偽装結婚で有罪になると在留資格は取り消されるのか 刑事と入管の時間軸
2026/08/31
偽装結婚の事件でご家族から最も多くいただく質問は、刑事の裁判が終わったらそれで済むのか、というものです。答えは、済みません。刑事の手続と、在留資格をめぐる入管の手続は別の線路を走っており、両方に対応する必要があります。この記事では、在留資格の取消しがどのような処分なのか、取り消された後に何が起こるのか、刑事と入管の時間がどう流れるのかを、公表統計とあわせて整理します。
報じられた事案の概要
2026年6月23日のCBCテレビの報道によれば、岐阜県瑞穂市において、婚姻の意思がないまま虚偽の婚姻届を提出したとして、中国籍の男1人と日本人の女1人が、電磁的公正証書原本不実記録及び同供用の疑いで逮捕されたと報じられています。男は日本で長く働くための資格が欲しかったと認めていると報じられています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。以下は、この類型に共通する制度の説明です。
在留資格の取消しとは、どのような処分か
出入国管理及び難民認定法(入管法)22条の4は、いくつかの事由を挙げて在留資格を取り消すことができると定めています。その第1号が、偽りその他不正の手段によって上陸許可等を受けた場合です。婚姻の意思がないのに配偶者としての在留資格を得ていたと判断されれば、この第1号の問題になります。取消しは、いま持っている在留資格そのものを失わせる処分であり、刑事の有罪判決とは別に、入管が独自に行います。
数字で見ると、令和7年の在留資格取消件数は1446件で、前年の1184件から22・1%増え、過去最高となりました。事由別では、住居地の届出義務違反等の第6号が999件(69・1%)、在留資格に応じた活動を3か月以上行っていない第5号が350件(24・2%)で、第1号は3件です。国籍別ではベトナム947件(65・5%)に対し中国は66件(4・6%)でした。不正取得を理由とする取消しは件数としては少数ですが、該当したときの帰結が重いという性質の処分です。
刑事と入管の時間は、どう流れるか
刑事は、逮捕から48時間以内の送致、72時間以内の勾留請求、原則10日の勾留と最大10日の延長という順に進み、その間に起訴か不起訴かが決まります。起訴されれば公判があり、判決が出て、上訴がなければ確定します。ここまでで数か月かかることが通常です。
入管の手続は、これと並行して、あるいは刑事が終わってから動き出します。取消しの前には意見を聴取する手続が置かれます。取り消された場合、出国のための期間が指定されることもあれば、直ちに退去強制の手続に移ることもあります。退去強制の手続に入れば、違反調査、入国審査官による審査、口頭審理、法務大臣への異議という順に進み、その各段階で在留特別許可の可否が判断されます。刑事が不起訴で終わっても、入管の判断が自動的に有利になるとは限らないという点は、押さえておく必要があります。
取り消された後、どうなるのか
取消しによって在留資格を失えば、その後に日本に残ること自体が不法残留の問題になります。ここで生じる差が、上陸拒否の期間です。退去強制を受けて出国した場合、前歴がなければ5年、前歴があれば10年、日本に入国できません。これに対し、要件を満たして出国命令により出国した場合は1年です。ただし、違反調査が始まる前に自ら出頭したのか、始まった後だったのかによって扱いが変わり、後者の方が短期滞在で再来日しようとする際に長い期間を課される場合があります。
また、出国命令には要件があり、一定の罪について拘禁刑に処せられていないことが求められます。刑事処分の内容によっては選べないことがありますので、刑事の見通しと入管の選択肢を、同じテーブルで検討する必要があります。
在留特別許可の可能性はどこにあるか
退去強制の事由に当たる場合でも、在留特別許可が与えられることがあります。令和7年の統計では、在留特別許可は審査段階で824人、口頭審理で29人、異議申出で177人の合計1030人でした。同じ年の退去強制令書の発付は7725人です。許可の割合は高いとはいえませんが、現に一定数が許可されています。
入管法50条5項は、考慮する事情を法律上定めています。令和6年3月に改定され同年6月10日から適用されているガイドラインでは、自ら地方出入国在留管理官署に出頭して申告したことが積極的な要素として明記され、他方で不法滞在の長期化は消極的な要素とされています。なお、在留特別許可の申請ができるのは、収容令書により収容された外国人又は監理措置の決定を受けた外国人であり、それ以前の段階では職権の発動を求める活動になります。国籍別の許可件数は公表されていないため、中国籍について何件許可されたという説明はできません。
今日できることと、ご家族の準備
刑事の段階から、入管で使う資料を意識して集めてください。日本での生活の実態を示す資料、扶養している家族の状況、納税と社会保険の記録、勤務先の受入れの意向、住居の確保です。これらは刑事の情状としても、入管の判断材料としても働きます。
また、在留カードと旅券の所在、在留期限、直近の申請書類の控えを確認しておいてください。手続の選択肢は期限に強く縛られます。ご本人が身柄を拘束されている間は、期限の管理をご家族と弁護人が担うことになります。
中文版:因假结婚被判有罪,在留资格会被取消吗 刑事与入管的时间轴
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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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