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道具で殴り、翌日に亡くなった。傷害致死の因果関係はどこで争われるか

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道具で殴り、翌日に亡くなった。傷害致死の因果関係はどこで争われるか

道具で殴り、翌日に亡くなった。傷害致死の因果関係はどこで争われるか

2026/08/31

殴った当日は歩いて帰ったのに、翌日になって被害者が亡くなった。こうした事件では、罪名は暴行や傷害ではなく、傷害致死として扱われることになります。ここで最大の争点になるのが、因果関係です。この記事では、傷害致死の枠組みを説明したうえで、裁判員裁判における鑑定の争い方までを整理します。なお本記事は、特定の事件についての解説ではなく、制度と実務の一般的な説明です。

傷害致死とは、どのような罪か

傷害致死は、人に暴行を加えて傷害を負わせ、その結果として死亡させた場合に成立します。殺人との違いは、殺意の有無にあります。相手が死亡する可能性を認識していなければ、殺人にはなりません。他方で、死亡という結果について、故意がなくても責任を負う点に、この罪の重さがあります。「そんなつもりはなかった」という説明は、殺人ではないことの理由にはなりますが、傷害致死を否定する理由にはなりません。

否定できるとすれば、それは因果関係の問題としてです。自分の行為が原因ではない、あるいは自分の行為から死亡までの間に、結び付きを断ち切る事情が入ったといえるか。ここが争点になります。

因果関係は、どのように判断されるのか

実務では、行為が持っていた危険性が、そのまま結果として現実になったといえるかどうかが問われます。単に「その行為がなければ死ななかった」という条件関係だけでは足りず、その結果を行為者に帰属させることが相当かが検討されます。

この判断の中で、次のような事情が問題になります。

  • 被害者の既往症。心疾患、脳血管の病変、飲酒による肝機能の低下など
  • 医療介入の内容。受診の遅れ、搬送先での処置、手術の選択。医療の側に著しく不適切な行為があったといえるかどうか
  • 第三者の行為や、被害者自身の行動。転倒の有無、その後に別の外力が加わったかどうか

誤解されやすいのですが、持病があった、治療が遅れたという事情があるだけで因果関係が切れるわけではありません。実務上は、行為の危険性が結果に現実化したという評価を覆すだけの、相当に強い事情が必要です。もっとも、これらは量刑の場面で考慮されますから、因果関係を全面的に否定できない事案でも、事実を正確に明らかにする作業には意味があります。

制度を説明するための想定例

以下は実際の事件ではなく、制度を説明するための想定例です。深夜の作業現場で、口論の末にAがBの後頭部を工具で一回殴打したとします。Bはその場では立ち上がり、自分で帰宅しました。しかし翌朝、家族が意識のないBを発見し、搬送先で死亡が確認されました。司法解剖の結果、死因は頭部への打撲による頭蓋内の出血とされました。

この場合、殴打行為と死亡との結び付きは、解剖の所見によって強く支えられます。争いうるのは、出血の原因が当該の殴打だけであるといえるか、帰宅後に転倒するなど別の外力が加わっていないか、といった点です。帰宅途中の防犯カメラにBが転倒する様子が写っていれば、事案の見え方は変わります。そうした事情がないのであれば、弁護の重点は、暴行の態様、動機、示談、そして量刑へ移ります。

死因の立証と、弁護側の検討

被害者が死亡した事件では、司法解剖が行われ、鑑定書が作成されます。弁護人は、その内容を丁寧に検討する必要があります。確認するのは、死因の判断根拠、他の死因の可能性がどこまで検討されたか、外力の作用点と創の状況が事件の態様と整合するか、画像所見や既往の診療記録との関係はどうかといった点です。

必要であれば、弁護側で専門家の意見を得ることを検討します。カルテ、看護記録、画像データ、救急搬送の記録は、開示を求めるべき資料であり、時間の経過とともに確認が難しくなります。

裁判員裁判で、鑑定をどう争うか

傷害致死は裁判員裁判の対象となります。裁判員は医学の専門家ではありません。したがって、鑑定を争う場合には、専門的に正しいだけでなく、法廷で理解できる形にする必要があります。実務では、次のような工夫がされます。

  • 争点を一つに絞る。複数の医学的問題を同時に提示すると、いずれも伝わらなくなります
  • 図や模型を用いて、外力の方向と部位を視覚的に示す
  • 鑑定人に対する尋問では、専門用語をその場で言い換えさせ、前提となる事実を確認する

中国語話者の事件では、ここに通訳の問題が重なります。医学用語の訳語を事前に統一しておかなければ、被告人本人が審理の内容を理解できないまま進行してしまいます。

報じられた事案に見る、鈍器による頭部への攻撃

2026年6月10日および同年6月30日に西日本新聞、日テレNEWSほかが報じた事案では、福岡市博多区の食品製造会社の事務所で、中国籍の技能実習生の男性(20歳)が同僚女性の頭部を斧で複数回殴打して重傷を負わせ、その約3週間後、同一の職場で逃げた同僚男性を追いバール等で頭部を殴打したとして再逮捕されたと報じられています。殺人未遂の疑いで逮捕されたと報じられています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

この報道が示すように、頭部への鈍器による攻撃は、それ自体が生命に対する高度の危険を伴います。仮に死亡の結果が生じていれば、殺意の有無に応じて殺人または傷害致死が問題となります。

ご家族が最初に準備すること

ご家族には、次の準備をお願いしています。第一に、弁護人の早期選任です。証拠の保全と開示の請求は、早いほど選択肢が残ります。第二に、本人の勤務状況、生活状況、本国の家族の状況を示す資料です。第三に、被害弁償に充てられる資金と、その送金経路の確保です。ご遺族への連絡は、弁護人を通してください。

最後に在留の話をします。傷害致死で実刑となり、その刑期が1年を超える場合、入管法24条4号リの退去強制事由に該当します。刑の全部の執行猶予が付いた場合は除かれます。令和7年の出入国管理統計では、この規定を単独の理由とする退去強制令書の発付は全国で41人でした。刑事の弁護と入管の見通しを、同じ担当者が一続きのものとして考えることが必要です。

中文版:用工具殴打后对方次日死亡:伤害致死的因果关系在哪里争

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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