専門学校生が受け子で逮捕された。退学になると在留資格「留学」はどうなるか
2026/08/31
留学生が特殊詐欺の受け子として逮捕されると、ご本人とご家族が最初に直面するのは、刑事処分の重さと同時に、学校を続けられるのか、在留資格はどうなるのか、という問題です。この二つは別の手続でありながら、実際には強く連動します。この記事は、在留資格「留学」で日本にいる中国籍の方とそのご家族に向けて、退学が在留にどう跳ね返るのか、何を先に手当てすべきかを説明します。
報じられている範囲
MRT宮崎放送の報道によれば、宮崎県において、中国籍の19歳の女性で専門学校生の方が、詐欺の疑いで逮捕されたとされ、被害に関わる金額として1800万円が挙げられています。当方が確認できたのは見出しの範囲にとどまり、報道日は確認できていません。詐欺の疑いで逮捕されたと報じられています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。この報道からは、どの段階でどのように関与したのか、報酬を受け取ったのかは分かりません。以下は、この類型に共通する制度の説明です。
18歳・19歳は手続の入口が違う
18歳と19歳は「特定少年」と呼ばれ、少年法の適用を受けます。逮捕・勾留の後、事件は家庭裁判所に送られ、少年鑑別所での観護措置を経て、審判で保護観察や少年院送致といった保護処分が検討されます。もっとも、家庭裁判所が検察官送致(いわゆる逆送)の決定をすれば、そこから先は成人と同じ刑事裁判になります。この分岐は在留にも直結します。保護処分にとどまれば刑罰を科されたことにはなりませんが、逆送されて有罪判決を受ければ、刑の重さが在留の判断に直接入ってきます。付添人を早く選任し、家庭裁判所に対して生活環境の調整を示すことが、この段階での中心的な活動になります。
「留学」は活動があって初めて成り立つ資格
在留資格「留学」は、教育機関で教育を受けるという活動を前提とする資格です。したがって、学校を退学すれば、その資格に対応する活動を行っていない状態になります。入管法22条の4第5号は、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていない場合を在留資格の取消事由としています。身柄を拘束されて授業に出られない期間も、この3か月の計算では不利に働きます。出入国在留管理庁の統計によれば、令和7年の在留資格取消しは総数1,446件で過去最高であり、そのうち「留学」が343件(23.7%)、取消事由の第5号によるものが350件(24.2%)です。取消しは決して例外的な処理ではありません。
退学を避けるためにできること
学校は、逮捕の報道や警察からの照会によって事実を知ることがあります。ご家族が慌てて事情を伝える前に、まず弁護人・付添人と説明の時期と内容を相談してください。学校によっては、退学ではなく休学の扱いが可能な場合があります。休学であれば在籍は続きますが、活動をしていない期間としては評価されうるため、身柄が解放された後に速やかに復学できるかどうかが鍵になります。学費の納入状況、出席率、担任や留学生担当の職員との関係も、学校の判断に影響します。これらの資料はご家族が集められます。
更新・変更の場面で何が問われるか
刑事処分が軽く済み、退学も免れたとしても、次の在留期間更新の場面では素行が審査されます。更新は権利ではなく、法務大臣の裁量による許可ですから、詐欺という財産犯で処分を受けた事実は、正面から不利に働きます。ここで意味を持つのは、被害弁償を行ったこと、学業に復帰していること、身元を引き受ける人がいること、生活費の出所が説明できることといった、書面で示せる事情です。刑事事件の段階でこれらを整えておくことが、後の入管手続での主張材料になります。逆に、刑事の段階を「終わった」と考えて何も残さないと、更新の場面で示せるものが手元にありません。
退去強制まで進む場合の整理
詐欺で無期又は1年を超える拘禁刑の実刑となれば、入管法24条4号リの退去強制事由に当たります。全部執行猶予はこの条文から除外されています。令和7年の出入国管理統計では、退去強制令書の発付総数7,722人のうち、4号リ単独は41人にとどまり、圧倒的多数は不法残留の5,778人です。つまり「刑事事件を起こしたら直ちに強制送還」ではありません。もっとも、退学によって在留資格が取り消され、その後に在留期間が過ぎれば不法残留となり、結局は最も多い経路に合流してしまいます。刑事と入管を切り離さずに設計する必要があるのは、このためです。
ご家族が最初にすること
在留カードと旅券の所在を確認し、学校の学生証、在学証明書、成績証明書、学費の領収書を手元に集めてください。次に、弁護人・付添人を通じて差し入れを行います。接見禁止が付いていても弁護人との接見は制限されません。被害弁償を検討する場合は、原資と送金の段取りを早めに準備します。母国からの送金は手続に日数を要しますから、示談の話が具体化してから動くのでは間に合わないことがあります。学校への連絡、勤務先のアルバイト先への連絡は、順序と時期を弁護人と決めてから行ってください。
中文版:专门学校学生因当收款人被捕,退学后“留学”在留资格会怎样
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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