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20歳で「指示役」と報じられた事件。警察の役割評価をそのまま前提にしてよいか

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20歳で「指示役」と報じられた事件。警察の役割評価をそのまま前提にしてよいか

20歳で「指示役」と報じられた事件。警察の役割評価をそのまま前提にしてよいか

2026/08/31

特殊詐欺の事件では、逮捕の段階から「指示役」「あっせん役」「受け子」といった役割の呼び名が報じられます。この呼び名は、その後の勾留、起訴・不起訴の判断、そして量刑の重さに影を落とします。この記事は、ご自身やご家族が「指示役」と報じられてしまった中国籍の方に向けて、その評価が捜査初期の見立てにすぎないこと、何を材料に争えるのかを説明します。

報じられている範囲はどこまでか

北海道ニュースUHBの報道によれば、札幌市において、中国籍の20歳の男性が、詐欺の疑いで逮捕されたとされています。報道では、被害に関わる金額として3600万円が挙げられ、共犯者に対して「逮捕状が出ている」と告げて現金を回収させたとされ、警察は男性をあっせんや指示をする側と見ていると伝えられています。当方が確認できたのは見出しの範囲にとどまり、報道日は確認できていません。詐欺の疑いで逮捕されたと報じられています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。この報道からは、男性の在留資格も、来日の経緯も、受け取った報酬の額も分かりません。

「指示役」は法律上の区分ではない

詐欺罪の条文に「指示役」「受け子」「出し子」という区分はありません。これらは捜査機関と報道が使う実務上の呼び名であって、法律の世界では、共同正犯として全体の被害について責任を負うのか、幇助にとどまるのか、共謀はどの範囲まで及ぶのか、という問いに置き換わります。量刑では、組織の中でどれだけ上位にいたかが強く影響しますから、「指示役」という一語が独り歩きすると、実際の関与よりも重い前提のまま手続が進んでしまいます。弁護人が最初にすることは、この呼び名を証拠で洗い直すことです。

通信記録は、指揮命令がどちら向きだったかを映す

役割の上下を最もよく映すのは、押収された端末に残るメッセージの履歴です。見るべきは、文言そのものよりも、その方向と時刻です。上位者から届いた指示文をそのまま転送していたのか、自分の判断で内容を作り替えていたのか。回収場所や時間を決めたのは誰か。グループの管理者権限を持っていたのは誰か。報告の宛先はどこか。弁護人は、証拠開示を通じて履歴の全体を時系列に並べ直し、命令の向きを示します。共犯者に「逮捕状が出ている」と告げたとされる部分についても、その文言が本人の発案なのか、上位者から与えられた台本なのかは、その直前直後の受信履歴に現れます。

報酬の流れは、役割の上下をそのまま映す

金の流れも同じ役目を果たします。報酬が固定額だったのか、被害額に連動する歩合だったのか。回収した現金のうち手元に残ったのはいくらか、大半をどこへ渡したのか。組織を動かす側であれば、金は自分のところで滞留するか、自分の判断で分配されます。逆に、渡された現金をほぼ全額そのまま上へ渡し、固定の少額だけを受け取っていたのであれば、その事実は従属的な立場を示します。銀行取引履歴、送金アプリの記録、防犯カメラに写った授受の場面が、供述よりも雄弁に働きます。

離脱できたかどうかを見る

抜けようとしたのに抜けられなかった事情があるなら、それは責任の重さを左右します。旅券や在留カードを預けさせられていた、母国の家族の住所や連絡先を握られて脅されていた、辞めると言った後に報酬を止められた、といった事情です。ここでも供述だけに頼らず、預けた時期が分かる写真やメッセージ、家族に届いた連絡の記録を集めます。取調べの場でこうした事情を細かく説明するのは容易ではありませんから、通訳人を介して時系列の書面にまとめる方法が有効です。

20歳という年齢が手続に与える意味

20歳であれば少年法の適用はなく、通常の刑事手続で処理されます。ただし、若年であること自体は、判断力の未熟さや、上位者に取り込まれやすい立場に置かれていたことを説明する文脈で、情状として意味を持ちます。警察庁「令和6年における組織犯罪の情勢」によれば、令和6年の特殊詐欺の検挙人員は2,320人であるのに対し、中枢被疑者として検挙されたのは58人(2.5%)にとどまります。組織の中枢に捜査が届く例は多くありません。

在留資格にはどう響くか

報道からは在留資格が分かりませんので、場合分けで考えます。詐欺で無期又は1年を超える拘禁刑の実刑となれば、出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号リの退去強制事由に当たります。全部執行猶予はこの条文から除外されており、「執行猶予でも強制送還」というのは誤りです。他方、留学や技術・人文知識・国際業務のような別表第一の在留資格であれば、実刑に至らなくても、活動をしていない状態が続けば在留資格の取消しが問題となり、更新の場面では素行の要件で不利に働きます。令和7年の出入国管理統計によれば、退去強制令書の発付は総数7,722人で、そのうち4号リ単独は41人、不法残留が5,778人です。ただし中国籍については、4号リが単独11人に不法残留との並立36人を加えて47人と、発付総数686人の6.9%を占めており、他の主要国籍より比率が高い点は正直に押さえておく必要があります。

ご家族が今日できること

まず、在留カードと旅券の所在を確かめてください。本人が持っていない場合、誰かに預けている可能性があり、それ自体が支配関係の証拠になります。次に、弁護人を通じて差し入れを行います。接見禁止が付いていても、弁護人との接見は制限されません。また、本人名義の銀行口座、携帯電話、SIMの契約状況を整理しておくと、後の反論に使えます。勤務先や学校への説明は、弁護人と時期を相談してから行ってください。本人が要請すれば、領事関係に関するウィーン条約36条1項に基づき、領事機関への通報が行われます。被害弁償を検討する場合は、原資の準備と送金にかかる日数の見積りを、早い段階から始めてください。

中文版:20岁被报道为“指挥角色”,能否照单全收警方的角色评价

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

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この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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