落書きの画像をSNSに上げたことが、捜査の端緒になる
2026/08/31
事件そのものよりも、事件の後にSNSへ投稿した一枚の画像が、捜査を動かすことがあります。日本を離れてから投稿した場合でも同じです。この記事は、投稿からどのように個人が特定されていくのか、少年に逮捕状が出た場合に手続がどう進むのか、被疑者が国外にいるときに事件はどう扱われるのかを、中国籍の方とそのご家族に向けて整理します。投稿を消すべきかどうかという、実際によく聞かれる質問にも触れます。
報じられた事案の概要
2024年7月ごろ以降、産経新聞、日本経済新聞、東京新聞などにより、東京都内の神社の石柱に落書きがされた事件について、中国籍の男が器物損壊等の疑いで逮捕されたこと、また別に中国籍の少年に逮捕状が出され、その少年は出国した後に中国のSNSへ画像を投稿したと報じられています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。少年の特定につながる事情には触れません。
投稿から、どのようにして人が特定されるのか
捜査機関が見るのは、画像そのものだけではありません。撮影された背景に写り込んだ看板や建物から場所と時刻が絞られ、投稿の時刻と現場の防犯カメラの記録が突き合わされます。同じアカウントの過去の投稿から、滞在していた地域、利用した交通機関、一緒にいた人の存在が浮かびます。
そこに、宿泊施設の記録、交通系のカードの利用履歴、出入国の記録といった客観的な情報が重ねられます。日本の捜査機関は、通信事業者や事業者に対して照会や令状による差押えを行うことができ、国内で保存されている記録は手続に従って集められます。外国のプラットフォームに投稿された画像であっても、それが日本国内で転載され、保存され、印刷された時点で、証拠として扱われます。海外のサイトだから届かない、という前提を置くのは危険です。
投稿を消せばよいのか
よくいただく質問ですが、単純ではありません。すでに拡散した画像は第三者の手元に残っており、削除しても消えません。それどころか、捜査が始まった後に消す行為は、罪証を隠滅しようとしたと評価され、勾留の必要性を基礎づける事情として使われることがあります。
他方で、投稿を残し続けることが、反省していないという評価につながることもあります。どちらが有利かは、捜査の進み具合と、その投稿が事実関係のどの部分を示しているかによって変わります。自分で判断せず、弁護人と相談してから決めてください。関連するやり取りの履歴を、消さずに保存しておくことも重要です。有利な事実を裏づける材料が、そこに含まれていることがあるからです。
少年に逮捕状が出た場合、手続はどう進むか
20歳未満の少年の事件は、成人と同じようには進みません。捜査を遂げた事件は原則として家庭裁判所に送られ、そこで少年の資質や生活環境の調査が行われた上で、審判において保護観察や少年院送致といった保護処分が検討されます。事案によっては、家庭裁判所が事件を検察官に送り返し、そこから通常の刑事裁判に移ることもあります。
逮捕状が出ていることは、有罪が決まったことを意味しません。少年事件では、本人の氏名や年齢など、本人であると推知できる報道は法律上制限されており、ご家族が公表を求められる立場に立つこともありません。付添人となる弁護士を早く選ぶこと、学校や保護者による監督の体制を具体的に示せるよう準備することが、この段階の中心になります。
被疑者が国外にいる場合、事件はどうなるか
被疑者が日本を出た後も、事件は終わりません。刑事訴訟法255条1項により、犯人が国外にいる間は公訴時効の進行が停止します。逮捕状は執行されないまま維持され、指名手配の措置がとられます。したがって、時間が解決するという見込みは成り立ちません。
現実的な選択は二つです。日本へ戻らないまま放置するか、弁護人を通じて出頭の時期と方法を調整し、被害弁償や告訴の取下げの交渉を先行させたうえで手続に応じるかです。前者を選んだ場合、日本への再入国の場面で問題が表面化し、その時点では準備する時間がありません。
在留と、今後の来日への影響
器物損壊のような財産犯で、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に至ることは多くありません。出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号リはこの水準を要求しており、全部執行猶予は但書で除外されています。ただし、在留資格の更新や変更では素行が審査されますし、一定の刑に処せられたことが、日本へ入国しようとする際の審査で問題となる場合があります。留学や就労の資格で在留している方であれば、身柄拘束が長引いて学業や勤務が途切れること自体が、在留資格の取消しの問題につながります。
ご家族が今日できること
まず、本人に投稿を消させたり、関係者に連絡を取らせたりしないでください。善意の行動が罪証隠滅と受け取られます。次に、投稿の画面と日時を記録として保存し、弁護人に渡せる形にしておきます。そして、本人が国外にいる場合は、帰国を独断で決める前に、日本の弁護人に事件の受理状況を確認してもらってください。学校や勤務先への説明の時期も、弁護人と相談してから決めるのが安全です。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------