名が毎回異なっていなかったか、商品が新品未開封の高額品ばかりに偏っていなかったか、身分証の提示や事務所の所在確認をしていたかといった事実を積み上げて、初めて説得力を持ちます。逆に、こうした点に不自然さがありながら確認しなかった経緯は、未必の故意を認める方向に働きます。ここは正面から検討すべき部分です。
在留資格への影響と、資格ごとの違い
報道からは、拠点で作業していた方々の在留資格は分かりません。そのうえで一般論を申し上げると、留学や技術・人文知識・国際業務のような別表第一の在留資格であれば、そもそも報酬を得る作業自体が資格外活動として問題になり得ますし、有罪となって実刑に至れば、入管法24条4号の、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者に関する定めが働きます。永住者や定住者、日本人の配偶者等といった身分に基づく在留資格の方は、別表第一の在留資格者だけを対象とする特定犯罪の規定の適用はありませんが、1年を超える実刑という基準は同じく及びます。在留資格取消しの側面でも、活動を継続して3か月以上行っていないことが取消事由となる点は、長期の身柄拘束で現実の問題になります。
ご家族が最初にすべきこと
まず、雇用や業務委託に関する書面、求人の画面、報酬の振込記録、送り状の控えを探して保全してください。これらは故意を争う際の中心的な資料です。次に、拠点の賃貸借契約や鍵の管理者が誰であったかを確認してください。場所の管理権限は役割評価に直結します。そのうえで、弁護人を通じて本人に伝えるべきことがあります。取調べでは、記憶にないことを推測で語らないこと、日時や件数は曖昧なまま署名しないこと、通訳の訳が自分の意図と違うと感じたらその場で申し出ることです。ご家族からの差し入れは、着替えと現金のほか、必要な常用薬の情報を弁護人経由で伝えることが役に立ちます。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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