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少額の窃盗で不起訴になる人と、起訴される人は何が違うのか

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少額の窃盗で不起訴になる人と、起訴される人は何が違うのか

少額の窃盗で不起訴になる人と、起訴される人は何が違うのか

2026/08/31

畑のキャベツ、土産物店の菓子一箱。被害額が小さくても、日本では現行犯逮捕され、そのまま勾留されることがあります。他方で、同じような少額の事案について検察官が不起訴とした例も現に存在します。この記事は、ご家族が万引きや少額の窃盗で逮捕され、これからどうなるのかが分からないという方に向けて、実際に報道された2件を手がかりに、処分を分けている要素を具体的に説明するものです。公表されている統計の数字も、年次と出典を示しながら見ていきます。

報道された2件を並べてみる

1件目です。集英社オンラインは2025年2月5日、茨城県下妻市の畑からキャベツ8個を盗んだ疑いで中国籍の男2人が現行犯逮捕された事件について、持ち去ったこと自体は認めつつ窃盗には当たらないという趣旨の弁解をしていたと報じたうえで、水戸地方検察庁下妻支部が同年1月24日に不起訴としたことを伝えています。少額の農作物窃盗で不起訴が公表された、数少ない例です。

2件目です。HBC北海道放送は2026年5月15日、札幌市中央区の土産物店で752円の菓子1箱を会計せずに店を出たとして、船員として来日していた中国籍の40代の女性が警備員に確保され、現行犯逮捕されたと報じています。この事件について、その後の処分を伝える報道は確認できていません。逮捕の段階で報じられたものであり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。752円でも刑事事件になるという事実は、日本に短期間滞在する方ほど知っておく価値があります。

検察官は何を見て処分を決めているのか

少額窃盗で検察官が起訴・不起訴を分ける際に重く見ているのは、おおむね次の点です。第1に、被害が回復されているか。代金の支払や被害弁償が済んでいるかどうかです。第2に、被害者が処罰を望んでいるか。店舗によっては方針として厳しい対応をとるところもあります。第3に、同種の前科・前歴があるか。第4に、犯行の態様、すなわち計画性、常習性、共犯者の有無です。第5に、住居と身元引受人があるかどうかです。

外国籍の方の事案では、この第5点が壁になります。住居が定まっていない、あるいは短期滞在で帰国予定があるという事情は、逃亡のおそれを基礎づける方向に働き、勾留されやすくなります。勾留されたまま時間が過ぎると、示談の交渉に着手するのが遅れ、その遅れがまた処分に響くという悪循環が生じます。

統計から見える傾向と、その読み方

法務省の令和7年版犯罪白書(対象年次は令和6年)によれば、来日外国人被疑事件の起訴猶予率は48.35%です。およそ半数が起訴猶予、すなわち不起訴で終わっています。他方、罪名別に見ると、窃盗の起訴率は来日外国人52.53%で、日本人を含む全体の44.84%を7.7ポイント上回ります。

ここで注意が必要なのは「来日外国人」という言葉の意味です。警察庁と法務省の統計における来日外国人には、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者が含まれていません。在留外国人全体の数字ではないのです。母数の違いを踏まえずに「外国人は起訴されやすい」と一般化することはできません。ただし、窃盗という類型で起訴率が相対的に高く出ていること自体は、被害弁償と身元の整備を急ぐ実際的な理由になります。

「盗むつもりはなかった」という弁解は通るのか

窃盗が成立するには、他人の物をその意思に反して自分の支配下に移すことに加えて、権利者を排除して自分の物のように利用・処分する意思、いわゆる不法領得の意思が必要とされています。「価値のない物だと思った」「後で払うつもりだった」という弁解は、まさにこの点を争うものです。

もっとも実務では、この意思は客観的な行動から認定されます。レジを通らずに店外へ出た、袋やかばんに入れて隠した、値札を外した、といった外形が重視されるのです。被害品が農作物や少額の商品であっても、法的な評価の枠組みが変わるわけではありません。ここを誤解したまま取調べで争い続けると、反省がないと評価され、かえって身柄拘束が長引くことがあります。事実として争える事案なのか、それとも早期に被害弁償へ舵を切るべき事案なのかの見極めが、弁護人の最初の仕事になります。

不起訴でも「なかったこと」にはならない

不起訴になれば前科は付きません。しかし、逮捕・送致の事実は捜査機関の記録として残ります。在留期間の更新、在留資格の変更、永住許可の申請では素行が善良であることが審査され、行政の判断は刑事処分に拘束されないため、不起訴であっても申請の場面で説明を求められることがあります。

他方で、少額の窃盗が直ちに退去強制につながるわけではありません。窃盗は入管法24条4号の2に列挙された罪名ではなく、この罪で退去強制事由に当たるのは、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられて同条4号リに該当する場合です。全部執行猶予はこの号から除かれています。短期滞在や船員として来日中の方の場合、問題が現れるのはむしろ次に日本へ入国しようとしたときの上陸審査の場面です。

ご家族が最初にすべきこと

まず、被害弁償の原資を用意してください。中国から送金する場合は日数がかかりますので、着手は早いほど有利です。謝罪や弁償の申入れは、直接ではなく弁護人を通じて行ってください。被害店舗に直接連絡すると、証拠隠滅を疑われかねません。次に、在留カードと旅券の所在を確認してください。勤務先や学校への説明は、時期を誤ると解雇や退学につながり、在留資格に応じた活動ができなくなるという別の問題を招きます。弁護人と相談して順序を決めてください。

なお、逮捕から72時間はご家族の面会ができません。この間に会えるのは弁護人だけであり、接見交通権(刑訴法39条1項)は接見禁止が付いても制限されません。取調べは通訳を介して行われますが、微妙な言い回しが調書に正確に反映されないことがあります。署名の前に読み聞かせの内容を確認するよう、早い段階で本人に伝えることが大切です。

中文版:小额盗窃中获不起诉与被起诉的人,差别在哪里

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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